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ミナキとマツバ

僕が日がなこうして空を見るのには理由がある。大好きな人がきっとどこかで、この同じ空を見ていると信じているから。
彼が隣にいないとき、僕は度々、自分でも知らないうちにため息をついていることが多いらしい。
いつもゴースたちに心配される。
僕自身にはため息をつく理由なんてわからないから、否、わかっているけど、無意識に出るから始末が悪い。なんでもないよ、と呟いてみても、また数分後には。

「それもこれも」

君の所為なんだからね。
恨み言は胸のうちで。遠い空の遠い人にはどうせ届かない。
もう少ししたらジムを開けよう、それまではまた、君と同じ、この空を見ていよう。
ぴりりり…。そんなことをしていると、ポケギアが鳴った。ポケットから出して液晶画面を覗く。

「あ…」

ぴっ、と親指がボタンを押す。
無意識に。

「もしもし」
『やぁマツバ、私だ』
「…今時オレオレ詐欺なんて流行らないよ、ミナキ君」
『声でわかるだろう?君ならば』
「今何処にいるの?」
『波の音が聞こえないかい?アサギだ』
「…近くにいるなら、顔くらい出してよもう」
『あぁ、そうだな。土産があるんだ、今から会いに行くよ』

ざざん、ざざん、緻密で精密なスピーカーから遠い波の音がする。
熱いお茶を用意していてくれないか、なんて、宣う僕の友人。
もうすぐジムを開けるんだけど、と口を尖らせば彼は少し慌てたように息を吐いた。

『走っていく』
「転んじゃえ」
『今すぐ行こう』
「早くしないとお茶が冷めるからね」
『ああ、ああ、待ってくれ、こらゴース!何処へ行くんだ!』
「じゃあねミナキ君」
『ああ、待ってくれ、マツバ』
「なあに?」

声はすれども姿は見えず、ポケギアの向こうでゴースが笑った気がした。

『私も君と同じ空を見てるよ』

青い空は、僕の恋人の目の色だ。
だから僕は今日も、明日も。

「…知ってるよ、ばか」


君に繋がる空を見る。

ミナキとマツバ

マツバが(さみしい)と思うとき、それは決まってミナキが傍にいないときだ。さみしいなあ、とゴースに呟けば彼のゴースは困ったようにゆらゆらゆれた。
ポケギアを見つめては視線を逸らし、またすぐにポケギアを見た。
海を渡ったクチバシティにいる、と連絡が入ったのは二日前。あれからまだ二日しか経っていない、しかし、会っていないのはもっと前。マツバは(さみしい)と心の中で繰り返した。

「ミナキくんのばかあ」

ゴースは困ったようにゴーストたちと顔を見合わせた。我が主人を困らせる輩を快く思うわけはなく、しかし得意の呪いをかけるわけにもいかない。
つまりどうすることもできない。
マツバ自身にもそれは分かり切っていた、ミナキくんは遠いところで遠い北の風を追い掛けている。
僕は僕の役目を、ここで果たすだけ。ジムリーダーとして。
ミナキくんミナキくん。マツバがその名前を口にするたび、ゴースたちはふわふわふよふよと宙に遊んだ。
彼らの主人がミナキなる輩に執着していることをゴースたちは知っていた。ミナキが北風を追い掛けるのを引き止めることもしない彼らの主人は、だからよくこうしていない男の名前を呼ぶ。
不毛な行為。それで何かが変わるわけでもない。不毛な恋。傍にいないと見えない愛。
マツバはぺたりと顔を机に伏せた。(会いたいよ)呟くことに意味を見出だせず心の中でマツバはミナキに言った。フワライドがぷわぷわと庭で泳いでいる。
エンジュシティに春が訪れようとしていた。
マツバは伏せていた顔を上げて湯呑みを見る。さくら風味のお茶はいつしか冷めていて、飲む気もなくなっていた。
ミナキくん。
マツバは想う。
ばか。
会いたいのに会えなくて会いたくないと思わせるほどに会いたい。
ぱちんとポケギアを開きボタンを見ることもなく番号を押す。
二回目のコールでつながった。

