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女性向け二次創作サイト。現在ドフワニなどで活動しています。随時取り扱いCPが増える予定。
いまさら!?という皆様のツッコミが嵐のように聞こえてきますが、三万打企画しまーす!
冷たくなり始めた空気に冷やされた、細い肩を抱き寄せた。未だ俯いたままのエースをルフィごと抱きしめる。腕の中でエースは少しだけ身じろぎしたが、大人しく抱かれたままになっている。それがやがて、小刻みに震え始めた。
小さな嗚咽と共にエースを抱く胸が濡れていく。スモーカーにしがみついていたエースの手に力がこもり、ようやく泣き濡れた顔を上げたエースは、搾り出すように言った。
「…ねぇスモーカー、母さんが死んだのは俺のせい?」
「エース!」
スモーカーはエースの両肩をしっかりと掴み、真正面から泣いて真っ赤になった目を見つめた。決して嘘ではないということを伝えるために、ゆっくりと口を開く。
「それだけは絶対に違う」
「でも、ティーチが俺を捨てて、ティーチと結婚してればもっと長生きしてたのにって…。母さんを早死にさせた俺を、スモーカーは絶対憎んでるって」
「ちがう!!」
スモーカーは今度こそ思い切りエースを抱きしめた。堰が切れたように泣き出したエースに、スモーカーはなぜ、今までしっかりエースと話し合わなかったのか後悔した。この小さい体で、エースは一人苦悩し続けていたのだろう。
抱きしめた体は小鳥のように華奢で、スモーカーが力を込めると、腕の中で細い骨が軋んだ。
「エース、ティーチの言ったことは全部出任せだ。俺がお前のことを嫌いになることはありえない」
「本当に?」
「お前がルージュのことを嫌いになるのと同じくらい、ありえないさ」
よかった、というエースの言葉は嗚咽に紛れて声にならなかった。しゃくりあげる背中を撫でながら、山際に落ちていく夕日を眺めた。暖かな子供の体温と、素肌を通して伝わる鼓動。ずっと昔、自分の親が死んだ日にも、ルージュとこうして過ごした。
「…エース。人の生き死には、人の力ではどうにもならないことなんだ。ルージュが死んだのは、誰のせいでもない。絶対にお前のせいじゃない」
日が落ちる。真っ赤に燃えるような日輪が、山際を焼くように沈んでいく。夜がくる直前のこの時間は、どうしてこんなにも、物寂しくなるのだろうか。スモーカーはエースごとルフィを抱きこんだ。冷たい夜風から守るように、子供達が寒い思いなどしないように。
冷たい夜風が吹く中、暖かなのは腕の中にいる子供達二人だけだ。
「ルージュが死んで、心臓が捻じ切れそうなほど悲しい。でも、お前を残してくれたルージュには、心から感謝している」
意識して言った言葉ではない。自然と口をついて出た言葉だったが、自分で言った言葉に、スモーカー自身が一番納得していた。スモーカーのその言葉に、ようやく顔をあげたエースは泣き濡れた顔のまま、スモーカーをじっと見つめた。
生憎ハンカチなど気の利いたものは持っていない。自分のシャツの袖で、涙でぐしゃぐしゃのエースの顔をぬぐってやった。
ようやく、いつものやんちゃな表情に戻ったエースが、スモーカーの前で大泣きしてしまったことに気づいたように、ばつがわるそうに顔を背けた。いつも通りのその仕草に、スモーカーは笑って、エースの顔を自分のほうに向けさせた。
「なぁエース、お前さえよければ、ルフィと一緒に俺の家に来ないか?」
「スモーカーの家?」
「俺とルージュが子供の頃育った家だ。庭にブランコがあって、ルージュの部屋には今でもピアノが置いてある。
エース、俺は幼い頃に両親を亡くして、親というものをよく知らない。だからお前達にとって良い親になれるとは思えない。不自由させることも多いだろう。だが、これだけはいえる。
ルージュが死んだ今、お前達を世界で一番愛してるのは俺だ」
少し冷えた小さな手を包むように握った。もみじの様なふくふくした手を握ると、先ほどとは打って変わった意志の強そうな真っ黒の瞳がスモーカーを捕らえた。
エースはスモーカーをじっと見つめた後、くしゃりと泣き出しそうに破顔してスモーカーに抱きついた。
「俺もスモーカーと一緒に暮らしたい。スモーカーと一緒がいい!」
完全に日の落ちた野外は寒い。ルフィだってそろそろ目を覚ますだろう。
でもそれまでは、あと少しの間だけはこの子を力いっぱい抱いていよう。
今だ薄明るい夜空で、金星が一つぽつりと瞬いた。
見当違いなところで憤慨しているシャンクスから、ルフィを奪い返したエースは、ルフィを守るように自分の後ろに隠す。じりじりと大人二人から距離をとる様子は野生の動物のようだ。
スモーカーがてこずるはずだ。ベンがちらりとシャンクスを見やると、同じことを考えていたらしいシャンクスは、苦笑した。
シャンクスはバリバリと後頭部を掻くと、めんどくさそうにしゃがみこんだ。
「なぁエース、お前なんでスモーカーのこと信じねぇんだ?そりゃあお前の周りの大人はろくでもねぇやつらばっかだったんだろうけどよ、一週間も一緒にいたらスモーカーは違うことくらい分かるだろう?」
ん?と伺うようにエースの顔を覗き込んだシャンクスに、エースは歯を食いしばって俯いた。これは予想以上に強情そうだ。ルフィをぎゅっと抱きしめて、シャンクスのほうなど見もしないエースに、スモーカーの苦労が偲ばれた。
「そりゃスモーカーはお世辞にも人相いいとは言えねぇけどさ、見た目ほど悪い奴じゃねぇぜ?
