わたしはいま、四泊五日で女友だちと旅行に来ています。
昨日の夜、恋人から電話がありました。わたしは友だちに断ってホテルを抜け出して、外をふらふら歩きながら電話をした。
恋人は、道でばったり昔の彼女に会って、話が盛り上がってそのまま飲みに行ったんだそうです。そこまで話して、恋人は、その先を話すのをためらった。
わたしは胸がばくばくして、指先が冷えた。昔の彼女と飲みに行って、やっぱり彼女といたほうが楽しいと思ったんじゃないだろうか、別れを告げられるんだろうか、そういう悪い想像ばかりが頭を支配した。

わたしはクラクラしながら、その先も話すように恋人に頼んだ。恋人は、彼女ができたことをその子に話したんだそうです。そしたらその子が泣いてしまって、どうしてそんなことを話したんだろうってすごく後悔したって。
わたしもその子とは知り合いで、だから胸の奥に鉛が沈んだ気分だった。わたしたちはたまらなく幸福だけど、そのことで誰かを傷つけてるってことを、久しぶりに思い知った。

それから、さっき頭を満たした想像について考えました。恋人と付き合ってから、嫉妬や不安にとらわれてばかりの自分のことについて。わたしはいままで誰かと付き合っても、嫉妬したり捨てられることを恐れたりしたことはなかった。病んでるなあって、自分でも思った。
わたしはいつかそういう風に恋人に捨てられるんじゃないかと恐れている。わたしはそうされても文句が言えないくらい、ひどいことを昔にしたから。
たぶん、恋人もそういう風に考えている。前に、「あなたに好きな人ができたらちゃんと別れてあげる、でもその前に思いっきりひどいことをしておれのことを嫌いになってもらうね」って言われたことがある。
そう話した恋人のことを思うと、わたしはやっぱり鉛を飲んだ気持ちになる。

恋人を好きになることが楽しいことばかりじゃなくて、つらくて苦しくてたまらない気持ちになるだろうということは、ずっと前から分かっていた。
だから好きになんてなりたくないと思っていた。だけど、誰を傷つけても、誰に後ろ指をさされても、わたしは恋人と一緒にいたかった。こんな暗くてドロドロした気持ちが恋じゃないなら、なにが恋だか分からないくらいだった。

そのことを、久しぶりに思い出した。だめだな、やっぱり苦しくても恋人が好きだな。そのことがいいことなのか悪いことなのかは分からないけど、だから一緒にいるしかない。


ふと思うこと。