スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

無題2836

蝶番が音を立てる。
私達は終わったんだと理解する。


築年数を聞いたら友達はみんな一瞬、自身の年齢と比較してくすりと笑う。そんな古いアパートの、最上階の角部屋。

西日は眩しいし、隙間風は冷たい。

広さだけがセールスポイントで、壁は薄過ぎてプライバシーなんて気にしていたら住んでいられない。

それでも幸せだった。

取り留めのないお喋り。もしもどちらかが疲れていたら「それで?」の一言で終わるような、本当にどうでもいい話題で、いつも無駄に話し続けた。話し疲れて眠るまで。
他愛ないやり取りをできる幸せ。それがどんなに得難いものか、ちゃんと自分達でも分かっていた。

今、こうして二人。
もう会話なんて出来なくて、話しかけて「で?」と返されるのが怖くて、大事なことすら話しかけるのも憚られるような、見えない境界線がある。

どこからやり直せば、幸せは途切れなかったんだろう。

境界線の先、扉の向こう。君もこんなこと、考えたりするんだろうか。
そうだとしても、もう戻れないけれど。

ごめん、くらいは最後に言えるだろうか。

ごめんとありがとう。それだけで、いいから。

蝶番の音がする。どこの部屋の音だろう。

君といて、静まり返る日が来るなんて、少し前まで夢にも思わなかったのに。

お題271127

紡いでください50


好きなように言葉を紡いでください



*奇跡なんて

君は常に悲観的。その方が色々対策打てるからとか、冷静装っていたけど、予防線はってるのは明らか。

期待しなければ絶望しない。というより、最初から絶望してりゃいい。分かりやすくて短絡的。

奇跡の安売り、僕だって好きではないけれど、希望はいつでも必要。
君が絶望してるなら、僕は奇跡を信じて待つよ。
絶望なんか絶対しない。



*見つけた、

心臓が飛び出しそうなんて表現はこういう状態のときに使うのか。

震える膝が体重を支えることを放棄した。崩れ落ちて、失望。

こんなにも脆かったのかと。

君と最後のかくれんぼ。僕の不勝神話は守られるだろう。何の自慢にもならないけれど。

君はわざと僕に見えるように、しらみつぶしに可能性を消してく。実に楽しそうだ。鬼が天職なんじゃねぇの。

もうそんな冗談言ってる場合でもないけど。

最後。これで最後。

君が手をかける。

クソ、またクリアできなかった。



*分かってるよ

次に君が口を開いたとき、僕らは終わる。

知っていたよ。

君は嘘に耐えられない。

こうなることは分かっていた。それでも君のそばにいたかった。わずかな時間でも構わないから、君といたかった。

ごめんね。

苦しめてごめんね。

ありがとう。君といられて幸せだった。


*うるさいぐらいが

目的もなくネットサーフィンしていると、睡眠時なんとか症候群という項目を見つけた。あたしは不安に襲われたけれど、クリックはしないでウィンドウを閉じた。

心臓の底が冷たくなってくような気持ちになる。不安はやまない。

太るといびきかくから、って確かに言ってはいた。だから覚悟はしていた。彼が太ったのも、半分はあたしのせいだし。

だけど、あんまりうるさくて、うるさくて。
夢にも侵入してくるし、一度起きてしまうとうるさくて眠れないし、もともと短気だから苛々してしまって。

「うるさい!」と怒鳴ってしまった。相手は寝ているんだから無駄だと思いながらも。

だけど、その直後、いびきは止まった。スイッチが切れたみたいに。

苛立っていたあたしは「あーあ、やっと静かになった」としか思ってなかった。

だけど、だんだん怖くなった。

静かすぎて不気味だった。耳鳴りがしそうなくらいの静かさで、あたしの耳おかしくなったのかなって思った。

だけど違った。



静か過ぎる夜は怖いんだ。あの日から、悪い夢ばかり見る。


ねぇ、生きてる?


