年末ということで…
忘年会ネタちっくに飲み会な騎士達を…と思ったのですが、
何だかんだ酔いつぶれてるフィアを抱えてるルカ書きたかったという(おい)
ジェイドとルカの会話も好きですし、フィアとルカは一応我が家で一番仲良しな二人なので…
こういうお話かけてよかったです。
主人公ほぼ寝言しかいってないけど←
ともあれ、追記からお話です!
月明かりが降り注ぐ廊下にたたずむ、長い緑髪の男性……ジェイド。
彼は窓から輝く月を見上げていた。
空気の入れ換えのために開けられている窓から吹き込んでくる風が彼の艶やかな髪を揺らす。
遠くでは宴会場で騒いでいる騎士達の声が聞こえてくる。
ジェイドは少々仕事が残っていたために少し遅れて会場にいくことになっていた。
もうすでに騎士達は完全に盛り上がっていることだろう。
今日は、羽目を外して飲む騎士も多いだろう。
自分の幼い部下達が明日救護に回らないで済めば良いのだけれど……
そう思いつつジェイドは小さく笑った。
と、その時。
前方から近づいてくる影に気がついて、ジェイドは目を丸くした。
「おや……」
「お、ジェイド」
相手の方もジェイドに気づいて、軽く笑みを浮かべる。
歩いてきたのは黒髪の青年。
彼の腕には亜麻色の髪の少年が抱き抱えられている。
その亜麻色の髪の彼は、どうやら眠っているようだった。
その光景をみて、ジェイドはくすくすと笑う。
そして、黒髪の彼にいった。
「何だか懐かしい光景ですね」
「はは、そうだな……」
黒髪の彼……ルカはジェイドの言葉に苦笑した。
確かに、この光景はジェイドとルカにとっては懐かしい。
以前も、こうしてルカがフィアを抱き抱えて歩いていたときに、
ジェイドが声をかけた時があった。
もっとも、その時はかなり笑い事でない事態が発生していたために、
ジェイドもルカもこうは笑っていなかったが。
今は、ただただ穏やかな気分だ。
遠くでは賑やかな声が聞こえてくる。
その声を、あのときのように張り詰めた気分でではなく、
普通に、穏やかな気分で聞くことが出来る。
それが幸福なことだと、二人は思っていた。
ジェイドはひとしきり笑うと、ルカの腕の中の彼の姿をみて、少し眉を下げた。
「フィア、またお酒を……?」
「あぁ。他の連中にのせられてな……
完全に酔いつぶれて厄介ごとになる前に拾ってきた。
幸か不幸かすぐに寝ちまったけどな」
全く、といってルカは肩を竦める。
ジェイドは少し心配そうな顔をしてフィアの顔を覗き込んだ。
酒に弱い人間が急に酒を飲むのは感心できない。
しかし、顔が赤い以外には特に異常は無さそうだ。
呼吸がおかしいなどということもないし、ただ単純に寝ているだけらしい。
ジェイドは少しほっとして息を吐き出す。
医者として、彼らの体調に異常が出るのは見過ごせない。
何事もなかったのならば、何よりだ。
フィアの酒癖はジェイドもルカに聞いている。
普段の冷静さやクールさが消え、甘えん坊になるという、
やたら可愛らしい酒癖ではあるのだが……
あくまで男として騎士団に所属しているフィアにとっては、
アルコールが入るとすぐに寝入ってしまう気質である意味よかったかな、と思う。
ジェイドは"様子がおかしいようならちゃんとつれてきてくださいね"とルカに言う。
ルカはそんな彼の言葉に苦笑気味に頷いた。
「あぁ、わかってる……
ったく、こいつも懲りないよな」
飲まなきゃいいのに、とルカが言うと、
ジェイドは小さく肩を竦めて、笑顔を浮かべた。
「まぁ、これもフィアの性格なのでしょうね。
周囲のノリに流されやすいというか……
ある意味、良い傾向なのではありませんか?」
以前の彼に比べれば、とジェイドは言う。
昔のフィアは、周囲に溶け込もうとせず、
こうして賑やかな宴会が開かれていても一人で部屋に戻ってしまうような少年だった。
それが、こうして宴会場に残ったあげく、
周囲のノリにあわせて酒を飲んでしまうとなれば……
大分、丸くなったということだろう。
ルカはそんな彼の言葉にそれもそうか、と頷いた。
「ま、それもそうかもしれねぇな」
ルカはそういって小さく笑うと、フィアを抱き上げた直す。
フィアの体は決して重くないが、かといってずっと持っていられるわけでもない。
流石に腕も疲れてきたし、何より眠っている彼をきちんとベッドに寝かせたい。
"そろそろいくよ"とジェイドにいって、ルカは歩き出す。
"お休みなさい"と返してきたジェイドに微笑んで、ルカはゆっくりあるいていく。
その途中。
もぞり、と腕の中でフィアが動いた。
起きたのだろうか、と思ってルカが覗き込むも……
彼はまだ寝入っていて、小さく動くだけ。
暫しもぞもぞ動いていたフィアは、漸く良い体勢になったのか、小さく息を吐いた。
そして、軽くルカの服をつかむ。
「んぅ……ルカ……」
小さく名を呼ばれたが、ルカはどうにか答えるのを抑える。
寝言に応えてはいけない、というのは幼い頃に親に教えられたことだ。
彼は、完全に寝入っている。
けれど、眠りながら無意識に……ルカのことを呼ぶのだ。
「……寝ぼけてると可愛いのなー、こいつは」
やれやれ、とルカは小さく笑う。
そのままもう一度彼の体を抱き直して、ゆっくりと部屋へ歩いていった。
―― Pretty my family ――
(眠っている時のお前は本当に可愛いよ
昔の、幼い頃のお前のことを思い出す)
(少し丸くなったのですね。見ていればわかりますよ
そしてきっと、それは貴方の傍にいる大切な家族のお陰なのでしょう)