私は小さい神社で働いている。
とは言っても、巫女さんやら神主さんやらという、神秘的なそれではなくて。
どちらかと言えば、ただの掃除婦である(笑)
本当に小さい神社で、小さなお社の正面は石畳、左右は塀と建物に挟まれているので、人一人がやっと通れるような隙間があるだけで砂利が敷かれている。裏には御神木……とは名ばかりの、貧相な木が二本生えていて、更にその後ろは駐車場になっている。
その神社を、犬の散歩コースにしている人がいることに気付いた。
昨年の今頃あたりに、砂利の中に無数の糞が埋まっているのを見つけたからである。
異変はある日突然、
「……何か、臭いな」
と気付き、その臭いの元を辿ったら、砂利の中から大量の糞が発見されたのだった。
まさか、
というのが最初の感想。
小さいとはいえ、仮にも神社。神様を奉っている所に犬の糞を放置していく人間がいるとは思わなかったからだ。
その辺の道端でさえ、今は糞を放置したりしない。飼い犬の糞は責任を持って持ち帰る。それが飼い主のマナーであるのに、まさかの神社に糞を放置。
罰当たりにも程がある。
最初は、
『ここは神社です。犬の糞を放置しないで下さい』
という貼り紙を貼った。
翌日見ると、その貼り紙の下に糞が放置されている。
もう、砂利の中に埋めることさえして行かなくなったのだった。
ネットで犬の糞被害について調べるてみると、何と被害の多いことか!
同じことに悩まされている人は余りに多く、ありとあらゆる解決法が提案されていたが、どれも即効性はないものばかりだった。
なかには、ガラスの破片を撒いておく…などという、過激な意見まであったけれど、犬には何の罪もないのに犬に怪我をさせるようなことはしたくなかった。
そう。
悪いのは飼い主であり、その飼い主のマナーが改善されない限り、真の解決はないのだ。
それでも、毎日神社にお参りして下さる方の為にも、何とかしなければならない。
犬の散歩は早朝か夜にしているらしく、現場を抑えることも出来ない為、直接注意も無理だ。とりあえず、犬が嫌う臭いのものを撒いてみた。
酢酸、酢、ニコチン水…
どれも、数日は効果があり、犬の糞の悩みから解放されるものの、雨が降ったり日が経つにつれ効果は薄れて臭いが消え、また糞が放置される始末。
今年になって、犬避けのシート(プラスチックのトゲトゲみたいなやつ。100均で売ってる)を左側の砂利に敷いて、右側は脚立を立てて、通り抜け禁止にした。
これが意外と効果があったようで、しばらくは犬の糞被害のことを忘れて過ごせたのでした。
「……臭い」
それは先週のこと。
また、右側の砂利に糞が放置されているのを発見。
そして左側の犬避けを持ち上げると、その下に糞……。
犬避けのトゲトゲには、何か、紙を燃やしたような燃えカスが沢山刺さっていて……。
もう、
マナーを通り越して、悪意を感じた瞬間だった。
とりあえず、両側に犬避けを2枚ずつ敷いてみたけれど…………なんか、疲れた。
何故、片付ける人の身になって考えることが出来ない人がいるのだろう?
憤りを感じながら、今日も朝から犬の糞を拾う私である。