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(荒福)
三つ目の話。
心地よい振動に揺られて、私は瞼を閉じた。でもそれがいけなかった。アナウンスに、人の話し声。全ての音が遠退いて、私の意識はぷつりと消えた。
――――
「ん…あれ、ここって」
眠い目を擦り、駅名を確認しようと頭を起こした。その時、違和感を覚えて一時停止した。
(起こした…?)
恐る恐る横を向くと、綺麗な黒髪の男子がいた。手元の本を熱心に目を通している。
(綺麗な子だなぁ。肌白いし…あれ、この人どこかで)
そんなことを考えていた私ははっとした。もしかしたら、ずっと寄りかかってたのかも…。もしかしなくても、そうだよね?
謝らないと、そう思って口を開いた。
「あの、寄りかかっちゃってたみたいで…ごめんなさいっ!!」
「…構いませんよ」
短い返答の後、鞄に本をしまってその人は電車を降りていった。取り残された私は、どこかで見た覚えがある感覚に捕われていた。
「どこかで見たような…えーっと、うーん」
思い出そうと頭をフル回転させる。確か学校で、学校で会った…?
「あっ!!」
思わず大きな声を出して、慌てて口を押さえた。思い出した。あの人は…
ゆらり箱の中、恋をした
(後日、集会で会ったのは別の話)