それからというもの
男の子との精一杯は
手を繋ぐに尽きた。



卒業間際から進学(高校)して半ばまで
私は一人の「いい人」と
お付き合いさせていただきます。




彼をここでは
五月(さつき)くんと呼びます。




五月くんのお家まで遊びに行ったり
(そういやお母様にも会ったな…)
勉強会したり

とにかく五月くんはいい人で
何だか何にもできませんでした。




ただ、手だけ繋いだ。






私にはそれが精一杯で




だんだん「自分は汚い」

「自分と彼は離れた方がいい。」

そう思うようになってきた。





高校で私と五月くんが
面白おかしく噂されるようになり
私はそれに便乗して
「別れよう」って
五月くんに伝えました。



私が五月くんと付き合ってる事が
昭十四くんの耳に入った時も


「えー五月…五月かよショックだわ…」


「五月くんは良い人だよ?」


「でも無いだろー…」って



昭十四くんだけでなく
学級全体が「無いだろ」と思ってたんでしょうね。



だから変に噂に
なってしまったのでしょうね。




切実な話。

私は「五月くんは
いい人だから私を傷つけない」

誰かみたいにあんな風に
絶対に体を触らないだろうという
嫌な気持ちで


『純粋な好き』で彼を選べなかった。





後ろめたさで一杯の中
私が彼に伝えられた
精一杯の不純な
『好きだよ』は
手を繋ぐ事でした。




五月くん、今幸せかな。