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SSメモ


【07-GHOST】
クロユリ×ハルセ






夢は正夢に…


主の異変に気づいたのは、物音がしてからだった。
時刻は夜更け。
ハルセはふと机上を走らせていた手を止めた。

自分の主は軍人ではあるが、まだ子供だ。
階級は中佐であり、また戦場にたつこともある。
しかし、完全に成長しきれていない身体は周りの軍人より多少体力があるものの、疲れやすく幼さを残している。
そのため、夜更かしすることもない。
こんな夜中に起きている筈はないのだが。

ハルセは手にしていた書類を置いて立ち上がった。
足早に奥の部屋へ向かい、扉を静かに開けた。
部屋は薄暗く、幕は下ろしわすれたのか窓からはチカチカと光が入っている。

雷か。

風が窓を揺らし、雨が強く叩いている。
雨が降っていることに気づいていなかった。

物音がしたのは雨の音か。

ベッドに目を向けると、主は体を小さく丸めて眠っている。
ハルセは安心してため息をついた。

眠る主に近づき、そっと頭を撫でた。
主がビクリと体を振るわせる。
聞き取れないほど小さな声で何かを口走り、唸っていた。
悪い夢でも見ているのだろうか、魘されていた。

「クロユリ様」

名前を呼ばれた主は小さく悲鳴を上げた。
悪夢に震える主はただの幼い子供のようだ。
ハルセは見るに耐えなくなり、寝ている子を抱き上げようと手を伸ばすと、腕にしがみついてきた。

「ハルセっ」

「クロユリ様」

無意識だったのか、呼ばれた主は驚いたように顔をあげた。

「すみません。起こしてしまいましたか」

主は起き上がり首だけを横に振ると、瞳を覗き込み両手を差し出してきた。
ハルセは柔らかく笑って抱き上げる。

「僕…変な夢を見た」

「はい」

「現実じゃないって分かってたのに、怖かった」

震える背中を空いた手で撫でると、上目遣いで目を覗いてきた。
濡れた瞳は微かに揺れ、見つめるその力強さは目の前の存在を確認しているようだった。
不安げな主に微笑んで見せると、首元に抱きついてきた。

「ハルセ、側にいて。離れるな…命令だから」

「はい」

首にしがみつく主を抱きしめると、押し殺した嗚咽が聞こえてきた。
幼子をあやすように主の背中をたたく。

離れはしない。
そのために死ぬことになったとしても。
主の為なら命さえ…

「ずっと、クロユリ様のお側に…」

「絶対だよ」

自分のような部下のために不安を抱き、泣く小さな主を愛しく感じた。

離れはしない。

かならず、あなたの側に…





手加減なしで

三國無双5
【夏侯惇×女武将】


叩き付けられるような背中に強い衝撃が走った。
その衝撃で急激に肺が圧迫され、息が詰まる。

空気を肺に送り込むために息を吸うと、酷く咳き込んだ。
何が起こったのか解らず目を開けると、その状況に理解するまで時間はかからなかった。

驚きで目を見開く。
上に立っている男がその手に持つ砕厳を振り落とした。

避けなければ。
叩きつけられた為か身体が強張り、男が自分を跨いで立っているから避けられない。

女は最後の抵抗で目は閉じなかった。
男が振り落とした砕厳は女の耳からわずかな距離で地面を深く抉った。

土が飛び散り、砂ぼこりがたつ。
その光景を何も言えず男を見た。

砕厳が地面から離れる。
男は固まっている女に手を差し出した。
女が我にかえって男を見るとその相手は眉を潜めている。

「大丈夫か?」

「あ、ああ」

返事だけ返すと、男の手を借りずに立ち上がった。
少し足元がふらついたが、しっかりとその場にとどまった。
大きく空気を吸うと胸が締め付けられるように、叩きつけられた背中がずきずきと痛んだ。

「本当に大丈夫か?」

女が痛みに顔をしかめていると、それに気付いた男が顔を覗き込んできた。

「何でもない」

女が顔をそらす。
男は怪訝そうに女を見た。

目の前の男を見ると、先ほどのことを思いだした。
予想以上に男との格が違い、その力の差と無力さに身体が振るえるようだった。

「…まだ私の武は元譲に及ばぬか」

「当たり前だ」

さらりと返した夏侯惇をキッと睨み付けると、「お前は隙があり過ぎだ」と返されてしまった。

思い返せば、確かに自分は隙だらけだった。

自から夏侯惇に手合わせを願い、初めは順調にやっているつもりだった。
夏侯惇は大振りに攻撃を仕掛けてくる。
その大振りの隙をついて間合いに入ったはずだったが、呆気なく蹴飛ばされてしまった…

