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とても興味深い話を聞いた。
世俗的な呪(まじな)いの一種らしいのだが、どうやら先の世に接することができるものらしい。
詳しくはわからないのだが、身体に何等かの影響がでる訳でも無いようだったし、興味本位で試してみることにした。
元来僕はそういったことは信じない性分だったのだけれど、何と無く、その時だけは信じられるような気がしたのだ。
文月の――七夕を過ぎて暫く経った頃のことだった。
「――これは、」
呪いをしたその夜、僕は変な夢を見ていた。
初めは不覚にも拉致されて何処かの社の中に放られたのかと考えたのだが、状況的にそれは変だったし、第一に目の前に立つ一人の人間がこれは夢だと笑顔で言ってのけていた。
清々しい程の笑顔で。
「初めまして、私は今回の企画の責任者です。はなっから希望打ち砕いて悪いんですけど、貴方は今回の企画には参加出来ません」
「……何故だい?」
「貴方は先の世に行ったら、恐らくその病を治してしまうからです」
「、っ!」
衝撃だった。
この人間が僕のこの病を知っていたことも、先の世ならばそれを治すことが出来るということも、口ぶりからして僕が先の世に行く方法があるということも、そして、その病を治すために先の世に行くことは出来ないと言うことも。
酷く、僕の思考を乱れさせた。
目の前の人間は、残念そうに笑んでみせると、一枚の掌大の紙を差し出してきた。
「これは写し絵です。現在先の世に行っている者達と、彼等を世話する者の」
受け取った紙は触ったこともない材質で、片面にまるで生き写しのような武将たちの姿が描かれていた。
普段命を奪い合っている、錚錚たる面々。それなのに、この戦国の世では有り得ないような――
「皆、楽しそうでしょう?」
そう、楽しそうなのだ。
こんな笑い方をする人間だったのかと、嫌でも驚かされる。
「本当は、貴方もこの中にいられたらよかったのですが…不平等ですよね、身体のせいで行けないなんて。まあ、これは北条殿もですが」
「彼等は、今、先の世に?」
「ええ、明日には帰ってきますが」
「そうか…、ん?この写し絵に武田の忍が描いてあるようだが、彼は今朝方うちの城を偵察に来ていたよ?」
「それは、まあ…色々ありまして」
自称企画責任者は、言葉を濁すと至極悲しそうな顔をした。
恐らく、この人間としては酷く残念なことが起きたのだろう。僕の知ったところでは無いが。
「もしも、」
「もし?」
「貴方が、これから先、彼等のように笑っても良いと思えていたならば、またお会いするかもしれません」
「……言っている意味がよくわからな、」
「時間です」
その言葉が聞こえた次の瞬間には、僕は寝所で横になっていた。
夢から覚めたのだ。
あまりにも衝撃的な夢だったが、僕の妄想の産物ではないようだ。
何故なら、
眠りから覚めた僕の右手には、この時代には存在し得ない紙切れが握られていたのだから。
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七夕番外編!
しかし七夕関係ない!
わかりにくいですよね…すみません、わざとです(
七夕は奈良時代に伝来していたみたいですね。短冊云々は謎ですが。
しかもまさかの半兵衛チョイス。主と逆トリ組の絡みを期待した方ごめんなさい。
番外編で伏線張る辺りがコトの残念なところですね。
※余裕が出来次第、テキスト部屋に移動させます
性 別 | 女性 |
誕生日 | 9月13日 |