「悲しいなら泣いてよ」


泣きじゃくる私に君は云う


「我慢しなくても良いんだよ」


もう我慢なんてしてないのに
ぼろぼろと目から
零れているじゃない…


「雨が強くなってきたね」

そうね。
ポツポツと痛いわ


「たくさん濡れちゃったね」

お気に入りのドレスが
びしょ濡れだわ

家に帰ったら直ぐ
クリーニングに出さなきゃ


「髪の毛も肩も足も頬も」

せっかく綺麗にセットしたのに
台なしじゃない…


「目も、ね…雨のせいでいっぱい濡れちゃったね」



違うの、これは

雨のせいじゃないわ

私のせいなの 全部私の…



「お花…ありがとう。とっても綺麗だよ」


もう花なんて無いのに
雨に打たれて落ちてしまったのに

綺麗じゃないわ。ちっとも

買ったときは
とても綺麗だったのよ?



「…早く帰らないと、心配するんじゃないの?」


彼が…と小さく君は云う


そうね。
あの人は時間に煩い人だから


じゃ、また来るわね





私は愛しい名が彫られた
ソレにもう一度手を合わせた




そして喋れない君はポツリと云う




「雨がやっと止んできたね…」







――――――――――――
不思議な感じにしたかったんですが、微妙な出来に…