Diary

僕だ。ほぼ一年ぶりの記録を残しておく。
正直もうこの日記を綴る意味は殆ど無いが、それでもこうして定期的に文字を記しておきたい。
思い出を懐かしむ人間がまだ居るかもしれないからな。

去年の今頃は再会ブームだったか。
あの後は……特に変わりはない。ただ、見知った仲間の日記が同じ頃に書かれていた事は嬉しかった。あれも暫くぶりだったのさ。

誕生日の祝いも貰った。
律儀にメールをくれた顔には直接感謝を伝えた。

もう街へ繰り出すような事はないが、細い糸は静かに繋がっているのかもしれない。何と呼ぶんだろうな。こういう間柄は。

最後に日記を書いたのは去年の冬か……。あの後、連絡のつく人間には「幽霊宣言」をして街の徘徊を完全に止めた。仕事人間として地下へこもり毎日を過ごして来たから、僕はもう街の流行り廃りが全く分からない。

本題だ。
一応この場所には連絡手段を置いている。この夏を迎えてから、交流の途絶えていた旧知の仲間より連絡が入るようになった。「○○という人間を探している。また会いたい。連絡先を知らないか？」だとか「○○という場所が思い出せない。何か情報を持っていないか」といったものだ。それが７月から何件か続いている。てっきり初めは、同窓会のような催しが行われるのかと考えたんだが、そういうわけでもないらしい。偶然か…、随分と出来過ぎだな……。

まあともかく、過去をたぐり寄せる切っ掛けになれたのなら悪い気はしない。数年が経ち、今だから出来る話を交わせたことも良かった。

……そうか、今日は自分の誕生日だったのか。これで26になったらしいが、別段去年と変わった気はしないな。

昔の仲間はその殆どが遠い場所へと旅立ち、顔を合わせる事もない。「元気にしているか」と手紙を交わす機会もなくなった。
それでも、毎年０時を越えて間もない頃に祝福してくれる人間が居る事を僕は誇りに思う。特にここ七年の間、関係性が変わろうとも暮らす場所やお互いの仕事が変わろうとも、毎年12月23日の午前０時過ぎに律儀な手紙を寄越すのはただ一人。拓朗、おまえだけだ。この場所を知られていないと分かっているからこそ名指しで書いてやろう、感謝すると。

僕はもう街を出歩いて見知らぬ誰かとの縁を探したり、古い仲間達と再会を楽しむ事はしていない。恐らく今後もそうする事はないだろう。
思えば本当に多くの人間と知り合った。向こうがどう感じていたのかはともかく、少なくとも僕自身は仲間だと思っている。性別も年齢も関係ない。時には人の姿をなしていなくても、だ。
ああ、話ができる事は楽しかった。騒々しいのは苦手な性分だが、振り返ればそれも……悪くはなかったのかもしれない。

どこかの男が昔を懐かしんで語っている、そんな風に笑ってくれれば構わない。

明けましておめでとう。この場で纏めた挨拶になってしまい済まないが今年も宜しく頼む。
去年は誕生日から年末にかけて色々な事があった。

プレゼントに貰ったペンギンのラベルピンを付けて、真夜中に映画鑑賞をしたのは僕なりの礼のつもりだ。
腰を痛めた仲間へは「年だな」と伝言を残しておこう。念のため湿布も置きに行くが、原因が原因なだけにあまり同情できん。
顔を知らぬ(やや騒がしい)「めーるともだち」とはこのまま時々サプライズ的に連絡をしあう関係が良い距離感だと思う。
それから惚気話をどうもありがとう。名前が出ていたので驚いたが。

ちなみに大晦日は年越しオムライスを食べた。

23日は25回目の誕生日だった。
祝いの言葉をどうもありがとう。この年にもなると、特にめでたいという感覚でもないんだが、ああしてＥメールを貰えたことは素直に嬉しかった。
最近は馴染みの街へ足を運ぶ機会も随分減っていて、その内によく知る顔ともほとんど会わなくなってしまった。互いの住所やアドレスや電話番号を知っている者とは連絡を取れるものの、そうじゃない人間も沢山居る。今頃はどこかの街で元気に暮らしていると良い。時々ふと、そんなことを考える。

話が逸れたな。
毎年欠かさず祝ってくれるお前も、今年初めて祝ってくれたお前も、祝いというより嫌がらせに近い物を送り付けてきたお前も、僕にとっては全て大切な思い出になった。
プレゼントがどうという話じゃなく、ああしてそれぞれが感じていることや近況報告を聞けたことが何よりで、だからこそ返信には自分なりに想いを乗せた……と思う。それが相手に伝わっているかどうかはまた別としてだ。

かぼちゃのプリンとブランデーケーキは昨日と今日でおおかた食べ尽くしている。 
ソファーは必ず座りに行く。オペラは僕も好きだ。酒盛りは程々に。石の名前は覚えている。
冬より夏派のお前はその明るさなら風邪の方から逃げるんじゃないか。