あたしは何度も確認する。君の頸に触れて、血が通っているのを確かめる。

そうして君の背中にぴったりくっついて、やっと眠れる。



うるさいくらいでよかったんだ。
生きてるならそれだけで、もうなんでもいいよ。




*疲れた身体を

君は猫みたいだ。

いつも家主のあたしより先に帰ってきて、風呂に入って、ベッドで寝ている。こんなことを想定せずに買ったベッドは二人で寝るには少し狭い。

毛布にくるまる君を見て息を吐く。

だからと言ってソファで寝てみても、起きたらベッドに運ばれていたりするから気が抜けない。意識がない間に運ばれるというのは思うよりずっと恥ずかしい。

一応端っこで寝ているらしい君の背中にくっついて眠って見る。

狭くて落ちそうで、とてもじゃないけど安心できない。

だけど不思議。

こうやって寝た次の日はびっくりするくらい疲れが吹っ飛んでる。

人の気配って疲れを取る効果でもあるのかな。





*迎えに来たよ

玄関前、いつもの時間。
ノックの音がする。

「迎えに来たよ」と例の声。

何度も名前を呼ぶ、低く穏やかな声。

「遅刻するよ」

「ねぇ、起きてる?」

「迎えに来たよ」

うるさいんだ。毎朝、毎朝。
モーニングコールなんか頼んじゃいない。

それに、きくのも面倒くさいけど、あんた一体誰なんだ。

誰の名前を呼んでるんだ。

何度目かのノックの音。毎朝少しずつ乱暴になっていってるような。

多分、これは気のせい。

だけど、

「迎えに来たよ」

毎朝、これはさすがに胃が重い。




*何時かは、また

ホームベースに二人、帰ってきた。あのときは迂闊にも勝利が見えた気になっていた。

小気味いい音とともに、僕らの夢は崩れていった。

幕が、乾いた音ではためいてた。

いつかな、と約束した。果たせないかもってみんなどっかで思ってただろう。

夢だった。希望だった。
今もそれは変わらない。

小気味いい音がする。

今年も夏が来た。





*躊躇わずに、ほら

三歩先は奈落、に見えるただの水面。

さっき飛んだ先輩は飛沫をあげてて、傍目にはすごく痛そうだった。

だから余計に竦んでしまう。

何が男の意地だ。度胸試しだ。

恐怖心ってのは本能だ。危険回避能力の低い奴が持て囃される風潮はおかしい。

潮の匂い。波の音。ゴムを突き抜けて伝わる岩の感触。

海の男は格好いい。だけど怖い。それでも憧れる。

「怖いならやめちゃえば?」

囁く何かに抗って、先から飛んだ。

水平線が遠くにいった。

海は果てしなく広いと知った。



頭文字を繋げると
「君はうつむいた」



お疲れ様でした


------------------
エムブロ!バトン倉庫
mblg.tv
------------------

271118

紡いでください96


好きなように言葉を紡いでください。



*朝陽が隠れて

君が不満そうに唸った。

この地方には日の出を見ているときにおまじないをするらしい。流れ星を見たときにする願い事に似ているとだけ君は言って、具体的な内容は教えてくれなかった。

「まあいいや」と君は悔しそうな顔をしながらも、あたしの方に手を差し伸べた。

「え?」

「手、貸して」

「なんで?」

「必要だから」

何に、と問う前に勝手に手を繋がれて、あまりにその手が温かくて言葉に詰まった。

拒否する余裕もなかった。今も振りほどくことは困難に感じる。

人に触れるのは怖いのに。

おまじない、してるのかな。
手を繋いでないとできないものなのかな。わかんないけど。

温かいからどうでもいいや。



*目に映るしずくたち

葉の擦れる音がきこえた。
そのあとに降ってきた大粒のしずく。

何だっけ?
こういうの狐の嫁入りっていうんだっけ?

