*Dear 橋本様
*コンビニ店員×大学生夏野
*R18
「気持ち悪くなんかないから!俺も夏野のこと、好きみたい…だから謝るな」
たまたま行ったコンビニでたまたま買ったサンドイッチとパックの飲み物。
たまたま見たあなたの笑顔。
―袋の中の恋―
(……忙しいのかな)
夏野はケータイの画面に映る時刻とにらみ合った。規則正しく表示される時刻はもう直ぐ20時15分になろうとしていた。
今日は徹と都合が合い飲みに行こうと誘われていた。夏野はあまり酒を得意としないが、久しぶりの徹からの誘いに喜んで返事をした。
指定された時刻は20時。日が落ちればまだ冷たい空気に身体を震わせながら、意味もなくケータイを開け閉めした。
また気まぐれにケータイを開けたところで着信を表す画面が飛び込んできた。画面に表示される名前を確認すれば自然と心臓が跳ねた。
「もしもし…武藤さん?」
『おーすまんな。今バイト終わってそっち向かってる』
「忙しかった?」
『そうだな。ちょっと大変だった』
「…そっか」
『寒いだろ。ごめんな』
「大丈夫」
痛いほどケータイを耳に押し当て徹の声を聞き取る。慎重に言葉を選びながら静かに会話を紡いでいく。
『そうだ、今日うち来いよ。俺明日午後からバイト入ってるんだけど夏野は?』
「俺も授業午後から」
『じゃあ泊まってけよ、な?』
「いや、でも…」
「なーつの、お待たせ」
ケータイの奥の徹の声を近くに感じ、夏野は顔をあげた。
そこにはケータイを片手に、柔らかく微笑む徹が立っていた。
「遠慮せんで今日は泊まりにくること!」
夏野は徹の表情を伺いながら小さく頷いた。それを見た徹は頬を緩め、夏野の腕を掴むと急に足を動かした。
「ほら、飲みに行くぞー」
「ち、ちょっと!」
強引に腕を引かれるが、徹の緩みきった顔を見れば呆れ混じりの笑いへと変わった。
「っ、重い…!」
自分より体格がいい徹をほぼ引きずる状態でアパートまで運んできた夏野はドアの鍵を開け、倒れ込むように床に腰を下ろした。
あれから酒があまり強くない徹は1軒目で既に意識が朦朧とし始め、そんな頭とは裏腹に高くなった気分で3、4軒を廻ってきた。
帰る頃には目も開いておらず、話しかけても起きる気配がない徹とタクシーに乗り込んだ。
「はっ、はぁ…武藤さん、家」
「んぅ…」
不規則な息を整えながら徹の肩を軽く揺すれば寝言にも似た声が漏れる。
徹の靴を脱がし夏野は自分の靴と共に隅に並べた。
強引に腕を引っ張り居間の方まで運び終え夏野は息を吐いた。
「……武藤さん、俺どうすればいい?」
声をかけるが今度は徹の口からは何も聞こえなかった。怒りと呆れに眉間にしわを寄せながら玄関に取り残された2人分の鞄を取りに向かった。
居間に戻り徹の鞄を下ろせばそこから布が出ているのことに夏野は気づいた。人の私物を勝手に見るのは後が引けるが見覚えのある色に夏野は思わずそれを鞄から取り出した。
「…これ武藤さんが働いてるコンビニの制服だよな」
見慣れた制服は無造作に丸められしわが刻まれている。畳まないところが徹らしいと夏野は眉を下げた。
ふと手元の制服を嗅げばコンビニと酒独特の匂いが鼻を掠めた。その中に徹の匂いを一際強く感じ夏野は息を吸い込んだ。
瞬間、後ろから肩を掴まれそのまま後ろに倒れるように背中を打ちつけた。
衝撃に一瞬目を瞑ったが、少しずつ開ければ視界を暗くする徹の顔があった。
しっかりと開かれていない眼は濡れていて知らない人のように思えた。
「あんたいつの間に上乗ったんだよ」
「今の間にだ…何でそれ持ってんだ?」
「え、いや…洗うのかなって…」
嗅いでたなどと言えずその場しのぎに考えたことを口に出せば徹は怒ったように唇を尖らせた。
何かまずいことを言ったかとまた口を開けばそれと同時に徹の唇と重なった。
「んっ…」
短く声を漏らせばそれに誘われるように徹の舌が夏野の唇を割り、入り込んできた。付き合い始めてからこのようなキスはまだ1回しかしたことがなく夏野の身体を緊張の糸が締め付けた。
「ぅ、ん…」
「…は、なつのっ」
「ぁ…んん」
普段は軽いキスしかしない徹に少し戸惑いつつ、舌を絡ませた。
唇が離れた時には息が上がりきっていて夏野の眼は涙で濡れていた。
「は、ぁ…夏野、触っていい?」