ルージュが死んで、初めて俺達に連絡があった時、あいつなんて言ったと思う?『オムライスの作り方教えてくれ』だぜ?
俺はルージュが死んだショックで、あいつがイカれたのかと思ったね。まあ、今思えばお前ら用の飯作ろうとしてたんだろうなぁ。あいつは自炊してたけど、ガキ向けの料理なんて作ったことねぇもんな」
なるべく優しく語りかけたつもりだが、エースは一向にシャンクスを見ようとはしない。それどころかエースのルフィを抱きしめる手に、更に力が入る。
そんなエースを見つめながら、シャンクスはエースの頭をぽんぽんと撫でた。
「なぁエース。別に無理して仲良くしろ、なんて言わねぇよ。だけどさ、スモーカーがお前らしようとした分、オムライス一個分ぐらいは仲良くしてやってくれねぇか?」
いい奴なんだぜ?そう笑ったシャンクスの顔も見ずに、エースはルフィを抱いたまま部屋から飛び出した。遠ざかっていく小さな背中を見ながら、シャンクスはため息をついた。
「こりゃちょっと手ごわいかもな」
もうすぐ日が暮れる。夏になる前の、蒸し暑さが感じられるこの季節でも、野宿はさすがに寒いだろう。ぬくもりを求めるように、エースはまだ眠っている弟を抱きしめた。パステルカラーのロンパースを着た弟からは、ミルクの匂いがする。それが無性にエースを寂しくさせた。今は亡き母からも、いつも香っていた匂いだった。
「…探したぞ」
この一週間ですっかり聞きなれてしまった低い声がして、エースの隣にスモーカーが座った。エースはスモーカーを見ずに、弟の産着に顔をうずめた。
「エース、どうしても俺のことが嫌なら、他の所で暮らせるように尽力しよう。もちろん、お前とルフィ一緒に暮らせるところだ」
「…別に、俺スモーカーのこと嫌いじゃない」
ぽつりと呟かれた言葉に、スモーカーは顔には出さなかったもののいささか驚いた。今日に至るまでの、見事なほどの避けられぶりからして、そうとう嫌われているものだと思い込んでいたのだ。
「嫌いじゃねぇよ。シャンクスに言われるまでもなく、スモーカーが優しいってことくらい俺だってしってるさ。だって、母さんから聞いてたもん!」
「ルージュから…?」
「母さんが言ってた。スモーカーは顔は怖いけど、本当は優しいんだって。不器用だからわかりにくいけど、本当は優しいって。スモーカーは知らないかもしれないけど、俺は母さんからあんたの話いっぱい聞いてたんだ」
「そうなのか…」
ルージュが兄弟同然に育った自分のことを、子供に話していないとは思わなかったが、そんなに自分の話をしているとは思わなかった。
親を亡くしてからルージュが結婚するまで、助け合って生きてきた。自分より年かさだったルージュは、人には言えない苦労もしただろう。自分のために苦労し続けるルージュの姿を見て育ったスモーカーにとって、ルージュの世話にならずに自立することが一番の目標だった。
だからこそ、ルージュがロジャーと結婚して、ルージュが自分の力を必要としなくなってからは、極力ルージュの世話にならないように疎遠になっていた。恩知らず、と謗られても仕方ない。それでも自分には人妻となったルージュに関わらないようにするのが、彼女にとって一番の幸せだと信じていた。
それなのに、エースに自分のことをそんな風に語っていたルージュに、そしてそんな彼女にもう二度と会えないという現実に、胸が潰れそうだった。
「母さんが、スモーカーのこと話すたびに、俺も会ってみたいって思ってたんだ」
「エース…」
「ルージュの葬式から一週間も音信不通になってて、やっと姿を見せたら、赤ん坊背中におんぶで登場って、お前本当に面白い人生送ってるよなー」
だはははは!と無責任に笑うシャンクスに、スモーカーのこめかみに青筋が浮いた。しかしそれでも言い返せないのは、自他共に認める厳つい風貌の自分が、赤ん坊を背負っていることのミスマッチさを自覚しているからだ。
「お前な…」
「『渋くてステキー!!』とか、女の子に騒がれてたスモーカーが、子連れ狼って…!!ひー腹痛ぇ!!」