『もしもし』
「ばか」

プツン。
だいすきな声が聞こえ、マツバは満足した。通話終了ボタンを無意味に連打して終わり。
そのまま通話終了ボタンを長押しして電源を落とした。ポケギアが沈黙する。
ああ清々した、マツバはふふと笑った。ゴースたちも顔を見合わせて笑った。我が主人はミナキの扱いをよく知っている。流石は主人だ。
マツバは手をのばして湯呑みを掴んだ。冷めきったお茶はまずくて、それでもなぜかおいしいと思ってマツバはまたすこし笑った。

そして次の日にミナキが顔を出しにやってきた。クチバ土産の煎餅と饅頭を携えて、ただいまなんだぜ、と宣うミナキにマツバは笑って、ばか、と言った。
ゴースたちはミナキのゴースと顔を見合わせた。(会いたいんだぜ)そんなことを言っていた、とミナキのゴースはマツバのゴースたちに云った。
彼の主人がマツバなる青年に執着していることをゴースは知っていた。

「ただいま、マツバ」
「おかえり、ミナキくん」

春だなあ、とゴースは思った。

ミナキとマツバ

「あまったるい」
「僕、甘いもの好きだもん」
「最近砂糖入れすぎじゃないかマツバ」
「ミナキ君甘いもの好きじゃなかったの?」
「嫌いじゃないさ、でも君ほど好きなわけでもないんだぜ」
「ふうん。…あまったるい、とか言われても急にキスしてきたのは君なんだから寸前までお饅頭食べてた僕に言われても困るよ」
「キスについては構わないのか」
「だめって言ってもするでしょ」
「したいからするだけさ」
「開き直らないでよばかちん」

すまない、と私は言ってマツバの身体をぎゅっと抱きしめた。
甘いものが好きだというマツバの身体からも常に甘いかおりがしている(、ように私は思う)。んー、と私の腕の中で身体を捩ってマツバは微かに頬を膨らませた。

「すぐにこうやって流そうとするんだから」
「流されるマツバもマツバだ」
「何だい僕のせいにするの、ミナキ君?」
「そこもまた可愛いんだぜ」

ちゅっ、ちゅ、と額にキスを落としながら私はマツバに笑いかけ、拘束を解きソファーに座らせた。
拗ねたように私を見返すマツバに、テーブルに食べかけの饅頭を見留めその口元へ運んでやる。
もう、と唇を尖らせつつもうれしそうに饅頭を頬張るマツバに私は知らずと笑みが零れる。待っていたまえ、とダイニングにマツバを残しキッチンへ向かう。一人暮らしにはやや大きめの冷蔵庫の下から二段目には目当ての箱がある。
皿とフォークを棚から出し、こちらを興味深げに覗くマツバの元に戻る。がさがさと箱から出したのは今コガネシティで有名なケーキ屋の一番人気のショートケーキだ、大振りの苺が柔らかなホイップクリームの上に乗っている。
わあ、とマツバが身を乗り出して箱を覗く。ケーキが買ってあるとは一言も言っていない、ちょっとしたサプライズだ。
急に生き生きし出したマツバの切り替えの早さにうれしい厭きれを憶えつつもショートケーキを皿に乗せる。手をのばすマツバを、しかし私は制す。

「食べさせてあげるんだぜ」
「…僕子供じゃないんだけど」
「ああ、子供ならもっと素直だ」

フィルムを剥がし柔らかなスポンジにフォークを入れる。沈んでいく銀色の輝きに負けないほど目を輝かせマツバはケーキを見つめている。スポンジの心地好い抵抗に私も自然と笑みが零れる。
一口分より少し多めにフォークでケーキを掬う。それをマツバの口元へ運んだ。

