話題:今日見た夢
なんだかもの悲しいというか、辛い夢でリアルに涙が出たんだが。戦闘パートはおまけ程度。


サメ型戦から2日後くらい。鼎は宇崎にある話をしていた。

「鋼から聞いてたが…お前の中ではまだ終わっていなかったのか、あの事件。心の中にしこりが残っているんだろ…」宇崎は真顔で話を聞いてる。
「既に学校には話をつけてある。行っても…いいですか…」
鼎の声がやけに落ち着いている。

「行ってもいいよ。忘れ物を取りに行くんだろ?12年前の忘れ物をな。鼎はまだ戦闘後で調子が微妙だから彩音と晴斗を付けるが、いいよな?」
「…構わないです」


鼎が通っていた高校。晴斗と彩音は初めて鼎の母校を見る。ここが鼎さんが通っていた高校…。

「鼎…なんで高校に?」
彩音が神妙な面持ちで訪ねる。
「会いたい人がいるんだ。今はこの高校にいると聞いてな」


鼎達が来た時間帯は夕方、部活の時間なので学校は閑散としている雰囲気。校庭からは運動部の声が聞こえ、どこからか吹奏楽部の音色が。
鼎達は組織の制服を着ていたせいか、すんなりと校内へと通された。


校内で鼎に声を掛けた人がいる。先生らしき声。

「都筑!?都筑なのか!?」
鼎は思わず振り返る。そこには鼎の担任だった東條が。
「せ…先生…」
鼎は東條の姿を見るなり、どう反応していいのかわからない。

「お前…都筑だよな!?生きていたのか。声と背格好でわかったよ。顔が見えなくてもわかるさ」


「覚えていたんですか…」
「当たり前だろ。あれからもう12年になるのか…。お前…ずっと辛かったよなぁ…。あの事件で生きてたなんて信じられないよ」
東條は鼎を優しく抱きしめる。鼎は優しい先生の声に思わず泣いた。

「せ、先生…離して下さい…」
鼎はいきなり抱きしめられたせいか、戸惑いを見せる。
「すまん、悪かった」
東條は鼎を離した。


「都筑がゼルフェノアに入っていたのは聞いてたよ。最前線で怪人と戦っているんだもんな。名前を変えたわけは詳しくは聞かないが、色々とあったんだな…」

鼎はずっと震えている。
晴斗と彩音は鼎の「忘れ物を取りに行く」とはこういう意味だったのか…と。
鼎は事件当時17歳だったため、重傷レベルの火傷により卒業出来ずに中退せざるを得ない状態になった。


鼎の中に残り続ける「しこり」はこれ絡みだったと判明。

「都筑の同級生も感づいていた人がいたみたいでな。ゼルフェノアにいる仮面の隊員が都筑なんじゃないか?って、わざわざ僕に連絡してくれたんだよ」
「同級生が…?」
「都筑…いや、今は紀柳院か。お前が生きていたことが知れて先生は嬉しいよ。学校に来るのを躊躇っていたのもわかる。辛いもんな…」


この状況に彩音と晴斗は黙りこんでいる。東條は晴斗達にようやく気づく。

「君たちもゼルフェノアの人達か」
「えぇ。鼎の同僚…もとい、親友の駒澤です。こちらは悠真に可愛がられてた暁晴斗くんです」
「は、初めまして」晴斗はぎこちない。


「君が暁か。よく都筑が話をしていた小学生が今や高校生か。同じ組織という事は都筑の心の支えになってるみたいだな」

鼎はずっとうつむいている。東條は鼎がなぜ白い仮面を着けているのか、肌を露出出来ないのかをわかっていたためにそこには触れなかった。
言うと傷つけるかもしれない…。昔から都筑は繊細だったのはわかってる。


「都筑…無理だけはするなよ。お前を見てると無理しているように見える…。身体のダメージはまだ残っているんだろ…?」
「あぁ…私を苦しめてるよ…。仮面生活には慣れたが…これなしでは外出も出来ないほどにダメージは深い。もう、日常生活には戻れなくなってしまった…。奪われたのだからな」


