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愛故に

「あれ?」


小さな背中が人混みに紛れている
小さく細い背中
弱々しい体を持った国主
だが本人はとても強い
力じゃなくて意思が

人混みの間に見えかくれする若い竹のような色の着流、少しだけ明るい、だが夢吉より暗い茶色の髪の毛
何だか気になってぼんやり宿屋の窓から眺めていた

ぼんやり眺めているとその人が動いた

店の方へ行こうとしたらしいのだが、人混みに流されてしまい逆に店から遠ざかる

それでも逆流しようと必死になっているがどんどん元いた場所から遠ざかっていく

つい笑って重い腰をあげる

道に出ると人混みがどんどんと彼の元へと自分を運ぶ


「あれ?毛利元就?」


俺が目の前に立ち壁になってやれば軽くふらついていたが真っ直ぐに立ち俺を見上げてきた


「前田慶次………前田の風来坊が我に何のようだ」


ヒヤリと冷たい声、なのに顔は人がぶつかってこないせいか少しだけ穏やかだ


「いや?用はないが、和菓子を食べたくなって此処に来たんだが、流されてしまってな、そしたら居たから声をかけただけだ」


「貴様のような奴が流されたのか……」


眉間に小さく皺を寄せて不機嫌な顔をつくる、だけど、だけど一瞬見せた安堵の表情、以外と可愛い何て思いながら俺は毛利に声をかけた


「もし暇だったら一緒に大福を食べに行かないか」


四国の鬼が言っていた。氷の鉄仮面は大福が大好物だと

俺はただ笑いながら毛利がのってくるのを待った
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