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よい夢を

おやすみなさい。先生
熊のぬいぐるみを片手に彼女は言った。
「ん、おやすみ」
挨拶を返し、再びデスクへ向かう。書類仕事は好きではないが仕方がない。夜の12時。美しい満月。童話ならば魔法が解ける時刻。
背後の気配が消えない。振り返らずに問う。
「どうした?」
「……先生に言わなければならないことがあると思うのです」
「何だい?」
「整が理出来てないのでうまく言えなかったらごめんなさい。……今までありがとうございました」
「分かれるみたいな言い方しないでくれ」
「いいえ、そんなつもりはありませんよ」
くすりと笑い、続きを告げた。月光が彼女の後ろから当たり、銀髪に反射していた。反面俯き加減の顔には影が落ちる。
「私は、私の存在意義と居場所を失っていたんです。何度両親の後を追いたいと思ったか。ですけど、それは両親の願いではないとわかってもいました。……私に百合姫としての能力があるとわかったとき、私は迷わず学園にいくことにしました。両親なら必ずそうしろというだろうと。しかしそこでまた私は立ち止まってしまいました。私の力は、人を守れるものでも、癒せるものでもなかったのです。誤魔化しと問題の先送りにしか過ぎませんでした。自分自身に失望し、学園にいる価値すらないと思いました」
淡々と言葉は紡がれていく、どこか他人事のようでもあった。
「先生は私を必要だと言い、その体ですら戦うと言いました」
理解できないと同時に羨ましくもありました。私は臆病者でしたから。
お手を止めさせてしまってすみません。今度こそおやすみなさい。

タイトルなし

「いい加減キチンと話したらどうです?真実を話さない者に手を貸すほど馬鹿ではないつもりですが?いくら報酬を約束されたところで裏切られては元も子もない」
「ふむ、そうくるか。ところで君はこの国に復讐したいとは思わないかね?」
答えを返さず、ルーファスは微笑んだ。
普段の柔らかだが、どこか憐れみを含んだ笑み。
自らが支配者だと知って、目の間の人間を掌で転がす愉悦が浮いた笑み。
この言い分だと、彼の満足する答えをすれば彼は味方につくだろう。彼は信用に足る確証が欲しいと言った。だが、まだその時ではない。
「質問しているのはこちらなのですが。あなたの目的は何なのです?私を何に利用したいのですか?セリアン公爵」
答えて頂けないのなら、私が指示されていた件についてスクウォドフスカ公にお話することも出来ますが?
眉一つ動かさず、淡々と紡がれていく言葉。切ったカードは予想通り。寧ろそれ以外のカードを与えてはいない。しかし致命傷になりかねないのは事実だ。
「それはちょっと困るな。……仕方がない。……私はね、スクウォドフスカ公をこの国の政治から追い出したいんだ。勿論スクウォドフスカ公だけではなく7人の公爵いや、私を除く6人も」
「追い落とした暁にあなたが国政を握ると?」
「まあそうだね。私は皇帝に連なる者だ。正当性は十分にある」
「……勝ち目のない賭けはしない主義ですので」
クラウスは冷淡に言い放つ。
確かに勝ち目は薄い。だが0ではない。しかし100でもない。よくて30といったところか。
「慎重というべきか疑り深いと言うべきか。流石だな。君が探している例の事件についての資料の閲覧を許可しようと思っていたのだが。残念だ」
「もう当たりはつけてありますので結構。これ以上お話頂けないのなら失礼します。仕事が詰まっておりますので」
「最後に一つだけ……あの町の件は実に痛ましく、悲劇的な事件だった。生存者は君を含めて100名にも満たなかったか。逃げられない地形での市街戦と虐殺。だが本当にそれだけで約3万の人口が100正確には83か、まで減るだろうか?地下室や、山や船で沖合いに逃げた者もいたはずだが?市内にいた生存者は2名、君ともう一人、……もう一人は事件から2ヶ月後に行方不明になっていて今も足取りは掴めていない。残りの81名は所用で町を離れていた者だけだ。もっと正確に言うならば市の中心からから半径30km以内の人間としての生存者は君だけと言っていい。……これを必然と言わずして何という?君の描いた事件の顛末、一般的に語られている話とは大分違うと思うけれど?」
「……」
ここにきて初めて表情が変わった。声こそあげないものの海色の瞳が見開かれる。
「皇帝家の図書室の資料の閲覧を許可しよう。とは言っても誰か七公爵に連なる者がいなければ図書室には入れないが。私の話は以上だ。君に話すことがないのなら帰って構わない。下らないことに時間を取らせて申し訳なかったね」
ルーファスが手を振るとどこからともなく少女が現れ扉を開けた。少女は得意げにルーファスを見る。まるでボールを拾った子犬のような。
彼はそれに笑みを返した。穏やかな笑みであった。

