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小ネタ7

眠い長門さん


長「…ふぁ」
古「おや、昨夜夜更かしでもしましたか?」
長「趣味のプログラミングにハマってしまい、気がついたら外が明るくなっていた」
古「寝るのも好きなのに珍しいですね」
長「寝るのは大好き。けれど趣味も大好き」
古「そうですね。僕もゲームをしていて完徹なんてよくあったり…」
長「ちなみに食べるのも大好き」
古「はい」
長「というか、人間の三大欲求は全部大好き」
古「…………」
長「あなたは?」
古「………」
長「あなたは?」
古「………好きですよ」
長「えっち」
古「えぇー…」





彼氏弄りも趣味

はじめまして2

夏休み直前。
忙しくなる連休に備え、業務終了の挨拶を兼ねて事務所にシフト表を受け取りに行くと、丁度良かった。古泉くんの分も持って行って、と事務のお姉さんから2枚の紙を手渡された。
シフト表には個々の名前が記されており、基本的に俺とコイズミくんは同じシフトなので2枚とも確認すべく目を通す。
そこに書かれた名前を見て、俺は遠くもない倉庫までダッシュした。
「古泉!」
「ぅわっは、はいっ!」
突然の呼び捨てと共に勢いよく登場した俺を見て、何かやらかしてしまったのだろうかと慌てる古泉の肩をがしっと掴み、興奮冷めやらぬまま問いつめた。
「お前のフルネームは…『古い泉』の『一の樹』でコイズミイツキ、なのか」
「え、あ、はい、そうです。…あれ?字までお教えしましたっけ?」
字どころか名字の読みしか聞いてないぞと、シフト表を古泉の目前に突き出す。
それを見て、あぁ、と納得して安心したらしく、古泉はやっと柔らかく笑った。
「その通りです。…でも驚きました。一樹をイツキと間違えず読んでいただける事が少ないので。大体はカズキと読まれてしまうんです」
そうだろうな。
俺も普通だったらそう読んだだろうよ。
長身イケメンで古泉一樹だと?
高ぶるテンションが抑えられない。
「もしやとは思うが…『涼宮ハルヒ』という名前に心当たりはあるか?」
「スズミヤさん、ですか?」
俺は古泉の肩に手を置いたまま何度もこくこくと頷いた。
ええ、僕の学校に…なんて言われたら今日にでも見に行きたい。
「ええと…社員の方でしょうか?」
期待を裏切る返答に俺はがっくりと項垂れた。
いやでもだがしかしこれは凄いぞ。
1学年上の朝比奈みくる先輩。
同じクラスになった事はないが小学校から同じ学校の長門有希。
俺のあだ名はキョン。
そして目の前に古泉一樹。
この際涼宮ハルヒはまぁ居なくても構わん、充分だ。
「よし、お前に朝比奈さんと長門を紹介しよう!」
「は、え、だ…どなたですか?」
「あぁ先にあっちの方がいいか。ちょっと待ってろ」
ロケットランチャー豆鉄砲を食らった鳩のような顔をした古泉を置いて、俺は通学鞄を置いてあるロッカーへと走った。
数週間前にクラスメイトに貸して返って来た本が、通学鞄の中に入っているのだ。
早く返せと思っていたが、今日まで返さず今日返した友よ、GJ!
ロッカーからトンボ帰りレベルで戻った俺は、作業台を片づけつつ待っていた古泉を見て少し焦った。
あぁ、今日の片づけ全部やらせてしまった。
浮かれ過ぎたと反省すると同時に、片づけを任せられるくらいに成長した古泉にちょっとだけ感動した。
お疲れ様ですと立ち上がり、俺から『涼宮ハルヒの憂鬱』というタイトルの本を受け取った古泉は指先で唇をなぞり少し首を傾げた。
どうやらこの本の存在は全く知らないらしい。
知らなくてそのしぐさか。
是非読んで感想を聞かせてくれと言うと、古泉は少し眉を下げ、
「読書感想はあまり得意ではないのですが…そうですね。この厚さなら明日明後日にはお返し出来ると思います。期待しないで下さいね」
と困った顔をしながら笑った。
大丈夫さ。
どんなに読書感想が苦手でも、お前なら何かしらコメントがある筈さ。