女が地面に視線を落とす。

「男のお前には敵わぬ…女のこの身では片手でその砕厳も奮うことはできない」

女は強く拳を握った。
無力さに情けなく思い、悔しさに歯を噛み締めていると、頭上からため息がした。

「言い訳するな」

その言葉に顔を上げると隻眼とぶつかった。

「女だろうがその特性を生かせばいいだろう」

夏侯惇は女に歩み寄った。

「お前は将の中でも速さを誇る。ただ隙が多いだけだ」

「それば誉めてるのか、貶しているのか」

「両方だ」

女が苦笑すると夏侯惇はその手を掴んだ。
女が動揺したように見上げると、夏侯惇は女の握り締めている手を無理矢理開かせた。
掌には爪の跡があり、血がにじみ出ている。

「武器が握れなくなるぞ」
夏侯惇が顔をしかめ、自分の着ていた服の袖を裂き、女の掌に巻き付けた。

「すまない…」

女は小さく礼を言った。

「後で蓬でも貼っておけ」

「ああ」

手を離すと砕厳を担ぎ直して踵を返した。
予想もしなかった夏侯惇の行動に、手当てを受けた手を見つめ呆けていた女は思い出したように顔を上げた。

「元譲っ」

「なんだ」

夏侯惇は名を呼ばれ、振り返った。

「次は負けんぞ」

開き直り挑戦的に言う女に夏侯惇は面白そうに笑った。

時を越えて

ガンパレード・マーチ
【青の厚子×舞】


以前書いたものの再編集w




















「君に世界をあげよう」



そう言った彼は優しい笑みを私に向けた。

今までの寂しさが身に押し寄せ、嬉しくて涙が出た。ただ、泣きたかった。




舞は当然といった流れで、厚志と同じ部屋で共に生活をすることになった。

初めは戸惑いがあったが、今ではなれてきていた。
しかし、価値観の違いからぶつかることもある。大抵は厚志が「舞が言うなら」と折れて丸くおさまっている。
関係は上手くいっているはずなのだが、舞にとってそれは不安の原因でしかなかった。


「厚志は私に甘すぎる」
「俺は舞のためなら何でもする」


厚志はそんな舞の気持ちを知ってか知らずか、笑顔で答えた。厚志の返事にますます不満が募る。
次の瞬間には抱き締められ、「好きだよ」の言葉に言いくるめられてしまう。
逃れようと胸を押し退けても、馬鹿者と罵っても厚志は笑うばかりで抵抗しても無駄。とにかく、不安だった。
舞には厚志の言う「舞のため」=無力と聞こえるのだ。

それに、厚志の言う「舞のため」や舞を慕う言葉には他人事のように感じられる。
確かに、舞へ向ける気持ちは全て嘘偽りのない純な気持ちなのだろう。
しかし、彼の知る舞は過去の「舞」ではない。
舞も同様、目の前にいる厚志は舞が知っている「あっちゃん」ではないのだ。
それが舞にとって一番不安に思うことだった。


「朝食が出来たよ」


厚志が朝食をのせたトレイを持ってきた。甘い紅茶のにおいがする。
舞は窓の外から視線を厚志に向けた。
厚志はピンクのエプロンを脱いでいるところだった。
それをなおして舞の向かい側の椅子に座る。
笑顔でサンドイッチを差し出す厚志は「あっちゃん」と何ら変わらない。
ただ、見た目は大人で髪が青に染まっているが。
舞は、黙ってサンドイッチを受け取った。


「舞、眉間にシワよってる」


注意を受け、舞の眉間にシワがふえる。
厚志はサンドイッチは飽きた?と聞いてきた。
舞は首を横にふった。


「いただく」
「どうぞ」


厚志がニコニコと顔を覗き込んでくる。実に食べづらい。
咳払いすると厚志はごめんと自分もサンドイッチを食べ始めた。
厚志はずっと笑みを絶さない。




舞の視線に気づいた厚志と目が合った。ドキリと心臓が跳ねる。
舞はあわてて視線をそらした。
目の前の厚志は舞の知らない「厚志」だ。


「舞」


舞は名を呼ばれあたふたした。
視線を合わすまいとうつ向く。
顔は紅くなっているだろう。
頬が熱く感じる。
不意に頬を手に包まれた。
おどおどと視線を向けると厚志と目があった。
机に身を乗り出した厚志が舞の頬を手に包み込み、見つめあっている状態。
しまったと思った時には遅く、身動きがとれなくなっていた。
動けない訳ではないのだが。
蛇に睨まれた蛙とはこのことか。
厚志の眼差しに舞は動けないでいた。
厚志が動く。
顔が近づき唇に触れたところで我にかえった。