「ほら、マツバ」
「…んん」

あー、と口を開けたマツバが、むぐ、とケーキを食べる。わざと多めに掬った所為で小さな口から白く甘いクリームが溢れた。
あ、自分の唇へ視線を落とし、マツバは赤い舌でぺろりと舐めた。それでも舐めきれなかったクリームを親指で拭う。白い指白いクリーム艶めく舌先。目を眇める。
努めて冷静を装い二口目を掬う。

「ん。……おいし、」
「それはよかった」

白い喉が満足そうに上下する。
時折溢れたクリームを舐めとる、仕草が実に艶めかしく愛らしい。
弛められる頬やくるくる変わる表情、アメジストの瞳はきらきらと輝き無邪気な視線が私を映す。

「どうしたのミナキ君?」
「ん、ああ…愛してるなぁと改めて思ってただけだぜ」
「…なに、どうしたの急に」
「何でもないぜ、最後一口だマツバ」
「うん」

ぱく。
しかしそれを食べたのは私だ。
マツバの口元まで運び、あーん、と唇を開け入れる手前で私の口へ持っていってやった。
口内にクリームの甘さと苺の甘酸っぱさが広がる。確かに甘いが、決してくどくはない。程よくさっぱりして人気があるはずだと思った。美味しい。
ああ、マツバが声を上げた。何してるのさ!と私の腕を掴む。

「それ僕のじゃなかったの!」
「ああ、そうだったかな」

一口くらいいいだろう、私はにこりと笑ってその頬を撫でる。またマツバが頬を膨らませる。
その首筋に手を置き、ぐいと引き寄せた。アメジストの目が見開かれる。うわ、声を上げたその唇を空かさず自分のそれで塞ぐ。
柔らかい唇の間に舌を差し入れ、ちゅく、と音を立て絡ませた。
びくんと震える身体と、反射的に私の肩を押し返す腕。その手首を掴みソファーに縫いつけた。抵抗という抵抗の意識を削ぎ、キスをする。マツバは息を震わせる。

「ん…ぁっ…ミナ…、」

微かな吐息で私の名が呼ばれ漸く唇を離す。
私は先程のマツバを真似て自分の唇を舐めた。

「あまったるい」
「っ」
「君は本当にどこもかしこも甘いな、マツバ」
「ばか!」

結局君は甘いものが好きなの、嫌いなの?そう言ってマツバは私の頬をつねった。


(甘いもの?嫌いじゃないさ、でも君とのキスは大好きだぜ!)

アポロとランス

初めてひとを殺めたときその返り血で染まった手のひらをただ呆然と見つめていた。動かなくなった主人の傍で未だ状況が把握できていないのか首を傾げて鳴くポケモンを無理矢理モンスターボールの中に押し込めた。入ってしまえばおとなしいもので今まで騒ぎ立てていたのはこのトレーナーの所為ではないのかと眉を寄せた。どくどくと心臓が強く脈打っている。死なせた、死んでしまった。違う、意図的なもの、意図的な感情がそこにはあった。殺めた。私は、世間一般に言う、殺人を犯した。ターゲットのポケモンを奪う、ただそれだけの任務にこのトレーナーはひどく抵抗をした。だから、ポケモンを使ってトレーナーを攻撃した。まさか一撃で、とは言い訳に過ぎない。私がひとを殺めたのはそれが最初で、まだ十にも満たない幼少の頃。生まれながらの悪だった。それより以前の記憶は確かにあるがまるで靄がかかったように霞んで思い出せない。いっそそうしてしまった方がいいから脳が勝手に記憶に鍵を掛けたのだろう、思い出すのを躊躇った。そうしていつしかロケット団の幹部にまで昇り詰め、ロケット団いち冷酷だと言われるようになった。ヒワダタウンでのヤドンのしっぽ計画に始まり各地での悪事に携わった。ポケモンは道具だ、壊れれば新しいものを、より強いものを、ただそれだけを求めた。ポケモンは仲間ではない、ただの道具。冷酷であるがゆえ、冷酷な感情に心を殺した。任務のためならひとを殺めポケモンを奪い、幾らでも裏切り傷つけた。任務こそが私の生きる糧だった。まだ何の感情も持たない幼い私を拾ったのは今も尚私の光であり私の拠り所となる存在、現ロケット団を束ねる幹部、アポロさん。忘れもしない土砂降りの雨の日、私に傘を差し柔らかい眼差しを向けてくれた。唯一の光。悪の中の悪でありながら、私にとってはかけがえのない光。アポロさんのためならば何でもやった。金を巻き上げることもポケモンを奪うことも。ひとを殺めることも。私にはそれが幸せであった。冷酷だと謳われ非道だと指差され、それをもねじ伏せる行いで名を馳せた。ひとを殺めることに躊躇いを覚えなくなった。ポケモンを奪うことに後ろめたさを感じなくなった。これが私だ。私という存在価値を見いだした。返り血を見止めることもなくなった。心はすでに死んだのだ。心はすでに殺めたのだ。ロケット団いち、冷酷な男なのだ。(そうでしょう?)