翌日。
期待通り古泉は昨日貸した本を興奮した様子で返してきた。
「読みましたよ、何ですかこの本。自分の名前が出て来て驚きました。それに、あなたのあだ名も」
名前だけじゃなくキャラクターの雰囲気も何となく似てるんだよな、と受け取ると、昨日ちらっと出した朝比奈さんと長門の名前を覚えていたらしい古泉は、まるで涼宮ハルヒのように目を輝かせた笑顔でSOS団を作ってみたいですねと笑った。
「そうですね…『世界を大いに盛り上げるための杉田智和の団』というのは如何ですか?」
いや、流石にそれはちょっともの凄く遠慮したいのだが。
「ところで、これはお知り合いの方の作品なのですか?」
「いや、全く知らん人だ」
古泉と知り合って暫くしてからだ、この本を友達に紹介されたのは。
同じ高校に凄く可愛い(が部活の時は凄く怖い)事で有名な朝比奈みくる先輩が居る事は有名だったし、俺に長門有希という内気な(訳では決してないのだが)古い友人が居る事も知っていたそいつは、すげぇ本見つけたぞと、朝の挨拶も省略して貸してくれたっけ。
当然俺も読んで驚き、テンションも上がった勢いその足で本屋に向かい3冊購入。
当時はまだあまり親しくはなかった朝比奈先輩へ1冊、長門に1冊贈り、それをきっかけに彼女たちと急速に親しくなった。
そういや朝比奈先輩と長門が既に友達だったと知ったのはその頃だったな。
何でも趣味の集まり(後に同人サークルだと知った)で知り合って意気投合し、親友と呼べる程の中なのだとか。
知り合いに作家がいるという話しは聞いた事がないし、俺たちをモデルにしたのなら何か一言くらいはある筈だと思う。
なので、この作者と俺たちには何の接点もない赤の他人なのだという結論に達した。
同時に、全く接点のない作者の作品だからこそ、この類似点の多さに改めて驚き、少し気持ち悪くもあったのだが。
「今ここにいる僕たちが涼宮さんの力によって生み出された存在だとしたら…これはちょっとした恐怖ですよ」
だから、古泉が突然真顔で中二病患者のような事を言い出しても、俺も少しは頭を過ぎった考えであったので別段気にはならなかった。
ついでに言うと、最後の部分が古泉一樹のセリフを真似している部分もうっかりスルーしてしまっていた。
「俺は『キョン』と同じ一般人だが、朝比奈さんは未来人じゃないし、長門も宇宙人じゃない。地球人も宇宙人と言えるがな。古泉も…あぁ、もう呼び捨てでいいよな?古泉も超能力者じゃないんだろう?」
「ええ、おそらく」
何だそのおそらくってーのは。断言出来ないのか。
「僕自身まだ覚醒していないだけで、いつか隠された能力(ちから)に目覚めるかもしれません」
あまりの中二っぷり発言に思わず眉を寄せると、今にも吹き出しそうに口元を抑えている古泉と目が合う。
「あは…本気に取らないで下さい」
「取るかボケ」
第一、本当に涼宮ハルヒの力なら自分が蚊帳の外って事は考えられんだろう。
「その、本当に涼宮さんの力なら、って考察が既におかしいですよ」
「お前が言い出したんだろうが!」
くすくす笑った古泉が大きく息を吐き
「まぁ、冗談です。そのくらい、驚いたという事で。帰りに本屋に寄って来ますよ。僕も記念に1冊欲しいですし」
この後涼宮ハルヒシリーズの続刊が何冊も出る事や、高校を卒業した後にアニメ化するなんて事は考えもしなかった訳だが。
俺はケータイを取り出し、紹介したいヤツが居る、と朝比奈さんと長門にメールを送信したのだった。

