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小話











微グロで病んだオリジナル話
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何発もの銃声がどこか遠くで響いた気がした。いつも通りに過ぎていく毎日で今日という現実もこれまでと何も変わらないまま明日に向かう筈だった。今わたしの目の前に居るのは、わたしという人生を過ごしてきた中で最も多くの時を共有したであろう男の姿。そう、これもいつも通りの一部だった。だけど現れたのは一つの異変。聞こえたリアルな銃声の音は初めて体験するイレギュラー。それまでには起こらなかった出来事がわたしを、わたし達を襲った。気が付けば下腹部に自分の右手が添えられていた。そこからぬとりと何かが実際に手に触れた感触。その生々しい感触すらどこか人事の様に思えた。気持ちの悪い何かの正体を確かめようと下腹部をぎゅっと掴めば尋常じゃない熱さがその手の平から伝染したように身体中に広がっていく。おかしい。おかしいおかしいおかしい。熱いよ。なんで。熱い熱い。こんなの、わたし、知らない。不可解な熱を理解しようと掴んでいた手の平をゆっくりと開いて眼前まで持って来れば、視界いっぱいに見えたのは淀んだ赤。日本人らしい肌色はそこにはなく、穢らしい、それでいてどこか神聖な紅色が見える。あまり見慣れないその色を見てやっと覚醒した気がした


「な、んで」


なんでなんでなんで。
頭の中に埋め尽くされた疑問を示す言葉は一体何処から来るのだろうか。自身が撃たれたという事実に気づくのが遅すぎた。その理由を問うているのだろうか。それとも何故自分が銃弾を体内に入れ込まれたのか、はたまた彼がわたしを裏切った理由についてからなのか。自分自身何から来る疑問かも分からないのに、理不尽に思考を埋め尽くす言の葉。眉間に寄る皺が撃たれた痛みからか解せない苛立ちからかもわからない。もしかしたら手の平が赤いのではなくてわたしの両眼が赤く塗りつぶされていて世界が赤く見えるのかもしれない。だけどそうじゃないのかもしれない。結局、すべてわたしには解らないのだ


「悪い、」


銃口をわたしに向けたままそう呟く彼のことだってわたしにはわからない。解せない。いや、理解しようとしていないだけかもしれない。今だって自分が撃たれたことを何処か人事のように感じているのだから。きっとわたしは何に対しても鈍すぎたのだ。だからこんなにあからさまなバッドエンドを迎えてしまった。わからない世界の中でそれだけは確かな事実な気がした


「も、う…戻れ、な、いの」

「…ああ」

「…そ、」


唇から漏れるそれは荒い息にかき消されて言語としての能力をギリギリ果たしているといえただろう。だけどもう無理。赤から黒に姿を変えた世界と同時に身体の感覚が失われた。アア、これは意識を手放す前兆か。それとも命を亡くす前に起こる事務的な感覚なのだろうか。どちらにせよわたしの瞳に彼が映ることはもう二度とないだろう。逆もまた然りであろうが。彼がわたしを撃った理由も裏切った訳も最後まで解らずじまいなのが悔しいけれど、抗う力はわたしには備わってない。それにもしかしたら先に裏切ったのはわたしかもしれない。ならばこれはきっと自業自得だ。わたしに相応の罰を彼が与えてくれたのかもしれない。そう思うと少し楽になれた気がした。だから、きっと、これは仕方のないことなんだろう



さようなら、
次はどうか幸せになれますように

頭の中に浮かんだ文字の羅列を最後にわたしはもう帰らなかった









バッドエンドに恋した兎


リトライは来世までお預けなの





20100611




ぐだぐだすぎで病みすぎですね、わかります。小話ともいえない病み話




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