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水平線に浮かぶ世界 1

何度でも思い出す事がある。
心の中にぽっかりと空いてしまった場所の事を。
あの時俺は何を伝えれば良かったんだろう。
なぁ、教えてくれ。




**水平線に浮かぶ世界**





俺、室井樹は只今鬱真っ盛りだ。

高校生活に不自由を感じたことが無い俺が新学期早々鬱なのかまず説明しなくてはならない。



事の始まりはお袋の突然の報告からだった。

『お父さん神戸に転勤になったんだって。』

確か3月の真ん中あたりだった。
あんまりいきなりだったもんだからへぇだのはぁだの間の抜けた返事しか出てこなかった。
俺はお袋から次の発言が飛び出すまでボーとお笑い番組を見ていた。
確かブレイクしそうな芸人特集だったかな。

『樹の学校に転校届けださなきゃだわぁ』

お袋の爆弾発言を聞いた瞬間思わず飛び起きてしまった。
テレビで芸人が新ネタのオチを言っていたが、そんなのに構っている余裕は無かった。
テレビなんていつだって見れるもんだろ。

『転校ってなんだよ。』
『お父さん単身赴任ってわけじゃないのよ、今回。母さんたちも着いて行かなきゃでしょ?だから神戸に引越しすることになったの。』

その時俺は高1の春休みの真っ最中だった。
まぁつまり今は2年だ。
ふつーに考えと2年といえば受験前に思いっきり遊べる最後の年だ。
その楽しい一年をよく知らないトコロでまた最初から高校生活を始めなくちゃいけないのか?
他の連中が有意義に過ごす一年を損することになってしまう。
そんなのは絶対に嫌だった。
だからお袋にこう言ってやった。

『俺こっちに残る。』
『何言ってるの!何処に住むのよ!この家人に貸しちゃうんですからね。』
『川崎のばーちゃんちに居候する。川崎からだったら東京だってそんなに遠くないし。』
『駄目です!義母さんにご迷惑お掛けしちゃうでしょ!あんたは母さん達と一緒に神戸に引越すのよ!お姉ちゃんと違ってまだ高校生なんだから。』
『俺ホントに川崎に行くからな!神戸なんて行くつもり無ぇし。』
『タツル!!いい加減にしなさい!』


まぁこんな風にぎゃあぎやあ騒いでるうちに親父が帰って来て俺をどうするかを勝手に決めた訳だ。
まさに即決みたいな勢いだった。
もちろん反論は認められなかった。

で、結局俺は今川崎のばーちゃんちに泊まらして貰っている。
親父の意見だと積立てしていた修学旅行の金が勿体無いから夏休みまでこっちに居て、2学期から転校するって事になった。
オーストリア行きを楽しみにしていた俺としては親父の決定は神の声だった。
でも結局転校することは決まっているので納得しきれない。
むしろ2学期から転校っておかしくないか?
憂鬱でしょうがない。
結局転校することを考えて鬱になる俺の気持ちが少しは分かったか?
もう転校とかしなくていいんじゃないか、ホント。



「はぁ」
「樹最近ため息多いな。カノジョにフラれた?」

そうだまだ学校に居たのか。
ご苦労な事にクラス委員長が黒板の前で必死で何か説明している。
最初から聞く気が無いのか目の前でやたら機嫌よく話す藤田のニヤけた顔を見ていたら思わず頭の中で大演説をぶちかましてしまった。
お気楽で優雅なことだ。
一瞬でこれだけ考えられる俺は委員長より演説のセンスがあるかもしれない。


……今のトコロ転校する事をギリギリまで友達に話すつもりはない。
下手に周りのヤツらに気を遣われるのが嫌いだからだ。
だから話せなくて色々溜まってる。
それがついため息になるんだよな、多分。
…くそっ、やっぱり調子悪ぃな。


「フラれる訳ねーだろ。あっちが俺にゾッコンなんだから。」
「そっか。でもまぁ…そろそろ樹の限界かなと思って。それより今日やっと無修正のDVDが鹿嶋から回って来たんだよ!放課後俺んちで鑑賞会しない?」


まだそんなんで楽しいんでんのかと毒づこうと思った瞬間、委員長に静かに!と注意されたので藤田が渋々前を向いた。
ったく長々と何やってんだか。
キチョーな放課後の時間を潰さないで貰いたいもんだ。

「今年文化祭ですが、一応それぞれのクラスから2人ずつ代表を選出してその2人にクラスの出し物の決定・管理、学校全体の調整をして貰いたいと思います。
誰かやりたい人いませんかぁ?」

あーめんどくせぇな。
これ決まらないと帰れないのかよ。


「俺やります」

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