はじめまして1

「消失古泉くんだー」
ふと朝比奈さんが口にした言葉が耳に入って顔を上げた。
小一時間前と変わらない姿勢で俺のパソコンを操作している朝比奈さんの背中に視線を向けるも、彼女は俺の視線には気づかずに画面を見続けている。
「これは初見」
同じく画面を見ている長門が呟く。
“涼宮ハルヒの消失”なら4人でレイトショーに観に行っただろうに、と思ったが、聞こえるのはマウスをクリックする音だけで、音声やBGMが一切出ていない事に気づく。
隣でPSPをカコカコさせている古泉を越えた向こうの棚には、予約特典付き特装版ブルーレイディスクがパッケージのまま収まっているのを見て軽く首を傾げたが、何かサイトでも見てるんだろう。そういや新作ゲームが出るんだったな、追想だったか、あれ確か消失が舞台だったよな、などと短時間で思考を巡らし終えて手元のPSPに視線を戻した。
俺の部屋に3人が集まり4人で遊ぶのは珍しくもなく、4人で居ても大体はこうして2・2で好き勝手に遊ぶ事も多い。
デートもしたい、友達とも遊びたい。
そんな要求を同時に叶える合理的な過ごし方だと思っている。
この過ごし方のどこにデート要素が含まれているのかは判らんが、誰も気にしていないようなので俺も気にしない。
そんな訳で、パソコンの中に朝比奈さんに見られて困るデータがない訳ではないが、頑なに隠す程のものでもないので、断りを入れてくれれば自由に使っていいですよ、と言ってある。
つまりSOS団のパソコンと同じく、俺のパソコンにはMIKURUフォルダが存在している訳だ。
こっちのMIKURUフォルダは本人が使っているブックマークフォルダな訳だが。
家族共有のパソコンしかない自宅では見辛いとBLサイトを閲覧されていた時はかなり脱力したが、まぁ何か登録されたりは困るが閲覧だけなら構わないからな。
ちなみに、こんな事を悠長に考えていられる現在、隣にいる古泉とは通信プレイ中ではない。
オンラインクエストを終えて、お互いに農場で収穫中だ。
「さっきのクエスト、もう一度いいですか?紅玉が出なくて」
「そういう事を口にすると物欲センサーが働いてだな…」
「杉田が可愛い」
相も変わらないモンハンライフな俺たちの会話に混ざって妙なセリフが聞こえたぞ。
「本当だ、キョンくん若くて可愛いですぅ」
どんなサイトを見てるんだか知りませんが、ややこしいので名前は呼ばないでいただけませんか朝比奈さん。
と、言おうとして気づいた。
俺たち4人には、誰からともなく決めたルールがあり、言い間違えない限りこれを守っている。
それは、キャラクターを指す場合は敬称を付けない、またはフルネームで呼ぶなどして違いをつける、というルールである。
でないと色々面倒臭いのだ。
過去「朝比奈さんって可愛い自分を演じてるのかもなぁ」とキャラクターの方の朝比奈みくるを指して言ったつもりが誤解されて怒られた事があったりしたからな。
ちなみに、作中キャラクターのキョンが敬称を付けない他キャラクター(つまり長門や古泉)を指す場合は、フルネーム呼びに併せて『宇宙人』『超能力者(またはイエスマン)』と呼ぶ事も多い。
長門は偶に声優名+外の人(例えば小野Dの外の人=古泉一樹)のような呼び方をする事もある。
ようは俺たちか、キャラクターか、が明確に判ればいいのだ。
まぁそんな訳で。
俺は再び彼女らの背中に視線を向けた。
聞き間違えでなければ俺と古泉の名前が、キャラクターを指す呼び方ではなかった筈だ。
「杉田。この写真のデータを貰ってもいい?」
許可を。とくるり振り向いた長門の後ろでは、パソコンのモニターがこれまた懐かしい写真を表示していた。
それぞれの学校の制服を着ている、高校生の俺と古泉の写真、である。


高校生になってそろそろ一ヶ月が経とうとしている、週末はゴールデンウィークの始まりだというある日の事である。
親父の友人が経営している通信販売の会社でバイトをしている俺は、繁忙期であるゴールデンウィーク中のシフトや作業の流れなどを社員の人たちと打ち合わせていた。
たかがアルバイトの高校生なのにこんな打ち合わせにも顔を出せるのは、中学生の頃からこの仕事を何かと手伝っていて、正式にバイト扱いになった今月からは任されている業務まであるからだ。
「キョンくんは休み取りたい日はあるかい?」
小学生の頃に付いて広まってしまったあだ名は、ここでも使われてしまっている。
社長に『うちの息子のキョンだ』などと訳の分からない紹介をした親父が悪い。
まぁもちろん本名は知って貰えてはいるが、キョンというあだ名が非常に印象深かったのだろう、本名で呼ばれた事は一度もなかった。
「いや、折角ですし毎日出ますよ。休み明けたらまた出られなくなる日がありますし」
高校生活最初の連休だ。遊びたい気持ちもあったが、ここで頑張っておけばかなり懐が暖かくなる。
それに慣れた職場、慣れた仲間。
小さい会社だし綺麗なオフィスではなかったが、割と居心地が良い場所であったのだ。
「そうか、助かるよ。じゃあ、今日もよろしく」
人の良さそうな笑顔の社長は引き続き他の社員と打ち合わせを続け、俺は持ち場である倉庫へと入り、いつも通りの作業を開始した。
そして休憩時間。
倉庫から出て事務オフィスを突き抜けた所に休憩室と喫煙所があり、自販機はないがドリップコーヒーとお茶と冷水が飲み放題なので、休憩時間はそこでコーヒーを飲みながらケータイを弄るのがいつもの過ごし方だ。
この日もいつも通り事務オフィスを抜けようとして、ふと一人の少年に目が止まった。
少年と言っても同じ歳…か少し上かもしれんくらいか。
茶髪で長身でやけに整った綺麗な顔をしていて、少し緊張したような顔で小さく笑っている。
TVで見た事はないが芸能人とかモデルとかなのかも知れない。
ついにこの会社もCMを打ったりするようになったんだろうか。
出演アイドルが挨拶に来るとは、まだ売り出し中でデビューしたてとかなのだろうかね。
そんな事を考えながら休憩室でのしばしの休憩後、持ち場に戻ろうとしたところを先輩社員に呼び止められた。
「あー、キョンくん、紹介するよ。明日から入って貰う事になった古泉くん。色々と教えてあげて」
コイズミくん、と呼ばれたさっきのアイドルは、人当たりの良さそうな笑顔で俺に頭を下げていた。
CM出演のアイドルではなかったらしい。

