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俺が守りたい者・後




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「(俺だけの力でマルーを助ける! とは言ったものの、本当に俺はこいつを助けられんのか…?)」

ボールは今自らの手で、身をていして守ってくれたマルーを助けようとしている。
しかし、「本当に出来る」という根拠はないこともあり、不安はとてつもなく大きくなっていた。



不意にボールは、台に繋がれたまま倒れているリックの方をみる。

「(そういえば。あいつが俺に教えてくれたんだっけな――)」



.゜*.゜*.゜*.゜*.゜*.゜*


「―自分にあるチカラを信じれば、どんな魔法でも使いこなせるんだ!」

「―俺にとっては、魔法を唱えることで大切なのは(信用)だと思うんだ」


「魔法は信じるものにしか力をくれねぇって。そんな疑り深くやったら魔法もお前のこと疑うぞ?」

「とにかく魔法はこうすれば絶対良いなんてねーし、知識があるから上手くいくなんてこともねー。大事なのはココ」


.゜*.゜*.゜*.゜*.゜*.゜*



「(俺の、こいつをこの手で助けたいっつー、気持ち……)」


   そうだ。
  そうじゃねーか。

 俺が何の為に魔法を使いたいのか。
  分かりきったことじゃねーか!


「 !! ナンダ………!」


不安が消えたボールの手に、柔らかな清い力が溢れ出る! その力はマルーを包み、たちまち傷を癒してゆく。



やがてその力は静かに止み、マルーの表情も穏やかになった。

「これは俺……できたのか?」

「んー……」

「 !! 」

そして、重いまぶたを開いた彼女は、自ら身体を起こした。

「あれ? いつの間に傷が……はわっ!!?」

「よかった……心配したじゃねーか……!」

彼女の何ともない様子に安心した彼は、思わず抱擁した。涙も独りでにぼろぼろとこぼれてゆく。

「もしかしてボール、助けてくれたの?」

質問に応えるかのように、彼の抱き締める力が強くなった。

「そっか……そうなんだ!」

彼女も思い切り彼を抱き締め、喜びを分かち合った。


「すごいよボール! やったよ!ボールっ!」

「へへ……俺だって、やりゃあ出来るんだ……」

「うんうんその調子! ボールなら、もっとたくさんの人を助けられるよ!」

「そ、そうか?」

「うん! 大丈夫!」



「フフフフ……シアワセもんダナァ…たかが下級治癒魔法の“ライフ”ダロォ……」

「へぇ。さっきのライフっつー名前してんのか……」


涙をふいて、ボールはルベン先生の声がした方へ顔をあげる。

「ん? おいマルー。あいつ、なんか変だぞ?」

いつの間にやら、ルベン先生に身についていた筋肉から、煙が立ち上っていた。


「何か、小さくなったっつーか……」

「確かに、さっきよりひとまわり小さくなってるかも」

「ダマレェ!!!」

「危ねぇっ!」
「おっとっ!」

敵の拳が突き落とされる刹那! マルーが瞬く間に敵とボールの間に入った! 剣一本で敵の拳を押さえてみせる!

「 えーりゃあああああっ!! 」

そしてなんと、剣一振りで敵を壁際まで突き飛ばしてしまったのだ!



「お前すっげーなー! 今まで以上の力が出てんじゃねーか!?」

「何か力がみなぎってくるんだ! なんでも出来そうな気がする!」

「……よく分かんねぇけど、まぁいいか。(俺、ちゃんとあいつを助けられたんだ!)」

「クソ! 調子に、ノリヤガって!!」

「敵は簡単にはやられねぇみたいだな」

「ボールはみんなを助けてあげて! 私はあの人の相手するから! 頼んだよ!」

マルーは早々と、相手の元へ攻めに行ってしまった。


「しょうがねえな……誰を優先すりゃあいいんだ――」


……一方その頃



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Episode86 俺が守りたい者・後

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