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与野党8党首による8日の党首討論会で際立ったのは、希望の党の小池百合子代表(東京都知事)の「失速」だった。
リアル、パラダイム、ダイナミック…。空疎な横文字のオンパレードは、にわか仕立ての政党の限界を印象づける。選挙戦は3極が争う構図だが、野党第一党・民進党をのみ込んだ「第二極」に黄信号がともり始め、「第三極」の共闘もすきま風が吹いている。
横文字連発…具体性欠く
安倍晋三首相(自民党総裁)と小池氏の直接対決が注目された討論会だが、ふたを開けてみれば、各党からやり玉に挙げられた小池氏が苦しい釈明を繰り返す場面の連続だった。
まず矛先が向いたのは、安全保障法制を実質的に容認する希望の党に、安保法制を「違憲」と断じてきた民進党から大量の前職らが合流している矛盾だ。
公明党の山口那津男代表が「プラカードまで掲げて反対した民進党から100人を超えて公認を出した」と指摘すると、小池氏は民進党出身者をこう擁護した。
「野党の立場で『政府を追及する』ということで厳しく対処されてきた」
与野党の立場が逆転すれば政治的主張も変わる、と公言したに等しい珍説だ。小池氏は「リアルな政治を進めていこうということで(民進党出身者と)一致している」と釈明してみせたが、野合の実相を横文字で糊塗する姿勢は空々しい。
希望の党が公約に掲げたベーシックインカム(最低所得保障)などの財源を首相から問われた際も、小池氏は「要はパラダイム(概念)を変えていきましょうということです」。質疑では財源に関する質問が挙がったが、小池氏は「かなりエッジの効いた提案をさせていただいている」「ベーシックインカムは実験的な部分もある」といった曖昧な答えを繰り返し、具体的な展望には踏み込まなかった。
希望の党の首相指名に関する質問にも「選挙の結果を見ながら進めていく」と答えをはぐらかし続けた。
温度差鮮明…苦笑いも
一方、衆院選での候補すみ分けが進む「第三極」の立憲民主、共産、社民3党も温度差を露見させた。
「共闘の力で国民的な多数派を作る努力をしたい」
選挙戦での連携に最も前のめりな共産党の志位和夫委員長は「共闘」という言葉を繰り返し口にした。
これに対し、立憲民主党の枝野幸男代表は「選挙協力」や「共闘」という表現は一切用いなかった。共産党と政権をともにすることはないという立場を堅持する立憲民主党としては、政権選択選挙である衆院選での協力関係がクローズアップされるのは避けたいところだ。
とはいえ、立憲民主党には「民進党の左派色を先鋭化させた政党」(旧民主党閣僚経験者)というイメージがついて回る。社民党の吉田忠智党首は「左傾化」をこう歓迎してみせた。
「立憲民主党ができて、だいぶ社民党の政策に近づいたという実感はある」
「日本流保守」を標榜する枝野氏は首をかしげ、苦笑するほかなかった。
(松本学)
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