※Attention!
※ミラボで佐々木が女の子で総受けです。みんな佐々木に片想い。あと、色々捏造あります。
※今から一週間、三中・一中・勝者の会がひとつ同じ屋根の下で合宿します。
※果たしてこの一週間で佐々木とくっつくのは誰になるのでしょう?
そんなわけで、超絶季節外れな恋の夏合宿が始まります。あいのりみたいに考えてくれたらよいです。れっつごー(^^)/
「キャプテーン、おやつはひとりいくらまでですか?」
「アホか。なにしに行くつもりなんだよ」
そんな僕らの夏合宿が始まろうとしていた。
夏合宿‐初日‐
***
バスに電車にと、次々と乗り継ぎしていき気付けば結構な田舎に来ていた。
強豪校なら専用のバスがあってそれで行けるけど、僕らは廃部寸前の弱小野球部…自分達の運賃で、自分達の足で、合宿先へ向かっていた。
「やっと電車の長時間に解放された!と思った矢先に今度はバスかぁ〜…帰りも気が遠くなるね」
「うん…帰りはきっと疲れてるだろうしね」
不満を漏らす星野くんに同意する栗男くん。
「え!これって遠くへ乗れば乗るほど運賃上がってくヤツなの!?どんどん上がっていってんだけど!」
「終点で降りるぞ、800円は覚悟しとけよ新浦」
「そんなぁ、しかもここ携帯の電波繋がりませんよキャプテ〜ン;」
「田舎だからな」
そう。かなりの田舎だ。周りには田んぼとカカシくらいしかない。古びた家がいくつかあるけど、多分人は住んではいないかな。
『〇〇ー次は〇〇です。お降りの方はボタンを押して…』
「まだまだですね、宮本くん」
後ろに座る宮本くんに声をかけてみる。振り返ると、右手には。身体が鈍らないよう動かせるところは動かしておこう、というわけか。
「早く野球してぇなー…」
宮本くんはそう呟くだけだった。電車でもバスでも、相当退屈そうだったしなぁ…。
「キャプテン、海には行くんですよね?」
新浦さんが期待を込めて聞いた。
「時間があればな」
「えぇ〜行きましょうよぉ!私この日のために水着選んで来たのに〜…ね、佐々木くん!」
「え!?あ…はい」
突然話しかけられてビックリした。
合宿で海へ行くかもしれないと聞き、新浦さんに連れられてデパートで水着を見に行った。「スクール水着じゃ恥ずかしいんだから!」そう言われて断れなかった。
「(でも水着…嫌だなぁ…)」
肌が露出するのが嫌だった。人に見られるほどきれいでもないし、それに最近練習で筋肉がついてきて肩幅が大きくなってしまっていた。キャッチャーをやるとよくあることだと北別府さんに言われた。
練習の成果が出てて嬉しい。でも水着はかなり抵抗があった。
「二人で見てきたんだよね?水着」
何故だか食いついてきた星野くん。
「そ!じゃなきゃ佐々木くん絶対スクール水着にするんだもん!せっかくの海だし、可愛いのにしなきゃ!」
「へぇ〜…佐々木くんの水着姿見てみたいな〜」
「新浦のチョイスだろ?ちょっと気になるよな〜…」
「福本さんも星野くんも、やめて下さい!」
「おいお前らなぁ、まだ海行くと決まったわけじゃないからな!」
「行かなきゃボイコットしますよキャプテン!」
「アホか。ひとりでやっとけ」
呆れ顔でキャプテンは新浦さんをあしらい窓の外へ視線を戻した。
僕もまた視線を宮本くんに戻す。窓にもたれかかって小さな寝息を立てていた。
外は、窓越しからでも分かるくらい日が立ってて暑かった。これはすぐ体力を吸い取られそうだ、そう思い僕もまぶたを下ろした。
新浦さんと星野くんと福本さんの話し声が耳についていた。
***
「まさか平松のお兄さんに送ってもらえるなんてありがたかったなぁ〜!」
「ラッキーだよな!」
窓から吹く風で前髪が上がっている古葉に城之内が危ないぞ、と車の窓を少し閉めた。
「いつも凶二が世話になってるからな。これくらいお安いご用さ」
「この車、お兄さんのですか?」
「あぁ…社会人になった初任給で有り金叩いて買ったんだ」
「免許取んのも大変だったっしょ?すげぇ!」
大人になれば当たり前なのに…だけど僕らは中学生。まだまだ子供だ。子供らしく妙にテンションが高い古葉と城之内がなんだかおかしかった。
「平松、感謝するよ。お兄さんに乗せて頂いて」
「いや大丈夫だ、沢村。勝者の会から部費出してバス借りるよりだいぶ安くなっただろ?」
「あぁ、おかげでなにかお楽しみが出来そうだ」
「えっ沢村なにするの?」
「それはお楽しみ」
先は長いんだ。今行き詰まっても仕方ない。時間を確かめようと携帯を開くと、もうすぐ12時になろうとしていた。いつもは3本立つ電波も1本2本になったりしていた。
***
バスの中は退屈だ。身体が鈍っちゃう。こんなので着いたらすぐ練習なんて、監督も酷なこと言うよね。
退屈すぎ…下の白線数えちゃえ。
「1本、2本、3本…あれ、4本?」
「おい尾崎うるさいぞ」
「だって退屈なんだもーん。まぁ僕は小さいから足伸ばして眠れるけどさぁ、落合は大変だねー背が高くて足が長いと寝にくいでしょ」
「お前にそんな心配されなくてもいいんだよ、成長期来てんだから。お前それ嫌味か?」
「無理して寝るより僕に付き合ってよ。いっせーのーで、3!」
「こら勝手に始めんな!寝とけよ!」
「おい尾崎、落合静かにしろ」
「八重樫キャプテン…すみません…」
「だってキャプテン退屈なんですもーん」
「着いたらすぐ練習だって監督言われてただろ。寝とけ。炎天下の中での練習だ、体力なんてすぐ消耗するぞ」
「はーい」
それからも何度か落合にちょっかいかけてたら、iPodで音楽聴きだして僕は完全無視。仕方ないから大人しく窓の外を眺めてた。合宿先はまだまだ先だし時期に睡魔が来るだろう。
…と、一中バスの隣に違うバスが追い抜いた。
「…ん?」
一瞬、見覚えのある顔が見えた。緑の髪に赤い帽子ー…。
前の車が進み一中バスも前に走り出した。さっき追い抜かれたバスと隣同士になる。
…やっぱり、宮本くんだ!窓に額を当てて寝てる。
「ねぇ落合!落合ってば!」
「うるせー!いい加減にしろ!また八重樫キャプテンに怒られるだろ!」
「外、隣のバス見てよ!」
「はぁ?」
だけど、落合が見た時には遅かった。信号は青信号に変わり、すでに宮本くんを乗せたバスは出発していた。
「…なんだよ」
うわ、叩き起こされて落合めちゃくちゃ機嫌悪い!