「え……ぅん」
恥ずかしさに眼を逸らしながら夏野は了承の声をあげる。徹はゆっくりと夏野のベルトを外し、下着とズボンを一気に下ろした。
キスで緩く勃ち上がった夏野の自身を手の平で包み、揉むように手を動かした。
「ひ、やっ!」
「触ってもらうの初めて?」
「ぁ、当たり前…だろっ…あぁっ」
夏野の裏筋をなぞるように指を這わせそこから上下に擦っていけば夏野の自身は質量を増し固くなった。
「ちゃんと感じてくれてる…」
「あっ、ん…や」
「夏野可愛い」
先端を指先で押しつぶせば先走りが零れ始めた。塗りつけるように扱けば水音が大きくなり手の滑りもよくなった。
「く、あっ…なん、か…変な声…でちゃっ…ぁん」
「変じゃない…気持ちい?」
「わか、ない…っ」
強弱をつけながら扱けば夏野の自身がピクピクと震えた。
初めての感覚にわけも分からず、手に持っていた徹の制服を口元に押しあて声を抑えた。同時に徹の匂いがし、快感の波が押し寄せてくる。
「あっ、だめ…も、イッちゃ、う」
「いいよ」
「ぁ、んぅ…ぁあっ!」
夏野は徹の手の中に熱を放った。
全身から力が抜け頭がもやで覆われている感覚がした。
呼吸をすれば徹の匂いが鼻につき急に恥ずかしさがこみ上げ、眼をぎゅっと閉じた。
すると徹は夏野の手から制服を取り上げぞんざいに床に放った。
「……夏野、これ嗅いでイッたの?」
「ち、違うっ」
「嘘、嗅いでたじゃんか」
徹は駄々をこねるように夏野の首筋に鼻を埋めた。いつも明るい笑顔な徹だが、こんな子供のような徹は見たことがなく夏野は少しだけ驚いた。
(まさか制服に嫉妬とか…)
自分の中でそう悟れば愛しさと恥ずかしさが競り合い夏野は徹の髪を優しく撫でた。
「…じゃあ違くてもいいから俺も気持ちよくして……」
「んぅ…っ」
徹の唇が夏野のものと重なり、そこから熱が広がっていく。徹は器用にズボンから自身を取り出し、夏野の後頭部を支えながら身体を起こした。
「一緒にできる?」
「できる…!子供扱いすんなよなっ」
「うん。俺夏野の握るから夏野はこっち」
徹は夏野の手を自分の自身に触れさせた。夏野はぴくりと指先を震わせたが躊躇しつつ徹の自身を手で包み込み少しずつ動かしていく。
出来ると言い張った夏野だが自分で自慰をすることも少なく、ましてや他人のものに触れるなど初めてのことだった。徹の手つきを真似、懸命に扱く。
「あっ、ん…ふあ」
「ぁ、なつの…そこ、もっと擦って」
「は、ぁっ…ここ?」
「ん、夏野上手だ…」
水音と徹の吐息混じりの声が夏野の耳を刺激する。
初めての表情、初めての声、初めての体温。戸惑いも驚きも隠せないが胸を捕まれるような愛しさがこみ上げてくる。
「あぁ、ぅ…むと、さっ」
「はっ、気持ちいよ」
「おれも、すごっ…いい」
張り詰めたお互いの自身を速さをつけ扱けば忙しなく脈打ち始める。
徹は腰をずらし夏野の自身にぴたりと自分のものをくっつけ、一緒に扱きあげる。
「ひ、ぁ…やっ」
「んん…ぁ」
「あ、やめっイく…っ」
「出して…一緒に、ん」
「ぁあっ…!」
「頭痛い…」
「あんたこれからバイトだろ…?」
「飲み過ぎた…っ」
アパートの階段をうなだれながら下りる徹に夏野は同情するでもなく溜め息を吐いた。
「だいたい弱いならそんな飲むなって」
「だってえ…」
「たくっ、家帰ってさっさと寝れば…」
「………ぁ」
階段を下る足を止め、頭に残るお互いの熱の余韻を思い返せば自然に俯いてしまう。熱に侵された顔を隠しながら徹は小さく空気に音を乗せた。
「な、夏野…そのお、なんだ。俺のこと徹ちゃんとか呼んでみないか」
「…は?」
「いや、みんなそうやって呼ぶし、恋人だし…」
「…か、考えとく!じゃ、俺こっちだから」
熱を増した顔を風にあてるように夏野は足を急かす。徹は夏野の背中を目で追いかけながらバイト先に足を向けて歩を進めた。
「お待ちしております」
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2011.3/28
橋本さん、お誕生日おめでとうございます!コンビニ設定だったのですがあまり目立ちませんでした…。出会いから告白までいつか書かせてください!
お粗末さまでしたー。