◆◆◆

召使いの少女に会釈し、部屋を出る。廊下を歩きつつさっきの出来事について考えた。
彼は一体なんのつもりで話したのか。
勿論懐柔し、彼の目的の為に協力させるようにするためだろう。
しかし何のために?
彼が語った目的は一見理に叶うものではあったが動機が見えない。国政を握りたいだけであるならば、現状の地位でもなんら問題はないはずだ。彼は若く、他の公爵は年配者が多い。今は無理でも後20年もすれば彼が最年長になり何もせずとも国政を掌握することは難しくない。
今、他の6人の公爵を無視してまで成し遂げたいこととは?
七公爵の上位となれば最早皇帝か、もしくはその摂政でもなければそれ以上の権限を振るうことはできない。皇帝に限りなく近い地位が欲しい、つまり、その地位でなければ、今の七公爵以上の権限が必要なこととは?
彼は確かに策士ではあるが、野心家であるようには思えない。そう思わせることが既に策である可能性もあるが。
舌打ちを一つ。
そしてもう一つの問題。
彼がクラウスに与えた賞賛や、語った必要性は理解は出来たが些か過剰であるとクラウスは考えるのだった。
この程度の役割ならば誰にでも出来る。もっと近しく、忠誠心の篤い部下もいるだろう。
『これを必然と言わずして何という?』
静かなリドル。導くようで、その先は彼の掌の上。その上で踊るのは癪に触るが、こちらには切れるカードはない。あったところで今は非常に弱い。情報が、圧倒的に足りないのだ。
仮に彼が語ったことが真実だとするなら、自分が未だにたどり着けない真相と、その必然性の為にルーファスが価値を見いだしているのだろう。
自分が知らない自分の価値。もし切れる札があるとするならこの辺りか。しかし、それもルーファスが必要だと考えている自分に与えられた価値の内容知らねばならない。そのためにはルーファスの策に乗るしかない。
ここで彼の策に乗れば、悲願であった件の真相を知ることができる。強烈な誘惑だ。同時に彼の賭けの片棒を担がなければらなくなるのは明白。確実に勝てる賭けであれば乗ることは吝かではない。
だがその可能性は非常に少ないように思えた。勝ち目のない賭けをしたくはない。もし失敗したら全てを失うことになる。今の地位と職を手に入れるために払った努力と時間が全て無駄になるのだ。しかし、それだけの努力と時間を払った理由は全て、事件の真相を暴き、関わった者に然るべき断罪を受けさせるためであった。
未来の生活を取るのか、それとも過去の願望を取るのか。
忘れていいのだと、いつまでも囚われる必要はないのだと彼女はかつてそう言った。それは酷く甘い誘惑であると同時に身を切るような痛みを伴った言葉であった。
忘れるのか。今更逃げるのか。このために生きてきたのに?
呪いのようでいて、しかし酷く心地よい。
復讐だ。それが成せない自分に存在価値などあるだろうか?
今まで全てを犠牲にしてきたと言うのに?
今更破滅するかも知れないなど考えても仕方のないことではないか?
どの道復讐に成功すれば破滅するのだから

驟雨と細雪2

「殺せば?」
「今まで散々逃げてきたのに?」
「もう、疲れた」
深く息を吐き出し、壁に寄りかかる。
「……どうして、裏切ったの?」
「言っても、分からないよ」
吐き捨て、パソコンを操作する。画面を覗くと中にあったのは赤だった。イヤホンを引き抜くと、甲高い悲鳴が響いた。
あるものは銃で撃たれ、あるものは剣で斬られていた。命乞いをする少女を数人の少年が取り囲んでいた。彼女の運命を思い浮かべるのは簡単なことだ。
映ったのは戦闘ですらなかった。一方的な虐殺。胃の奥から不快なものが込み上げ、秋雨は画面から視線を外した。
「……君の、果実だろ?」
断罪であった。紛れもなく、これは秋雨の計画の内に行われたものだった。
「っ……」
机の上の、書類で管理された戦争しか知らなかった。知りたくなかったのだ。目を塞ぎ、耳を塞いで、蓋をして。気づかないようにしていた。
「……君は、いつも正しかった」

驟雨のち細雪

追い詰めた。そう信じて疑わなかった。
裏切り者を。
唯一の瑕疵を。
部下の言を聞かずに、彼がいる建物へと入る。正常な判断力か、普段の臆病とすら言われる慎重さがあったならこんなことはしなかっただろう。
秋雨はゆっくりと歩みを進めた。かつて己が背負う十字架だと言った鎌を手に。君の体格でこれを扱うのは無理ではないかと訝しんだ嘗ての友人に秋雨はたどたどしくこう返したのだった。
ー象徴だよ。……僕らは戦という種を蒔いて、そこから功という果実を得ているんだから。
そして肥料は血であった。彼は釈然としないという顔をしたのを覚えている。あるいは喩えが適切でないと思っていたのかも知れない。
半ば崩れ落ちた雑居ビルの階段を一段また一段と登ってゆく。リノリウムの床に、上等な革靴の足音が響いた。
涅槃へと塔を歩む修行僧を追う、幻獣の話が脳裏に浮かんだ。その生き物は塔を登る修行僧を延々と追うが、僧が終着点にたどり着くと追えなくなったしまうのだという。そして再び塔の一番下へと戻り、次の僧が現れるのを待ち続けるらしい。
秋雨がそれを夢想したのは紛れもなくその生き物に自らを投影したからであった。
最上階。
彼はそこにいた。膝にノートパソコンを置き、床に刀を立てかけ、床に直接座っていた。
「久しぶり」
彼は画面から少し視線を外して言った。
外見上は変わっていない。最後にみた彼のままだ。
「うん、そう……だね」
「何か用?」
「言わなくてもわかると思うんだけど……」

艦これメモ6

結局昨日1日やったけど霧島さん出なかった(´・ω・`)
金剛さんは改二になったから暫く放置して次の子育てよ。
大井さん、時雨ちゃん、夕立さん辺りを改二にしたいな。
次回イベあったら最深部まで行ってみたいしね。

後資材とバケツ溜め込みたい
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プロフィール
雨宮さんのプロフィール
性 別 女性
年 齢 31
誕生日 6月20日
地 域 宮城県
系 統 普通系
職 業 ニート
血液型 O型
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