2024-5-12 09:06
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僕が日がなこうして空を見るのには理由がある。大好きな人がきっとどこかで、この同じ空を見ていると信じているから。
マツバが(さみしい)と思うとき、それは決まってミナキが傍にいないときだ。さみしいなあ、とゴースに呟けば彼のゴースは困ったようにゆらゆらゆれた。
「あまったるい」
初めてひとを殺めたときその返り血で染まった手のひらをただ呆然と見つめていた。動かなくなった主人の傍で未だ状況が把握できていないのか首を傾げて鳴くポケモンを無理矢理モンスターボールの中に押し込めた。入ってしまえばおとなしいもので今まで騒ぎ立てていたのはこのトレーナーの所為ではないのかと眉を寄せた。どくどくと心臓が強く脈打っている。死なせた、死んでしまった。違う、意図的なもの、意図的な感情がそこにはあった。殺めた。私は、世間一般に言う、殺人を犯した。ターゲットのポケモンを奪う、ただそれだけの任務にこのトレーナーはひどく抵抗をした。だから、ポケモンを使ってトレーナーを攻撃した。まさか一撃で、とは言い訳に過ぎない。私がひとを殺めたのはそれが最初で、まだ十にも満たない幼少の頃。生まれながらの悪だった。それより以前の記憶は確かにあるがまるで靄がかかったように霞んで思い出せない。いっそそうしてしまった方がいいから脳が勝手に記憶に鍵を掛けたのだろう、思い出すのを躊躇った。そうしていつしかロケット団の幹部にまで昇り詰め、ロケット団いち冷酷だと言われるようになった。ヒワダタウンでのヤドンのしっぽ計画に始まり各地での悪事に携わった。ポケモンは道具だ、壊れれば新しいものを、より強いものを、ただそれだけを求めた。ポケモンは仲間ではない、ただの道具。冷酷であるがゆえ、冷酷な感情に心を殺した。任務のためならひとを殺めポケモンを奪い、幾らでも裏切り傷つけた。任務こそが私の生きる糧だった。まだ何の感情も持たない幼い私を拾ったのは今も尚私の光であり私の拠り所となる存在、現ロケット団を束ねる幹部、アポロさん。忘れもしない土砂降りの雨の日、私に傘を差し柔らかい眼差しを向けてくれた。唯一の光。悪の中の悪でありながら、私にとってはかけがえのない光。アポロさんのためならば何でもやった。金を巻き上げることもポケモンを奪うことも。ひとを殺めることも。私にはそれが幸せであった。冷酷だと謳われ非道だと指差され、それをもねじ伏せる行いで名を馳せた。ひとを殺めることに躊躇いを覚えなくなった。ポケモンを奪うことに後ろめたさを感じなくなった。これが私だ。私という存在価値を見いだした。返り血を見止めることもなくなった。心はすでに死んだのだ。心はすでに殺めたのだ。ロケット団いち、冷酷な男なのだ。(そうでしょう?)
煙草を買ってみた。ほんの好奇心で。ハイライトやマルボロやラッキーセブンや何か色々種類があって、適当にボタンを押して買ったのはまさかの女性向けの華やかなパッケージのものだった。やはり目を瞑ってでは駄目だったか、と今更ながらに思う。
性 別 | 女性 |
誕生日 | 10月2日 |
地 域 | 京都府 |