「最近、物騒な話が多いですね」
「そうですか?」
「おや、聞きませんか。おまえのように冷酷で非道な男が街を賑わせているようですよ」
「それは知りませんでしたねぇ」
「そうですか」

報告書から顔を上げたアポロさんはそのアイスブルーの瞳を一瞬だけ私へ向けた。立ち尽くしていた足を踏み出し窓辺に佇むそのひとの元へ行く。その眼下にはコガネシティの都会が広がっている。報告書の分厚い束をテーブルに戻し、アポロさんは私から視線を逸らした。その身体に、縋るように腕を回した。その身体は私よりも少しだけ冷たい。爽やかであまいコロンを深く吸い込み抱きしめる。

「………」
「……沈黙は饒舌ですよ」
「……はい…」

心の奥底まで、その冷たいアイスブルーの瞳で覗かれた気がした。顔を伏せてその背中に顔を押しつける。たった今さっき濡れたばかりの手のひらをぎゅうと握りしめ私は寡黙だった。アポロさんもまた、寡黙だった。無垢な白を穢す不粋な真似はしたくなかった、しかし饒舌な私の醜い感情がそれを許さなかった。私はただそのひとに縋りつく。そうすることで許されたかった。そうすることで感じたかった。私が生きている証。私の存在価値を見いだしたかった。

「静かですね」
「………」
「おまえもそう思いませんか」

私は静かに頷く。すべては、そう、物騒なのは私の心だけでいい。

ミナキとマツバ

煙草を買ってみた。ほんの好奇心で。ハイライトやマルボロやラッキーセブンや何か色々種類があって、適当にボタンを押して買ったのはまさかの女性向けの華やかなパッケージのものだった。やはり目を瞑ってでは駄目だったか、と今更ながらに思う。
都会の冬はもう終わりがけで、その名残のようにちらちらと微かな雪が舞っていた。もう二月も半ばなのだしいい加減あたたかくなってほしい。
ポケギアを意味もなく開閉させながら私は煙草を箱から出して銜えた。ライターで火を点ける。煙がゆらゆらゆれる。コガネのビル街に呑まれた煙を見送り、私は恋人の待つエンジュへ道を急いだ。

…煙草の匂いがする。
眉を寄せてマツバは言った。玄関の戸を叩き名を呼び、ただいま、と言った直後だ。座敷広間へ私を誘いながらマツバは、しかも何で女の人向けなの、と言う。
千里眼で視えたらしい。ポケットから煙草の箱を出す。
目を瞑っていたんだ、私がそう言えば、何で目なんか瞑ったの、とマツバは厭きれたように私を振り返った。手元の箱を見る。

