Ag+の策略!

2012/02/08 23:13 :山土
そうです、あなたの犬ですよ(山土)



パラリ、紙の捲れる音だけが部屋に響く。いつぞやに叱られてからというもの、報告書は真面目に書くようにした。
ああ、今回の任務は大変だったなあ。
まあ、真選組の女王様こと副長の命じたことを「NO!」と突っぱねるなんてことはしない。命が惜しいからだ。
女王様なんて思ってるのは俺だけだけど。みんなどうせ鬼副長としか思ってないだろうけど。
しかし、書類に目を落とす副長のなんとまあ、えろいこと。
あの色気さえあればそこいらを歩く女なんてすぐに落とせるだろう。どんなに冷たくしたって相手は諦めないで付いて来るだろう。なんなら、下僕にだって出来るだろう。ああ、俺のことか。
別に不満に思っているわけじゃあ、ない。無いったら無い。
最近態度が目に見えて軽薄だとか、ぞんざいな扱いを受けているだとか、そんな事も思ってないのだ。
…いや、嘘だ。ごめんなさい。もうちょっと優しく接してくれたらいいのに、とか望みました。すみませんでした。
でも、だって、だって、だって。

「どうした、山崎」

じとり、と見つめ続けていて早30分というところで、漸く副長は俺に言葉らしい言葉をかけてくれた。
そうだ。言葉らしい言葉。
入室早々に「お座り」「待て」「待て!」しか言われなかった人間の気持ちなんて、誰がわかるものか。最早、簡単に理解などされたくない。
だってこんなの人間として扱われてないじゃないか。
まるきり飼い犬じゃないか。
飼われているのか、俺。どうなんだ、俺。
目の前にあんぱんが置かれているけれども「待て」ってこれの事なのか、俺。
確かにこの頃あんぱんキャラみたいになってきてたけど、それとこの副長の態度には何の関係があるって言うんだ。え、何の関係もないのかな。

「ふくちょお、」

駄目だ、泣きそうだ。
なんだか視界が霞んで副長の姿もあやふやに見える。
じわじわと世界が滲み出す。
だって、なんなの、これ。

「泣きそうだな。つうか、泣いてるのか?」
「泣いてませんよ、ギリギリで」

だけど泣きそうですよ。
そう言えば副長はふいと顔をあげてくれて満足そうに一言。

「最高に男前だぜ、その顔」

えええ、何それ、何その台詞。モノホンの女王様かよ、有り得ないですって。
何で副長、そんな表情弛んでるんですか。
ああ、頭撫でるなんて柄でも無いこと止めてくれませんか。
俺、本当に飼い犬みたいじゃないですか。
ていうか、副長。

「可愛いです、副長」
「………はあ?」
「何ででしょう、副長のそういう顔って物凄く、そそられます」
「馬鹿かテメエ」
「痛っ…!」

即刻殴られたけれど、なんかもう馬鹿でも阿呆でもマゾでも構わない。
副長、ちょっと赤いですよ。

「おい、待て」

この期に及んでまだ犬扱いされてる気がしたけれど、もうどうだっていいや。
副長の頬を一舐めしてやった。





そうです、あなたの犬ですよ
(ちゃんと飼い慣らしてくださいね)
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もはや山土かどうかも怪しくなったし、間に合わなかったし、誕生日お祝い感は欠片もないです。
ごめんね、ザキ
2012/02/08


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