日の光は眩しくて、しずくがキラキラしていて、ファンタジーの世界みたいに綺麗だった。

ふと、君の瞳から涙が零れていることに気付いて、僕は思わず笑った。

よかった。ほとんど無理矢理だったけど、君に世界は綺麗だと知ってもらえた。多分明日は筋肉痛だけど。


*学校に行きたくない

ドラマや小説に感化されやすい人。
自分が正義だと思っている人。
話し合えば全ての問題は解決すると思っている人。

苦手だと思っていた。ずっと前から。

だけどその要素すべて持ち合わせた人間に出会ったとき、僕は絶望を体験した。

最悪だ。もう末路は見えた。
担任が僕の苦手なタイプとか、誰に言ってもワガママ言うなって怒られるだけだろう。

それでも無理なんだ。僕が苦手とするように、あちらからしたら僕は同じ生き物と認められないらしい。
それとも、僕は敵なのか。

僕は何かしましたか?
真面目さややる気ないのは認めるけれど、だけど全て及第点以上じゃないか。

怒られる筋合いはない。こういう態度が癇に障るのかも知れないけれど、ここまでやられる理由には足りない。

波紋みたいに広がった無邪気な悪意。空気が薄くなったような、息苦しさ。

末路は見えた。

僕はここには二度と来ない。

それでいいんだろ。



*不安が募るだけ

無視された。ただそれだけ。

聞こえてなかったのかなとも考えたけど、そんなはずないし。

心当たりがありすぎる。
嫌われる理由を持ちすぎてる。たとえばこういう、マイナス思考なところとか、彼女には理解不能だろうし。

背を向けたまま、キーボードを叩き始める。

分からないのが一番辛くて。

嫌いなら嫌いって言ってくれれば、すっきりさっぱり割り切れるのに。
このキーボードを叩く音がモールス信号だったりしたらいいのに。
もしくは読心術がほしい。

とか言って非現実な妄想してる間にもやっぱり気は紛れないし、むしろ不安が募るだけ。

確定しないまま、謝り方を考えている。杞憂に終わればいいなと、考えつつも。


*涙腺も緩む

だからそういう系の話は苦手なんだって、いつも避けてるのにどうして今日に限って。

リモコンの電源ボタンを押しかけた親指は動きを止めたまま、動かない。

一度意識に入った情報は結論まで知らないと気になってしまうから。自分に関係ないことを気にするのは嫌い。

だけど、嫌なんだって。
健気に頑張ってる姿とかみると、だめなんだって。

キャラじゃない、こんなん。
それに、この感情は何だっていうんだ。

同情?悲しみ?そんなの失礼だ。

疲れてるから。きっとそうだ。
感動なんかするはずない。共感なんてあるはずない。

なんか目が熱いのも、鼻がくすぐったいのも、多分疲れてるからなんだ。

泣きたいわけない。
感情移入なんか絶対しない。



*冷えた道路に

朝日が昇る、ちょっと手前。逸った鳥が囀るころ。暑さに慣れた身体には少し肌寒いくらいの乾いた空間。
夏は嫌いだけど、この時間の空気は好きだ。

誰もいないし、見られない。安心感はいつも薄暗い場所にある。

不健康だからひきこもりはやめろと君は言うけれど、有害なものを受けながら無理にテンションをあげている君の生活の方がよほど不健康だと、いつも思っていた。

照り返さないアスファルト。昼間でもひと気のない径を抜けると、君がいつもの場所で煙草を吸っている。

足音に気づいた君は顔を上げて、ひらひらと右手を振った。

「おはよう。いつも思うけど、その日課は君的には不健康じゃないの」

「おはよ。酒も煙草も嗜む程度なら問題ないよ。多分ね」

「髪、どうしたの?」

「あ、やっぱ分かる?暗くてもわかるんだね。やばいかな」

恥ずかしいのか、前髪をくしゃりと掴んで笑った。

「昼間に見たらきっとびっくりするよ。傷んでるとこがギラッギラに光るの」

僕がピアスを開けたとき、君はすごく、怒ってた。僕は全然痛くないのに、君は勝手に僕の痛みを想像して泣いた。

ちょうど、今と逆。

だけど僕は君を怒れない。
君なりの必死の防御がそれならば、否定できない。
僕がドアの内側で安息を守るように、君は溶けこむことで安息を得るんだ。

自販機の横、君の隣。
黒い景色と煙草の灯り。

君はいつも痛々しいくらいに眩しかった。今もそれは変わらないけれど。

深呼吸代わりに吸い込むその煙は、君を癒したりはしないのに。
君は安らいだように笑って東を見ている。僕は君の横顔を見ている。

君のそんな笑顔、いやなのに。
僕は無力で、なにもできない。

ただ君のそばにいる。なんの足しにもならなくても。

君の手から零れて、冷たい道路にするりと落ちた。
あとで拾わなくちゃ。頭の端でそう思った。




頭文字を繋げると
「雨が降る日」



お疲れ様でした。



※「好きなように言葉を」で検索をかけて頂くとこのシリーズの過去のものが出てくると思います。


------------------
エムブロ!バトン倉庫
mblg.tv
------------------

お題271111

真っ白な世界


次の文章から詩・イラスト・小説・テンプレなどを作って下さい。
簡単に言うとお題です。



*愛しているから裏切った

その手を離す3秒前。

僕は考えたんだ。真剣に。

一番幸福な結末を考えたんだ。僕じゃなく、君にとっての。

一緒に死ねたら良かったよ。だけどね、僕らはそうもいかない。