「煙草なんて吸ったことないから銘柄や味なんて知らないんだぜ」
「パッケージ見たらわかるじゃない、普通男の人は買わないよ」

目を瞑ってたからわからなかったんだぜ、私は馬鹿正直に繰り返した。君らしいね、マツバは苦笑を寄越した。
熱いお茶を煎れながらマツバがゴーストにお盆を持ってくるよう頼む。私は土産の饅頭が入った袋を長机に置いた。急須にお湯を注ぎながらマツバは身を乗り出す。

「あまい?」
「試食してないからわからない」
「こしあんかな」
「つぶあんと半々の奴にした」
「やった」

湯呑みにお茶を入れるマツバ。
私は携帯灰皿とライターを机に置く。

「マツバ」
「なあに?」
「煙草は苦手かい?」
「好きじゃないよ、でも君が吸いたいならいいよ」
「買ってみたはいいが、実は煙草の良さがわからないんだ」
「だって煙草なんて害にしかならないじゃないか」
「好きな人は好きらしいんだぜ」
「君が好きにならなくてよかった、ミナキ君」
「やっぱり嫌いなんじゃないか」
「好きじゃないだけだよ」

ふう、と息を吹き掛けお茶を冷まし、マツバはアメジストの瞳で煙草のパッケージを見つめる。
そしておもむろにその中から一本抜いた。

「あ、マツバ」
「一本だけ」
「吸ったことないのだろう」
「君だってそうだったじゃない」
「まあ、そうだが…」

ライターで先端に火を点ける。ふわっ、煙がゆらいだ。すうっ、マツバは何のためらいも間もなく、息を吸った。
そして噎せた。
ごほっ、ごほ、口に手を当てマツバは目を潤ませる。ううう、とくぐもった、苦しげな声がする。
私は息を吐いて、マツバの手から吸いかけの煙草を取った。そうら、言わんこっちゃない。
四分の三ほど吸って携帯灰皿で消した。

「大丈夫かマツバ」
「…うー……」
「あんなに一息で吸うからだぜ」
「にが、い」
「煙草だから当たり前だろう」

ぜいぜいと息を乱していたマツバは漸く息を整えお茶を飲んだ。まだ少しだけ目が赤い。ふうわりと宙に消えた煙でゴーストたちが遊んでいる。ふっ、息を吐く。
長机の煙草の箱をポケットにしまった。マツバは何とも言えない表情で私を見てくる。お茶と饅頭とを交互に口に運び、不思議そうに私を見る、それこそ穴が孔くのではないかと私が口を開きかけたときマツバが身を乗り出してきた。
ふに、と唇にやわらかい感触。

「ん」
「…やっぱり、苦い」
「え、あ、ああ」
「煙草、僕は好きじゃないな」

唇を尖らせたマツバが悩ましげな視線を私の少し膨らんだポケットに向ける。
かたんと身を戻したマツバは立って私の隣に来た。頬に饅頭の白い粉がついている、それを指の背で落としてやりながら、そうか、と言った。アメジストの視線が私を見た。私はちいさなさくらんぼうの唇を見る。マツバがこちらへ少し身体を倒したので私は彼をやさしく抱きしめた。
積極的だな、と微笑むと、んー、とどこか拗ねたような声がする。気づけばゴーストたちもどこかに消えている。よく空気を読んでくれるものだ。
こつ、と私の胸に額を押しつけてマツバはぼそりと言った。

「君の唇は、…僕の…なの」

ふう、とその唇が吐き出した息は饅頭のひどく甘い匂いがする。
私はマツバの顎に手を掛け、上向かせた。眩しそうに目を細めた、アメジストの瞳に私の困ったような、うれしそうな、奇妙な顔が映っている。ふ…、と触れるだけのキスをする。

「それでも、君の唇は甘いなマツバ」

腕をのばして抱きついてくるマツバの身体を、私はそっと床に押し倒した。


(苦ささえ忘れて甘い夢を見る)
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