螺旋状に突っ走って死にたいプロフィール
2015/12/31 Thu 03:48
10分構想(10回目)

話題:自作小説

「選択外」

択一試験。センター試験や国家試験で採用されているこれらは、5つくらいの選択肢から1つの正解を導き出す。一つだけ正解があり、他の選択肢は誤っている。

解答者達は、ひたすら選択肢の文章の粗を探して、間違いを見つけると切り捨てて、正しい選択肢を見つけ出す。
選ばれる選択肢は一つだけ。一つだけ。

選ばれなかった選択肢の気持ちを、考えたことがあるだろうか。



一人の少年が商店街の入り口に立っていた。少年は選ばれなかった。選択肢として誤っていると判断され、切り捨てられた。
選択外とされた彼は、この問題自体を不適切な問題とすべきだと考えた。彼自身は誤っていないと正当化したいがために。
ゆえに彼は、ナイフを握りしめた。問題自体が、この社会自体が不適切であることを証明するために。

少年は、駆けた。彼の存在を証明するために。選択外の選択肢の存在を忘れられないために。





「いや、これおかしくないですか?」


そう言われて、私は顔を上げた。
私がただの時間潰しに書いた文章を勝手に読んだ後輩がさらに続けて言う。

「だって、択一試験って、誤りを選ぶ問題があるし」

そこじゃない。本質はそこじゃない。
一つしかないことが問題なんだ。正しい選択肢が一つしかないことが。

選ばれないということがどれだけ絶望的か、それがわからないのか。


私の視界の隅っこで選ばれなかったものたちが怨嗟の目で私をみている。
人生は選択の連続だ。私は今の人生を送るために多くの選択肢を除外してきた。
その選択肢の粗を探し、今の人生であるための選択肢を正当化してきた。

その選択肢達にいつか、報復されても仕方ないことなのだ。

彼らはいつでもナイフを握ってる。



コメント(0)




[前へ] [次へ]
[このブログを購読する]


このページのURL

[Topに戻る]

-エムブロ-