して翌日。
学校帰りの直でバイト入りした俺は、ブレザーの上着だけ脱いで作業着であるエプロンを付けて事務所に入った。
格好良いものではないが、色々汚れるしポケットが便利なのだ。
俺の後を追って来たかのように、昨日のコイズミくんが笑顔で事務所入りする。
ぎこちない挨拶が初々しいねぇ、年上かもしれんが。
どうぞよろしくお願いしますと俺にも頭を下げる黒い詰襟姿の襟元に『T』の文字が刻まれたピンバッジが見て取れた。
1年生。タメか。
新高校一年生にしては老けて…いや、大人っぽいと言うべきなのか?
勿論そんな感想は頭の中だけにして、こちらこそよろしく、とだけ言ってと笑ってやると、コイズミくんは安心したように歳相応の笑顔になった。
かくして、初めての後輩誕生に少なからず緊張していた俺だったのだが、対するコイズミくんの緊張っぷりはそりゃあもうハンパなかった。俺なんか及ばない程に。
聞けばこれが初めてのバイトで、今日は人生初の労働なのだそうだ。
昨日一通り研修ビデオを見て、軽く指導は受けたそうだが、担当業務の内容を教えるその前に、電話の取り方(しかも外線ではなく内線だ)どころか、こんな事も教えるの?俺、お前の母ちゃんじゃないんだけど?と突っ込みたくなるような、いちいち敢えて挙げるのもどうかと思うような本当に基本的な事から教えなくてはいけなかった。
半分は緊張のあまり出来る事すら出来なくなっているのだと解釈してやってもいいが、残り半分は素で判ってないと思わざるを得ない。
コイズミくんに出来るのは笑顔と良いお返事だけと言っても過言ではないだろう。
まぁそれすらも出来ない若者が居るという話も聞くしというか俺も若者なのだが、そんなヤツよりは随分とマシだ。とりあえず礼儀正しくて素直だしな。
しかししかし、不安なのか熱心なのか両方なのか変な趣味があるのか全部なのか、俺の作業一つ一つを間近で見ようとするので非常に顔が近い。
昨日今日知り合った男の睫の長さや肌のきめ細かさや呼吸のリズムを何故知らなくてはならないのか。
そう言う度にすみません、と眉を下げて身体を離すが、また気が付くと近くに顔がある。
これが可憐な美少女ならば嬉しいと思う気持ちも当然あるが、男じゃ単に気持ち悪いだけだ。
そう、例えば朝比奈先輩のような可憐な…いや、それはそれで落ち着かないか、なんか怖くて。
初めて出来た後輩に喜ばしいような鬱陶しいような複雑な気持ちを抱えつつ、褒めたり叱ったり呆れたり慰めたりと前半は非常に濃い時間を過ごさせていただいた。
キリの良いところで時計を見つつ作業を中断し、休憩室を案内しがてら休憩中。前半やってみてどうだったと先輩面して聞いてみると「キョンさんが丁寧に教えて下さったので、何とか」とコイズミくんは薄く笑った。
ちょっと待て、キョンさんって…。
こいつも俺をあだ名で呼ぶのかと思いつつ、まぁ社内の殆どの人がそう呼ぶんだから仕方ないかとスルーしてコーヒーを飲んでいると
「キョンさんって本名なのですよね?外国の方とか?」
などと、そんな訳あるまいと全身で総ツッコミしたくなるような事を聞いてきた。
もちろん力の限り全身で総ツッコミさせていただいた。
コイズミくんはガトリング豆鉄砲を食らった鳩のような顔をして驚き、休憩後の後半は『キョンさん』から『杉田さん』に呼び方が変わっていた。
真面目なヤツめ。
そんな日を何日か繰り返し、さぁ明日はゴールデンウィーク初日だとなった頃にはコイズミくんはかなりの成長を遂げていた。
一人で任せられる程では決してないが、ここまで成長してくれると育てた方としても正直かなり嬉しい。
なるほど、折角教育した新人がさっさと転職したら、そりゃあやり切れないな。大企業の新人教育なんかはそれなりに金と時間をかけているだろうから尚更だ。
明日からの多忙に備えつつ日々の日常業務をこなしていく。
コイズミくんに任せられる作業はあまりないが、それでもあれ取ってくれ、これ仕舞っておいてくれといった雑務サポートを頼める人間が居るというのはなんと作業の捗る事か。
コイズミくんよ、是非とも使える男になって俺に楽をさせてくれ。
そんな終業時間間際。
ある意味皆が通るよくあるミスをコイズミくんがやらかしたのだ。
「すみません!ど、どうしよう…!」
こんなミスは俺も昔はよくやったし、やったからこそ気を付けられるようになると言うか、別にちょっとやり直せばいいだけの話なので別に本当になんでもないミスなのだが、コイズミくんにしてみれば大変な事をしでかしてしまったと思っているようで、まぁ、確かに最初はビビるよな。当時は俺もビビったさ。
顔色まで悪くして必死に頭を下げて、どうしたらいいですかと慌てるコイズミくんに、まぁ別に大した事でもあるまいと
「コイズミくん落ち着け、気にすんな。次から気をつければいいだけだ」
とだけ言ってさくっと修正してやった。
判っているヤツからすれば本当に別に大したことじゃあないんだ。
うまい例がなくて説明が難しいんだが、そうだな。宅配便の送り状を書き損じて、送り状一枚無駄にしたくらいのミス、と思って貰えれば、まぁその程度の事だと思う。
そんな事があってからというもの、コイズミくんはそれはもう非常に俺に懐いた。
懐いたという表現は我ながら本当に的確だ。
元々スキンシップ過多気味なコイズミくんは話せば顔が近い、並んで歩けば肩が当たるほどに近い。
あぁもう近い近い。そっち系の人ですか、このやろうと何度思った事か。
そういやこの件から暫く経ってから当時の事を古泉が話した事があったのだが、その時の俺は神かと思える程に頼もしく格好良かったそうだ。そうかい、ありがとよ。
さて。
洗礼とも言えるミスを越え、だいぶ仕事も覚え。
ガチガチの新人からデカい図体をした子犬のような弟兼後輩になったコイズミくんと、俺はどんどん親しくなっていった。
冒頭の写真はこの頃に撮ったものだと思う。
元々歳の近い社員やバイトが居なかったせいもあり、お互いにゲームが好きだという事も判り。
夏休みの予定を考える頃には、休日に約束してお互いの家に遊びに行くような仲にまでなったのだ。
学校が違うので放課後に遊ぶような事は殆どなかったが、バイトが終われば軽く遊んでから帰宅する。
そんなパターンが日常化した。
親しくなっても敬語のままなのが気になって何度かタメ語でいいと言った事があるのだが、
「ええと…この口調では駄目でしょうか?」
と申し訳なさそうにお伺いを立てるので、気にしない事にした。
似合ってるしな。
それに、コイズミという姓で敬語というのは、あるキャラクターを彷彿させるのでちょっとおもしろくもあったのだ。

