前作読んでなくても大丈夫だと思います。
ただのエロなので。
強引ですが愛はあります。
ではどうぞ。
傷痕2 暴かれた蕾
復讐に生きた俺の人生は、それを成した時点で終わるはずだった。
血にまみれたろくでもない人生。未練なんてなかったのに。
同じ敵を狙っていたあの獣のような男の出現によって、全てが狂った。
この醜い体を蹂躙され、奥底に封じていた“女”を引きずり出された。
全てが思わぬ方向に動きだし、今俺は。
あの男から、逃れられずにいる。
残凱(ザンカイ)と名乗った、あの美しく狂暴な男から。
忌まわしいはずなのに、あの非情な金色の瞳に心を乱されてしまう。
俺は一体、どうしてしまったのだろう……。
自分の心が分からない。
◇◇◇◇◇◇◇
「もッ、やめっ…」
「足りねぇよ……お前ん中だってまだ俺を求めてるぜ?」
ひくつく結合部分を見下ろし、残凱は笑った。
愛液をだらしなく垂らし、内部は熱く彼の肉棒を締め付けている。
残凱は彼女の膝の裏に手を添えて左右に割り開いた。
「もっと奥まで欲しいってよ……」
低く囁く。
体を進めながら身を乗り出して、彼女の苦しそうな表情を見下ろす。
欲望のまま自分を抱く男を彼女、紫婪(シラン)は睨み上げた。
出会った日から今日で五日目。毎夜のように彼は彼女を抱く。
明楼館、という娼館で。
初めて出会った日に残凱は紫婪を犯し気絶させた。そして連れて帰ったのが顔馴染みの女主人がいる明楼館だったのだ。
以来、紫婪はここで下働きをしている。娼婦として店に出すにはあまりに傷痕が目立ちすぎるのだ。
今の紫婪は残凱だけの娼婦のようなものだった。
「そう怖ぇ顔すんなよ」
「おま、のッ…せい…だろうがッ」
突き上げられる息苦しさと沸き上がる確かな快感にうめくように告げた。
容赦なく腰を使う男の表情に余裕があることが気に入らない。
乱されている自分が馬鹿みたいだ。
残凱の金色の眼差しが紫婪の身体を眺め回した。
「憎まれ口叩ける余裕がありゃ十分だ……なあ?」
「やッ! 痕に、触るなっ……やだっ!」
「何度見てもそそるぜ……ここからかっさばいてやりたくなる」
「変人……っ、はなせって! ……くッ」
胸の谷間から臍の下まで切り裂かれた刀傷の痕を、残凱は楽しそうに指でなぞる。何度も何度も。
その度に紫婪は切なげに眉を寄せて吐息を噛み殺す。
「……素直じゃねぇなあ。感じてんだろ?」
残凱は紫婪の耳元に唇を寄せた。
__触る度、俺のモン締め付けてくるぜ?
熱い吐息と一緒に吹き込まれた言葉に紫婪は真っ赤になった。
濡れた黒い目が残凱を睨んだ。
悔しそうな彼女の表情に沸き上がるのは暗い欲望。
泣かせたくなる女だと、残凱は内心ほくそ笑んだ。
どんなに快楽に突き落としても勝ち気な眼差しは反抗的で、そのくせ脆さを含んでいるのだ。
崩したいと思う。
紫婪が隠す“女”を引きずり出して犯したい。
「堕ちろよ……紫婪」
甘く囁いて唇を塞いだ。紫婪は目を見開き、口内を暴れまわる舌から逃れようとした。
けれど唾液も舌も絡めとられ、息苦しさに喘ぐだけ。
零れ落ちてくる鬣のような銀髪が擽ったい。
「ふっ…ん、ァっ」
ゆったりとしていた律動が重たく深い挿入に変わる。
奥から引きずられていく甘い快感に体が震えた。
濡れた音が激しさを増していく。
奥ばかりを突きながら残凱は紫婪の小さな突起に触れた。
一番繊細で強烈な快感を呼び起こすそれを摘まれ、紫婪は目を見開いて仰け反った。
「んぅッ! んん……!!」
絶頂の喘ぎ声は残凱の口付けに消えた。
残凱はゆっくりと唇を離すと紫婪の口の端から溢れている唾液を舐め取った。
紫婪は目を閉じて絶頂の余韻に打ち震えている。
残凱も腰の動きを止めてやる。
紫婪は乱れた呼吸の下、薄く目を開き自分を観察する男を見上げた。
「なん、で?」
「あ?」
「なんで、イかないんだよ……」
体内で硬度を保つソレの生々しさに芯が震える。
残凱は一回しか放っていない。その間に自分は何度、絶頂を迎えたか。
今回も引き延ばすつもりらしい男に、彼女は身を強張らせて警戒した。
残凱は嫌な笑みを浮かべて入れたままの腰を緩く回した。
紫婪は息を詰めた。
「そりゃおまえ、楽しむために決まってんだろうが」
「もう、やだっ……抜けよ!」
もがいて身を捩ろうとする。が、のし掛かる逞しい体が体重をかけてそれを阻む。
紫婪が動いたことで残凱がうめいた。知らず、中の彼を締め付けたのだ。
残凱は紫婪の両手を押さえつけ、怯んだ黒い瞳を真上から見下ろした。
「そんな顔すんな」
「なにがっ……」
「俺を怖がるんじゃねぇよ。ただおまえを感じてぇだけだ……」
動揺を隠さずに目を見開いて固まる紫婪。
半開きの濡れた唇に残凱の視線が向かう。
「可愛いぜ、紫婪」
そして、落とされた口付け。
貪るような荒々しい舌をの動きを感じながら、紫婪は目をきつく閉じて言われた言葉を思い出していた。
__可愛いぜ、紫婪。
そんなことを傷痕だらけの醜い自分に言うなんて。
考えられないことだった。
どうしようもなく心が乱れる。
そんな自分の気持ちを知る由もない残凱が再び動き出す。
再開した律動に震えが止まらなくなる。
尖った胸の先が厚い胸板に擦れる度、甘い痺れが走った。
だけど、その奥で走る擽ったいような痺れはなんだろう?
肉体に与えられる快楽とは違うソレ。
肌が粟立つような感覚。
結局、淫らな快楽が思考すら犯し始めて、紫婪は何も分からなくなった。
ただ、残凱がようやく絶頂を迎え、気絶しようとしたとき。
重ねられた手のひらの温かさに安心したのを覚えている。
彼女の中には、本人も知らない小さな蕾がついたばかりなのだ。