「ねえ、寧々。」
「はい?」
この世で最も美しいと称されるMH・レッドテイル。その彼女を駆る騎士・邦枝葵とパートナーファティマの寧々。彼女らはこれから行われる模擬戦に向けてチューンアップをしていた。本来フルチェックはファティマの役割なのだが邦枝は生真面目な性格でいつも寧々と共にチェックをしている。電圧、油圧、それらを繋ぐバイパス共に異常無し。視界も良好だ。

「私ね、解ってたの。…いつかこんな日が…、私がフラれる日が来ること。」
「姐さん…。」

ピッ…ピッ…、とレッドテイルも心配そうに唸りをあげる。
邦枝は今日の模擬戦の相手――男鹿辰巳に好意を寄せていた。寧々は未だに何故邦枝が男鹿に惚れたのかわからない。気分的には「アンタ私のマスターに何してんのよふざけないで」である。邦枝がフッたならまだしも邦枝がフラれたのだ。寧々は複雑な気持ちを隠せない。邦枝は折を見ては色々アピールしてきたが男鹿が超絶鈍感なせいで(というか恋とか女心とか解るのだろうかあの男)実らないまま、あの日を迎えた。
男鹿が白銀のファティマ…ユキを娶ったあの日。
私は、男鹿があんなに嬉しそうに笑う顔を見たことがなかった。もしかしたら星団中でさえ見た者はいないのかもしれない。
視界が揺らぐ。けれど零れる前にぐいっと些か乱暴に拭う。泣くものか。私は女王(クイーン)だ。だから私は今日この日の模擬戦の相手に志願した。

「行きましょ、寧々。男鹿に私達の強さ、見せてやろうじゃない。」
「イエス、姐さん!」



「レッドテイル始動!」



END

judgement…タロット大アルカナ20番目のカード。正位置は立ち直り、回復、悔いのなさ。逆位置は報われない。