ベルトルトお兄様と大佐殿のお話です。ナハトさんのイラスト見ててふと浮かんで…←こういう切ないご兄弟好きです←おい
*attention*
ベルトルトお兄様と大佐殿のお話です
シリアスちっくなお話です
「もう子供じゃないんだから」って台詞をいってほしかったと言う…←
成長したからこそ心配だと思うことも増えるだろうなと言う妄想です←おい
仲良しなご兄弟好きなのです…!
お兄様に心配かけまいとする弟さんって良いと思います←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
君が僕の手の届かないところに行く夢を見たんだ。
どんなに手を伸ばしても届かない、遠くに。
あぁ、守りたいとそう誓ったのに。
あぁ、失いたくないとそう思ったのに。
そんなところに居ては守れないじゃないか。
そんなところまで僕の腕は届かないじゃないか。
そう思いながら必死に手を伸ばす夢。
手放したくない。
失いたくない。
大切な、大切な、僕の……――
***
「――……!」
ベルトルトは勢いよくベッドの上に体を起こした。
はぁ、と吐き出した呼吸が小さく震えている。
ふ、と笑って彼は自分の髪を軽くかき揚げた。
汗をかいている。
じっとりと背中が濡れているのを感じた。
嫌な夢だったな、と彼は小さく呟く。
その声を聞く者はなくて、自分の声がただ部屋に響くだけ。
自分の家の、自分の部屋。
そこは当然のことながら酷く静かで、不気味ささえ感じてしまう。
どうしたものか、と彼が小さく溜め息を吐き出した時……
リビングの方から、微かに物音が聞こえた。
一瞬思わず身構えかけたが、すぐに緊張を解く。
そこにいるのが他でもない、自分の愛しい末弟であることに気がついたから。
ここ最近では出張がてら国外に出ていることも多い彼、クラウス。
隣国とはいえ通いで仕事をするわけにはいかず、
そういう時には向こうに泊まりがけになっていた。
でも今日は、向こうでの仕事が段落したからカルフィナに帰ると聞いていた。
少し遅くなるから先に休んでいてくれといっていたが……
「本当に遅かったね、クラウス」
ベルトルトはそう呟きながら自分のベッドを降りる。
時計に視線を投げれば、とっくに日付は変わっていた。
そして、恐らく自分やもう一人の兄であるアレクサンダー起こすまいと静かに行動している、
あげく恐らく一人で着替えるのに手こずっているであろう弟のいるリビングに向かった。
***
―― 一方。
ベルトルトの予想通り、クラウスは自国に帰り、一人着替えようとしていた。
流石に仕事用の軍服のままで寝る訳にはいかない。
しかし、片腕をなくしている彼が一人で着替えると言うのは、なかなか大仕事。
あげく、じたばたと脱げば制服を床に落としてしまったりしそうだ。
そうすれば、少なからず音を立てる。
兄たちはすでに眠っているであろう時刻に帰宅した彼……
出来るだけ迷惑をかけまいと一人で静かに着替えようと試みていた。
いつもだったら、ヘフテンが手伝ってくれていること。
しかし、今日はそういう訳にもいかない。
「ふぅ……」
やっとのことで上着を脱いで、静かに床においたとき……――
「お帰り、クラウス」
聞こえた声にクラウスは驚いた顔をした。
振り向けば、そこにいたのは他でもない自分の兄で……
クラウスはすまなそうな顔をしつつ彼に詫びた。
「すまない兄さん、起こしてしまったか?」
「いや、目が覚めただけだよ……手伝うね」
クラウスも疲れてるだろ、といいながらベルトルトは弟の着替えを手伝う。
シャツを脱がしてやりながら、ふとその肌に視線をやった。
あちこちに薄く残っている傷。
それは恐らく任務中に負ったものだろう。
そう思いつつ、ベルトルトはそっとそんな弟の左腕に残っている傷にそっと手を添えた。
唐突に肌に触れられた感触にクラウスは驚いて肩を跳ねさせた。
そして兄の方を見る。
青い瞳が幾度か瞬いた。
「っ!?兄さん……?」
「え?あぁ、ごめん……くすぐったかった?」
ベルトルトはそういいつつすまなそうに笑う。
その表情が少しこわばっているのを感じて、クラウスは怪訝そうな顔をする。
ベルトルトはそんな弟を見て少し眉を寄せると、そっとクラウスの体を抱き寄せた。
そしてそのままそっと彼の頭を撫でる。
クラウスもかなり長身だが、兄二人はそれに増して背が高い。
クラウスは自分より少し背の高い兄に抱きすくめられて困惑した顔をした。
一体どうしたのかと問いかければ、ベルトルトはすぐにクラウスを離した。
そしてクラウスの腕に残っている傷に触れながら、いった。
「生傷が絶えないね……
あんまり危ないことしたら駄目だよ、クラウス」
そんなことを言い出す、ベルトルト。
クラウスはそんな兄の発言に少し面食らったようにまばたきをした。
その後、ふっと苦笑を漏らして、口を開いた。
「兄さん……私ももう、子供ではないんだから」
そういって笑う、弟。
その姿を見てベルトルトは幾度かまばたきをした。
そして、ふっと笑う。
「そっか……そう、だよね」
もう、子供じゃない。
だからこそ、不安なのだ。
ベルトルトはそう思う。
子供ならば、手放さないですむ。
ずっと自分の近くにおいて、守ることが出来るから。
でも……
もう彼(クラウス)は、子供ではない。
一人で……否、正式に言えば一人ではないけれど……
外に出ていってしまって戦う立場の人間だ。
明日任務に出ていって、そのままかえって来ないなんて事態も想定できてしまう。
―― それが、たまらなく怖い。
ベルトルトはそう思いつつ、そっとクラウスの左手を握った。
そして驚いた顔をするクラウスの背に腕を回してグッと顔を近づける。
キスでも出来そうな位置まで。
そして、ベルトルトはそっと呟くような、囁くような声でいった。
「……あんまり、無理はしないで」
―― そう。
君がいなくなる夢を見た。
それが現実になりうることを僕はよく知っている。
だから、だから……――
失いたくない。
怖い。
君がいなくなるのが。
だから、どうか。
一つでいい……
君がいなくなる要因を、なくしてほしいんだ。
ベルトルトはそう思いながらそっと彼の額にキスをおとして、クラウスを離した。
唐突な、彼の行動。
こうしてキスなどされたときには大抵照れて真っ赤になるクラウスだが、今は違う。
兄の雰囲気があまりに、異様だったから。
ベルトルトはクラウスを離すといつも通りにふっと笑って、いった。
「そろそろおやすみ、クラウス。
仕事終わってここまで帰るだけでも疲れただろう?」
そういうとベルトルトは自分の部屋に戻っていく。
クラウスはそんな兄の背に"おやすみ兄さん"と言う。
そして、彼が触れた額にそっと触れて、息を吐いた。
「無理をするな、か……」
いつも心配をかけてしまうな、と呟いてクラウスは目を細める。
そしてふっと笑みをこぼすと"善処するよ、兄さん"と呟いて、
自分の部屋に戻っていった。
優しい、心配性な兄をあまり心配させないようにしなければならないな。
そんなことを、思いながら……――
―― 現実にしたくない夢 ――
(君がいなくなる夢を見た。
それが現実になるのを恐れて僕は君に言い聞かせる)
(愛しい愛しい僕の弟。
どうかどうか、僕のこの手が届く範囲に居て…?)