「さっき隣にバスがあって、そこに宮本くんがいたんだよ!宮本くんだけじゃない、三中みんないたよ!」
「はぁ?…三中がこんなとこいるわけないだろ?」
「本当だってば!」
「…もうお前寝てろ」
あーあ、本当に相手にされなくなっちゃった…。
ところで、さっきのは宮本くんだったんだ…よねぇ…?
***
『ご乗車ありがとうございました。次は、終点ー…終点〇〇です』
「うわぁ…840円かぁ〜…」
「中学生にはちょっとキツいなぁ…」
「お前ら忘れモンすんなよー!」
『はーい!』
宿舎は普通の民家みたいな感じだった。
一旦みんな集合する。すると、宿舎の人が出てきた。
「武蔵丸三中野球部の皆さん!」
「今日から一週間お世話になります。よろしくお願いします!」
『お願いします!』
部屋割りは女子の新浦さんと僕。あと男子が大部屋を使うことに。荷物を置いて昼食。そこからすぐ練習に入る。
なんだか時間に終われてるような気がした。
「(頑張らなきゃ…!置いてかれてちゃ、ダメだ!)」
ただでさえ人数もギリギリなんだし、負担は少しでも軽い方が良い。僕ひとりが足を引っ張って迷惑かけてちゃみんなに悪いし…。
「あらあらっお客さん一気に来ちゃった!」
宿舎の人がカレーのお玉を手に声を上げた。
「お客さん…?」
「俺らの他にも合宿で来たってことですか?荒木さん」
「多分な…詳しく知らねぇよ」
キャプテンも知らなかったみたいだ。最後のカレーをご飯にかけて星野くんに託すと、宿舎の人は出迎えに玄関へと走って行った。
「はいは〜い、あら今度は一中ね?いらっしゃい!」
「なに!?一中だと!?」
「まさか、あの武蔵丸一中でござるか!?」
福本さん田淵さんを始めみんな戸惑いを隠せなかった。
「宮本くん…!」
僕は宮本くんを見た。その横顔はカレーしか集中していなかった。
みんなが戸惑う中、容赦なく食堂のドアは開かれた。
「喉渇いた〜…あれ?」
「お、尾崎…!」
「あー!やっぱり三中!ほら落合、三中いたよ!」
「またお前はそんなこと…え?」
「落合まで!?」
「おまっ…三中…な、なんで…!?」
「俺らも合宿、なんだよ」
カレーのスプーンを置いて立ち上がり、みんなを代表して荒木キャプテンが言った。
尾崎くん落合くんの後ろから身体の大きな人が出てきた。あ、この人見たことある…。
「あ、八重樫キャプテン!ほらね、やっぱり三中いましたよ!」
「あぁ…そうみたいだな」
「ちわ」
「どうも」
そうだ、キャプテン…キャッチャーの八重樫さんだ。
三中と一中同士のキャプテンが挨拶と握手をし合う。だけど、なんだか険悪な雰囲気…。
「…驚いたよ。まさか、一中と三中にまた会えるなんて」
そんな中、また知らない声がしてみんな振り返る。
「あっ…さ、沢村さん!?」
「どうも、一中三中の皆さん」
勝者の会も、合宿だったんだ…。
「…と、こんな時でもマイペースにカレーに集中か…宮本くんらしいね」
沢村さんがクスリと笑う。確かに…宮本くんまだカレー食べてる。
「み、宮本くんっカレー食べてる場合じゃないですよ!一中や勝者の会も合宿なのに、」
僕が言い終わる前に、宮本くんが立ち上がる。僕を押し退け前に出ると一中と勝者の会の人たちを睨み、そして笑った。
「…へっこの合宿楽しくなりそうだな」
な!と僕の肩を叩いた。宮本くんにつられて僕も笑っては見せたけど、不安だった。
こんな凄い人たちと一週間合宿するんだ…って思うと、プレッシャーっていうか、たくさんのなにかが溢れてきた。
そして…この一週間は、僕にとってもみんなにとっても、大きな歯車が動き始めた…そんな瞬間だった。
*二日目へ続く*