東條は複雑になる。火傷のダメージはそこまで深刻なのか…。仮面なしでは外出もままならないなんて。

都筑が12年前の怪人絡みの事件の被害に遭い、変わり果てた姿になってしまった…。仮面姿になった都筑を見るのが辛い。鼎はどこか先生に顔を背けてる。本人も辛いのだろう。
それにあの冷淡な口調、あまりにも変わりすぎではないか?まるで別人だ…。


「都筑…戦いが落ち着いてからでいいからお前だけの卒業式、やろうと考えてるが…いいかな…。ちょっとした同窓会になるかもね。都筑は事件のせいで卒業出来なかったんだもんなー…。同級生も心配していたよ。特にお前の友人だった真中はずっとお前を待っている。ゼルフェノアの情報を追っているほどだよ。あの仮面の隊員は絶対悠真だって言ってな」
「咲が…待ってる?」

鼎はしばらく落ち着いてたが、また声が震えた。高校時代の友人が待っている…。


東條は明るい声で鼎に言う。
「実は真中も呼んだんだ。ゼルフェノアが来ると聞いてね。真中〜、出てこ〜い」
「は〜い」

真中と呼ばれた女性は遠慮がちに出てきた。真中は鼎の姿を見るなり、いきなり号泣。


「悠真だよね!?悠真なんだよね!?生きてたの!?私ずっと追いかけてたの…ゼルフェノアのこと。あの仮面の隊員、絶対悠真だと思っていたから…」
「咲…」

「悠真が生きていたなんて信じられない…。悠真…いや鼎…すっかり変わっちゃったね…。その仮面がないと外に出られないって…辛いよね…。そんなにもひどいの…顔の火傷…」
「かなりひどい。身体の跡はまあまあマシにはなったが、顔は大火傷の跡が酷くてな…。目にもダメージが及んでいるからこの仮面は手放せない。身体の一部となっているから」
「…嘘でしょ…」

真中は変わり果てた友人の姿にショックを受ける。だから夏でも肌を露出出来ないでいるのか…。組織の制服は白いせいか、暑そうには見えない。手袋は革製なのかがっちりとガードしてある。
東條は泣きじゃくる真中をなだめた。すぐに受け入れられないのはわかる。


「都筑…勇気を出して来てくれてありがとう。真中は当時の同級生に連絡してる。大丈夫、都筑の名では出さないから。名前を変えたのは何かしらわけがあるんだろう?深入りはしないよ」
「ありがとうございます…」

鼎は深く礼をした。


「紀柳院、体には気をつけるんだよ。先生はお前の味方だ。ゼルフェノアの怪人情報を見る度にお前を探していたから」

ゼルフェノアは対怪人組織のため、映像に隊員が映りこむ事がある。それを東條や真中は別の目線で見ていたという事だ。


3人は学校を後にする。鼎は真中と東條にまた会えるという希望が持てた。鼎の背中はどこか寂しげだが、何かが取れたようにも見える。

「鼎…12年前の忘れ物、取りに行けて良かったね。先生覚えていたじゃない。鼎の遅れた卒業式…出来たらいいね」
「…先生はわかっていたんだな…。私が事件のせいで卒業出来なかったこと。私が死んだと思っていた人が多い中、先生と咲は私がゼルフェノアにいると感づいていたのか…」
「鼎さん…味方たくさんいるじゃん。俺よりも多いよ」

晴斗は鼎を勇気づけようとする。鼎はようやく顔を上げる。
「…そうだな」


3人は徒歩で学校に来ていたのだが、背後でドーンと音がした。学校の方向から!?
「鼎!晴斗!学校に怪人がっ!戻ろう」
彩音は急いで白い銃を出しつつ学校へと戻る。
「生徒と先生達が危ない!」

晴斗も剣を出しつつ、走る。鼎の対の刀はまだ預けているため、白い銃と防御用の短剣しかない。
鼎は必死に向かう。なんで学校に!?なんで!?