小ネタ6

小ネタ5の続き的な

長「高校の頃の朝比奈は、杉田では物足りないと言っていたのを唐突に思い出した」
古「ほう。それが今やあのような熱愛っぷりですか」
長「しかし当時は、物足りないと思う気持ちも判らないでもなかった」
古「長門さんも杉田さんでは物足りないと?」
長「違う。そもそも杉田には恋愛感情は存在しないし発生しない。有り得ない」
古「凄く仲が良いのに、随分と言い切るのですね」
長「とても可愛がっている愛犬に恋愛感情が発生しないのと同じ。有り得ない現象」
古「…それは本人には言わないであげた方がいいですよ」
長「判っている」




女の子は残酷

小ネタ5

キョンと朝比奈さんが付き合う前の話し

朝「長門さんって、キョンくんと付き合ってたりするんですかぁ?」
長「しない」
朝「え、そうなの?」
長「微塵もしない。彼は友人」
朝「凄く仲良いから…てっきり…」
長「あなたも彼とは仲が良いと思う」
朝「んー…それはそうなんですけど…ね」
長「では、古泉は?」
朝「それは…うーん…顔は好きなんですけどねぇ」
長「顔?」
朝「アイドルみたいな感じ?彼氏とかは絶対ないけど、顔は好き、みたいな」
長「…それは本人には言わないであげた方がいい」
朝「うふ、判ってますよぅ」




この時の女子2人はまだそれぞれ恋愛感情皆無
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