だったら僕らは離れた方が、可能性は残るから。

今はもうそれが正しかったのか、確かめる術も無い。

生きてるかな。生きてるといいな。
憎んでいいから、どうか絶望しないで。



*それは最大の裏切りでした

欲にまみれた連中の中で、君だけが僕の救いで癒し。
いつだったか、腐れきったころにそう話したね。

疲れていたんだ。使い古して意味を持たなくなった言葉を吐き出す毎日。

好きだとか愛だとか、そんなの嘘ってみんな知ってるくせに。

君だけが体現してた。何の見返りもないのに毎日毎日、あの子に縋って守って、あたしには無意味に思える行為をバカみたいに。

だから君が好きだったよ。本能とか欲求とか超越してるみたいでかっこいいって思ってた。

実際は違ったみたいだけどね。

幻滅した。

あたしのこと好きだとか言う君なんて、消えちゃえば。



*真っ白な世界

深く深く埋めて、誰も彼もが忘れるように。

白銀の世界だって君が無邪気に笑って、足跡をつけて走ってく。

美しい景色。

見つかるまでのささやかな安息のひととき。


*ずっと前から答えは出てる

ドアに頭をぶつけてから息を吐く。本日何度目かの後悔。

やめちゃえばって悪魔が囁く。

そうだね、そうできたら楽だよね。

だけどあたしはあたしとして、これからも生きていかなきゃならないから、ダメな今日のあたしではこの先生きにくすぎるから、もっと成長できるまで辞められないんだ。

昨日と同じ自問自答。

いつまで?
あと少し、もう少し。

自分を少しは誇れるように。

なんて言ってるうちにいい歳で、あたしはいつになればこのループから抜けられるんだろ。

つらいなぁ。人生。





配布元:honey bunch



------------------
エムブロ!バトン倉庫
mblg.tv
------------------

お題27117

つづくことば224


次の言葉の続きを考えましょう。

詩や小説のタイトルにするのも可


*翻訳されない気持ち

伝わらないことがこんなにもどかしいなんて思わなかった。

これが単なる言語の壁なら諦めもつくけれど、こんなんじゃ辞書も引けない。

どう伝えたら良い?
日本語でだって適切な言葉が見つからないんだよ。

半分も伝わらない。苦しい。
心が見えたらいいのにね。


*届かないの。唇が

あらまぁ破廉恥なんて、軽口言って。
君はけらけら笑って本気にしない。

それはそれで楽しいじゃれ合いだったけど、そろそろ僕はもどかしい。

早くしてよ。僕の心なんか、どうせ見透かしてるくせに。



*急がないから

一方的に先延ばしにされた答えは、まだ心の奥に沈んだまま。
求めといて断るなんて図々しいなと、腹立たしく思う。

そんな気なかったんだよ。微塵も。

だけど、答えようとする度に遮られて延ばされて、そのうち何となく緊張が緩んでいって。

気付いたら君の気配が空気みたいに当然のように近くに在るから、失くしたら辛くなるような予感がしてきてる。

これが計画通りなら癪だけど。

そろそろ急いでよ。君のペースに合わせていたら、思い出ばかり増えてくから。



*退屈は失われる

ボケかツッコミかと言われればツッコミの方って答える。

でも不運。ついでに不器用。事故るのが目に見えるから運転はやめろと親に真顔で言われる。自分でもそんな気がするからペーパードライバー歴5年。

免許返せばとか更新やめればとか言われながらも持ち続けるのは、いつか街がゾンビで溢れたその時に全力で逃げたいかららしい。そんな世界になったらそもそも免許いらねー。誰が確認するんだ、そんな世界の終わりに、免許証なんぞ。

そんな不運で、不可思議な君に出会って、僕は少しだけ未来に意味を感じてる。

憂鬱で退屈で、見通しが良すぎた未来。君だけが不確定要素。

いつかゾンビが溢れる世界の中で、運転するなら僕も乗せてよ。




*誤った推理は

こういうとき、僕の声は声にならない。
動揺はあからさまに呼吸を乱すから。

不安が心臓を満たして、血管を通って全身を巡っていくんだ。胸の奥の方から末端まで、小さく震えて動けなくなる。

空気の漏れる音だけの僕の声を拾って、君は僕に手を伸ばす。
君はいつも間違えずに聞き取ってくれていた。

だけど、いつまでも同じでいられるはずもない。

僅かな掛け違え。それは布を裂くようにあっという間に広がって、二度と戻れないと実感できるくらいの溝になった。

あの日、僕が言いたかったのは、そうじゃない。
君を笑わせたかった。笑っていてほしかった。

もう大丈夫と言ったのは、そういう意味じゃないんだよ。

ねえ、もう一度、僕の声を聞いて。




*それは隠された

残酷だからと削ってみた。

ただの平坦なお話になった。

それでも残酷な結末よりはキレイだから、それを語り継いだ。

愛の見えないお話は何時の間にか語られなくなった。

寂しくなった彼は、物語に色を付けてみた。

今度は語り継がれるように。愛を足して憎しみを加えて悲しみを掛けてみた。

そしたら残酷な結末になった。






お疲れさまでした。


感想などありましたら…

*ありがとうございました。


つづくことば224

※作者:さかなさん


------------------
エムブロ!バトン倉庫
mblg.tv
------------------
前の記事へ 次の記事へ