本部の宇崎は鼎達に通信していた。
「敵は雑魚だけだ。鼎、落ち着いて考えるんだ。大切な人を守りたいんだろ?」


鼎は怪人に銃撃しながら校内にいる、東條と真中に声を掛けた。

「先生!咲!早く安全なところへ逃げろ!!怪人が出現した!生徒達の避難は進めてるから!」
「えぇ!?」真中は驚いた。
「紀柳院の言う通りだ、逃げるぞ。生徒達も避難させないとな。ここはゼルフェノアに任せるしかない」
「でも…」
真中は戸惑いを見せる。東條は真中の手を引いた。

この間にも敵は攻めている。雑魚とはいえ、市民からしたら怪人は恐怖の対象。


「晴斗!剣を斬馬刀にしろっ!薙ぎ払えっ!!」
「鼎さんわかったっ!」

晴斗は剣を変化、鼎は刃物がないために銃撃と肉弾戦で怪人と戦っている。鼎の蹴りの威力は格段に上がっていた。
東條と真中は遠目に鼎の戦闘を見る。なんだあの蹴り!?重みのある蹴りだった…。
全身に火傷を負った人間のやる攻撃とは思えない。


「これがゼルフェノアの戦闘…」
「す、すごい…」


彩音も銃で撃ったり殴ったりしながら戦い続ける。晴斗の剣のおかげで雑魚は全て撃破。


戦闘後。鼎は息を切らしながら学校を後にする。東條と真中は手を振った。紀柳院の卒業式は絶対にするからと。
鼎は僅かに振り返り、小さく手を振る。心なしか表情は明るく見えたような気がした。仮面に表情はないはずなのに…。

「先生、今…悠真笑ったように見えましたよ」
「不思議だな。仮面には表情なんてないのに。あいつには表情があるように見えるよ。紀柳院に助けられたな」


「鼎さん…なんか吹っ切れた?」晴斗は無邪気に聞く。

「先生が私だけの卒業式をやってくれると聞いて、希望が持てたんだよ。この戦いが終わってから…落ち着いてからになるな。この戦いで死ぬわけにはいかない」
「だったら禹螢の勢力、早いとこ倒さないとならないね」
彩音も会話に加わる。


3人は本部へと帰還。鼎は宇崎から預けていた対の刀を受けとる。

「鼎、あれから調べたら対の刀は大丈夫だったぞ。使える。それで…12年前の忘れ物は取りに行けたんだな?」
「…はい」
鼎の声に力が戻ったような気がした。母校に行ったことで何かが吹っ切れたんだなと。



戦闘パートはおまけ。


メインは鼎の担任だった先生と同級生の再会。東條先生と真中咲は、悠真が生きていたことを感づいていたようで…。
変わり果てた友人の姿に真中は受け入れられなくて…って、かなり複雑な展開。東條も内心ショックを受けている。


リアルに涙が出たのは鼎と東條が再会したところ。鼎さん的にはかなり勇気がいる行動だったのではないのかと…。
先生は声と背格好で教え子の都筑=紀柳院だとわかった。


この2人はゼルフェノアにいる仮面の隊員が都筑なのでは!?…と薄々感じていた。

真中に関してはゼルフェノア情報を追いかけるほど。組織の情報や怪人出現情報を求め、SNSやネット掲示板チェックに余念がない。もちろん組織のサイトも見てる。
そこで組織に所属する、紀柳院鼎が本当は都筑悠真なのではないか?…と感づいたわけ。


その2人が怪人と戦う隊員を目の当たりにしたのだから、衝撃は大きい。特に鼎の蹴りには驚いた模様。
鼎さんの得意技の1つが蹴りだから…。鼎は対怪人用の靴を履いているので怪人に攻撃が出来るのだが、一般人にはわからない。

鼎さんの蹴り技パターンは増えてる。ほとんどがハイキックやローキック・飛び蹴りだが、稀にヤクザ蹴りもする。あまりやらないが、肉弾戦ではパンチもする。


東條は事件のせいで卒業出来なかった、鼎の卒業式を同窓会で計画している。この戦いが終わってからになるんだけども。


鼎の担任だった東條は、鼎の母校→異動を繰り返して現在再び鼎の母校にいる感じ。
ちなみに東條は国語教師。