うっかりにも程がある。
前回に引き続き、歯医者前夜にキムチを食べてしまったさくらんぼ二等兵39歳です、さーせんさーせん。
キムチに手を出した経緯聞いたら泣きますよ?
ハンカチ準備いい?
部屋、暗くした?
それは暑い暑い夏のある日の出来事。
日の沈みかけた藍色の空の下。
おじいさんは家族のために、最後の小銭465円を握りしめ、いつもの商店へ行きました。
おじいさんは考えます。
「病(夏バテ)にかかったばあさんに、何か旨い物を食わせてあげたいなぁ」
商店には色とりどりの食べ物が並んでいます。
「ばあさんの病(夏バテ)には鯛の刺身が一番だろうが598円か…。買ってやれねぇよ」
おじいさんは小銭を握ったまま困り果て、その僅かなお金で買える食べ物を探しました。
「仕方ない、つい2日前に食べたばかりだが、今日もこれで堪えてもらおう」
おじいさんが手に取ったのは、いつもの缶詰め。
いなばのタイカレー(イエロー)です。
「いくらばあさんが好きだからって、そうしょっちゅうじゃ可哀想だなぁ」
鯛の刺身代わりのタイカレー。
クイズであればニアピン賞でもあげたいチョイス。
おじいさんは小さな缶詰めだけを買い、トボトボと家に帰りました。
「ばあさん、すまねぇ。今日もコレで堪忍しておくれ」
いなばのタイカレー(イエロー)を器に移しレンチンすること1分。
おじいさんは申し訳なさそうに、その器を差し出しました。
「なんだいなんだい、またコレかい?あたしゃ確かにいなばのタイカレーはリスペクトしとる。100円ちょっとでこのクオリティーは間違いなく尊敬に値する。だけどね、じいさん。これじゃ完璧に野菜不足じゃないか。あたしゃ今、食べ順ダイエットで美の追求に余念が無いんだよ!
……ったく、あんたって人はホント使えないボンクラじいさんだよ!」
おじいさんは肩を落とし、おばあさんのために冷蔵庫を漁ります。
そこでおじいさんが見つけたのは、冷蔵庫の奥で光を放つ、「川越シェフお勧め!激辛キムチ」ではありませんか!
「ばあさん、ばあさん!川越先生からの贈り物だ!いや、コレは4丁目の曲がり角のお地蔵さんの仕業かも知れねぇ。だって、いつ買ったかの記憶もねぇんだから。お地蔵さんがそっと持って来てくれたんだなぁ。
ばあさん!キムチは間違いなく野菜だ!思い存分、食べるんだ!」
おばあさんは、お地蔵さんからの贈り物である過発酵(DE やや危険)なキムチを山盛りすくい取り、いなばのタイカレー(イエロー)に混ぜ混ぜして食べました。
そしておばあさんは、「黄色いカレーに赤いキムチぶち混むのゾクゾクするわぁ」と言いながらモリモリと食べ、「やっべ、明日、歯医者じゃね?」と薄々と気付いてしまうのですが……気付かなかったフリをして、大皿2杯のキムチカレーをたいらげましたとさ。
めでたし、めでたし。
泣ける話やろ?