「いい加減にしろシャンクス、背中の子が起きるだろう…。それにしてもよく寝る子供だな」
なおも笑い続けるシャンクスを嗜め、ベンはスモーカーの背中で寝こけている赤ん坊の顔を覗き込んだ。やんちゃそうに日に焼けた肌に、健やかな寝顔は心を和ませるものがある。しかし、おんぶ紐でおんぶしている、というより背中に幼児をくくりつけているという風なのは、いかがなものだろうか。
そんなベンの心中を察したのか、スモーカーは苦い顔をした。
「こいつは本っ当によく寝るんだ。しかも寝相が悪くてかなわねぇ。寝てる間に移動するなんて、いつものことだからな。普通のおんぶ紐じゃ、背中から落ちるんだから、縛り上げるしかねぇだろう…」
「さすが、お前の血縁というかなんというか…」
スモーカーの良く寝る、という言葉通り、シャンクスが赤ん坊の鼻をつまんでも、赤ん坊は起きようとはしない。それどころか、なにやら口をもごもご動かしている。夢の中で何か食べているのかもしれない。
「つーか、なんでお前が引き取ってんだよ?普通こういうのって、家族のいる親戚に引き取られるもんじゃねぇの?独身の、しかも若い男が男兄弟二人引き取るって、お前の親戚よく了解したな」
シャンクスの問いに、スモーカーの表情が急に曇った。苦々しげに、赤ん坊を背中からおろし、抱きなおす。
「…どうも、ティーチってうちの一族の鼻つまみ野郎がルージュに岡惚れしてたようでな。ルージュが死ぬ寸前まで言い寄ってたらしい。で、他の親戚はティーチと関わりたくないばっかりに、こいつらを施設に入れようとしやがった。だから、俺が引き取った」
「はー。ま、色々あるわな。で、お前はこの一週間でガキ共引き取る手続きしてたわけだ」
「そうだ」
厳しい顔して子供を見つめているスモーカーだが、内心幼くして母親を失った子供達に心を痛めているのだろう。子供達にとっても、いくら親戚の家といえども、厄介者扱いされながら育つよりも、多少不自由はしてもスモーカーに育てられるほうが、どれだけ幸せか知れない。
「ところでスモーカー、ルージュの息子は二人いたんだろう?もう一人はどうした?」
「あいつは…エースは、ティーチのせいで少々人間不信気味で、今も俺のことを避けてる。多分外にいると思うんだが。こうして俺がルフィを抱いていられるだけでも、大分進歩したんだ。最初は、俺からルフィを守ろうと必死だったからな」
「へぇー。いい兄ちゃんじゃねぇか」
「あぁ、性根は真っ直ぐな奴なんだ。だからこそ大人に頼ることを知らずに、突っ張ってばっかりなのが可哀想でな」
スモーカーがため息をつくと、突然ルフィがむずがるような声をだした。そしてぼんやりと目を開くと、むにゃむにゃ言いながら、スモーカーにしがみついた。兄にはてこずらされているようだが、弟のほうには、すっかり信頼されているらしい。
スモーカーはルフィをシャンクスに預けると、ソファから腰を上げた。
「そろそろ起きそうだな。俺はルフィの飯を作ってくるから、ちょっとこいつ見ててくれ。こいつ寝て起きると、死ぬほど食うんだ」
「あいあい!泣いたら呼ぶから、飯作って来い!」
シャンクスが笑顔でそう言うと、スモーカーは席を立った。
パタン、とドアが静かに閉まったのを確認して、ベンは部屋の隅のカーテンの影に向かって声をかけた。
「…そろそろ出てこないか?」
カーテンが不自然にゆれたかと思うと、仏頂面の少年がそろそろとカーテンの陰から出てきた。大人達の会話など気にも留めず、眠り続けているルフィとどことなく似ている。はしかそうなその顔を見て、シャンクスとベンは、この少年が先ほどのスモーカーの話に出てきたエースなのだろう、と思った。
「…おっさん、ルフィ返せよ」
「おっさん!?俺まだ20代前半でピチピチのお兄さんだっつーの!」
「シャン…」
なんだかんだで私の書くドフワニはラブコメが多かったり、仲がよかったりしてますが、ドフワニとヤンデレ(DV?)の可能性について考えてみました。