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俺が守りたい者・前




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その頃。



「……くっそ………」


最初に敵の一撃をくらった人―ボールが目を覚ましていた。



「…いつの間に、あいつだけになっちまったのか……」




   俺は―
 何も出来ていない
  というのか―






「なら―!」



─━─━─━─━─






「 りゃあっ!! 」



マルーは、レティに「敵を倒す」と誓ってから、剣を振ることを止めていない。


ときにラクライの魔法を使いながら、彼女は果敢に戦っていた。





しかし、何十分も身体の全てを使って攻防を続けていれば、疲労が溜まらないということはあり得ない。







「っ…!!」


魔物と化したルベン先生の力は強まる一方。


苦戦必須の戦いであった。





「(こんなに長く戦ってるはずなのに、あっちは全然息切らしてないよ……)」



マルーは一度、敵と距離を置くことにした。





途切れ途切れの息を落ち着かせるべく、深呼吸をしようとしたが、

敵はたった一回の跳躍で彼女に詰め寄ってきたのだった。



肥大した拳が、マルーに振りかざされる…!






と思ったが。





 ガツ!


「 ?? 」

「……大丈夫か…?」


ボールが間に入り、細身の刃で拳を受け止めたのだ。



「ケン…!!」

「今にみてろ。こいつは俺がやってやる」



敵の拳を跳ね返し、ボールは乱撃を始めた。




だが、
敵は上手く受け流すのみ。顔には余裕の表情が見えていた。




「(なんだよあいつ……俺の攻撃は、一切効かねぇっつーのか…? どうすりゃいいんだよ!)」


とその時!






不意に、彼の利き腕に鈍い痛みがほとばしった。

武器は手から離れ、それは敵により遠くへ放り投げられてしまったのだ。




「 !! 俺の剣!!」


体勢を立て直し、剣を取りに行こうとしたその時。



「ぐっ!!」


彼は敵に後ろ襟を捕まれ、高く上げられた。

首が絞まり、息が詰まる。







そしてまた、
彼は壁に向かって投げられた。




思い切り背中を打った彼。
全身に上手く力が入らない。







「くっ…そぉ……
  !! 」


ボールが見たのは、
敵が巨大なホノオの魔法を放った直後であった。

瞬時に彼は、片腕で顔を覆う!















しかし、
彼の身には何も起こらなかった。


マルーが全身で、放たれたホノオを受け止めたからである。




「マルーっ!!」


ボールは、ぎこちなくマルーの元へ駆け寄った。



「おい!しっかりしろ!! おい!!」

「あっはは……やっちゃった…」


言葉では笑っていたものの、顔は少し困った表情をしていた。



「こんな身体じゃあ、もう動けそうにないや…。…弱いね、私」

「んなことねぇ!! 俺が、足手まといなばっかりに……」


マルーは優しく、首を横に振る。

「私がいけないんだよ。 たった一回の魔法でこんなになっちゃうし。ただ身体を張るだけで、敵に反撃なんてできてない。これじゃあレティとの約束、守れそうにないよ……」


マルーはゆっくりと、ボールにもたれかかる。



「ごめんね。……少し…休ませて…」




彼女は目を閉じ、ぐったりと首を傾けてしまった。



ボールはそっと、彼女をその場に横たえさせる。










くそおっ!!
 やっぱり俺は…何も出来ちゃいねーじゃねーか…!」



   俺は、

 たった一人の
  大切なやつも

   護れねぇ
 っていうのかよ……!!







「ヤハリ、キミにはムリナノダよ……」

「 !? 」


重々しいルベン先生の声が辺りを包む。




「サイノウもナケレばチカラもない。…コレデは…ダレヒトリモタスケラレん……」

「くっ……!!」



ルベン先生は、一歩一歩、ボールに向かって歩み寄る。

そしてこう語りかけた。




「ワタシがチカラを貸ソウ。ソウスレバ、仲間ヲ、大切な人ヲ、…お前ハ助ケテヤレるゾ……」



ルベン先生がボールに手を差し出す。


「……」















「( …いや!! )」



ボールは突如、マルーの前で両手を構え始めた!



「……ナニヲシテイル…」

「助けるんだ」

「 ?? 」

「俺の手で!!」


ボールはやり遂げようとしていた。



自らの手で、

治癒魔法を唱える
ということを。





「……フカノウだ。キミニハチカラはナイのだよ!」

「いや!! 俺には出来る。
自分を信じればゼっっってぇーーっ出来るんだ」



彼は集中し始めた。







「……マッテヤル。 アキラメがつくマデな」






そのマに、クリックデモ、してヤロう…。

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