たとえ人混みの中に紛れていても、俺は絶対にお前を見つけ出せる自信があるよ。
「……和人(かずと)」
そう言って俺が和人の服の裾を掴むと、振り返った和人は俺に気付いて満面の笑みを浮かべた。
「お、真咲(まさき)。お前どこに行ってたんだよ」
探してたんだぞー、と言って和人が俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でる。
……なにを言ってる、はぐれたのはお前じゃないか。
「いい年してはぐれんなよ」
「悪い悪い。それにしてもよく分かったな」
「……お前、でかいもん」
そう、和人は背が高いのだ。中学に入ってバスケを始めた和人は、高校に入って190センチまで伸びた。165センチしかない俺に対するあてつけか。
「ははっ、そりゃそうか」
和人がそう言いながら、不機嫌になった俺をあやすように頭を撫でる。
「でもさ、」
頭を撫でていた手を止めて、和人が言う。
俺が俯いていた頭を上げると、真剣な表情をした和人と目が合う。
「俺はお前のこと、どこにいても見つけ出せる自信、あるよ」
「……っ」
こんなにちっちゃくてもな、と言う和人がむかついたので、俺は一発殴ってやった。
一言余計なんだよ。俺のトキメキを返せ。
そうこうしていると、騒いでいる俺達のところにクラスメートがやってきた。
「和人に真咲! ここにいたのか」
「おー、悪い悪い」
「誠意が足りねえ。……にしても、お前ら相変わらずべったりだな」
「まあなー、幼なじみだし?」
和人がクラスメートと話しているのを、俺はどこか遠い目をしながら見ていた。
「……俺だって、」
俯いてぽそりと呟いた俺の方に、和人が視線を移す。
「ん? 真咲、なにか言ったか?」
「……別に」
きょとんとしながらこちらを見る和人に素っ気なく返した後、俺は何事もなかったように話の輪の中に入っていった。
――俺だって、お前のことなら、どこにいたって見つけ出せる自信、あるんだからな――
Fin.