「っ!…んんんんん!なっ、ななな何をする!」

顔から火が出るほど熱い。
舞はわなわな震え、恥ずかしさに顔が紅くなっていた。
腕を突っ張り、抵抗する。


「相変わらず初々しい反応だな。」


更に顔を真っ赤にする舞を自分の方に引き寄せ無理矢理抱きしめる。


「舞、可愛い」
「た、たわけ!」


抱きしめてくる厚志に舞はじたばたと暴れた。
厚志は舞の耳元に口をよせ、囁く。


「好きだよ」


舞の身体が跳ねた。
急に大人しくなった舞に厚志は笑い声をあげる。


「本当、舞は可愛い」


厚志が愛しそうに舞を抱く腕に力をこめた。
舞は、嬉しいとそう思う反面寂しく思った。
今、彼の目に写っているのは自分だろう。
だが、彼の想っているのは過去の「舞」だ。
舞自身も「あっちゃん」にもう一度会うために全てを捨て、父なる人物に身を委ねここまできた。
ずっと過去の「あっちゃん」を想ってきた。
今でも想っている。
けれど・・・


「舞?」


舞の表情に気づいて厚志が腕を解いた。
舞はうつ向いている。
心配そうにする厚志が過去の「あっちゃん」と重ならない訳じゃない。
けれど、舞は目の前の厚志を前より強い気持ちで見ていた。
もう二度と失いたくないと。





厚志がどうしたのと聞いても舞は黙ったまま、下を向いていた。「厚志」と呼んだ声は微かながら震えている。


「そなたはどちらを見ている。私か?私の知らぬ「舞」か?」


舞の言葉に厚志は目を丸くした。
舞に不安があることに気づいていた厚志はその理由が分かってか安心したような表情をした。


「俺は舞の全てが好きだ」

「だから、舞とはどちらをっ」


不安そうに見上げる舞。
舞の言葉を遮り、厚志が舞を抱きしめる。


「舞は君だよ。目の前にいる。それが全てだ…好きだ、舞」


厚志の言葉に固くしていた力を抜いた。
過去の「舞」ではなく、目の前の自分を好きだと言っている。


「私で良いのか?」

「君じゃないと、嫌だ」

「私も…そ、そなたが良い」


舞の言い方に厚志が笑った。
重荷が取れた舞の表情が軽くなった。
舞はじめて微笑んだ。
不安が取れたのだ。
だが、と舞は顔をしかめる。

「私に甘いのは許さん」

「仕方ないよ、好きなんだから」

「だからといってな、」

「舞に世界をあげる、そう言ったからね。舞の望みは俺の望み」


微笑む厚志に舞は呆れた。
もう良いと舞が折れる。
厚志が言い出したらきりがない。
ほんの少しの時間だが、舞は学んでいた。
舞に関することで厚志が折れることはない。


「舞の夢は何?」


厚志の質問に舞は顔を紅くした。
過去の恥ずかしい夢を思い出した。
あの頃の自分は未熟で小さかった。
自分の夢に「あっちゃん」は笑ったが、厚志は何と答えるだろうか。


「…そなたは笑うだろう」

「笑わない。君の夢は俺の夢だから」


厚志が真剣な表情を向ける。
その目を見ると離せなくなった。卑怯だ、と思う。


「花嫁だ」


短く答えると目を反らした。
小さく「厚志の」と付け加えると厚志が笑った。


「わ、笑わないと言ったであろう!」

「いや、あまりにも舞が可愛いくて」


顔を真っ赤にして怒る舞。
そんな舞を厚志は抱きしめて言った。


「言っただろ、舞の夢は俺の夢だと。俺も同じ夢を願ってた………顔を上げて」


舞が厚志を見上げた。
頬に手を添えられ厚志の顔が降りてくる。


「君の夢を叶えよう。俺の花嫁」


舞は目を閉じた。

重なって、舞は知った。



『ずっと一緒にいたかった』



自分が知らぬ気持ち。
会いたいとばかり願っていた舞は、知らぬ「舞」の気持ちを知り、心が震えた。



『叶った』



自分か「舞」か、そう思った瞬間、涙が溢れた。



end








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使命と憂い

三國無双【呂布×貂蝉】
















青くすみわたる空に雪解け水で出来た川のせせらぎと小鳥の囀ずり

…春だ。

そうしみじみと季節を感じたのは何年ぶりだろうか。もう何十年ぶりのように思えた。

花の咲き誇る野道を馬を引いて歩いていた。
野の道をひらひらと舞う蝶に脆く淡い儚さを感じた。

今は戦乱の世。
戦の絶えないこの時代では、こうして外を歩くことは簡単に出来るものではない。
いつ何が起こるか分からない。
人拐いに出会うのも珍しくないという。

絶世の美女と言われる者が外を出歩けば尚更危険なのだ。
だが、心配ない。
自分には最強の護衛が着いているのだから。

「奉先様」

声をかけると先頭を歩いていた男が振り返った。
何だ、と問う声には戦場のような威厳と覇気がない。
男と声、目の前の鎧と花のように不釣り合いだと思った。
無理強いしてこのような場所に連れてきてもらったのだが。

「花が」

「あ、ああ」

男は戸惑ったように一歩下がった。
男の足元に折れてしまった白い花が一輪。
男に近づき野に膝を着くと、倒れてしまった白い花を摘んだ。
野道を歩いていたのだから花を踏んでしまうのは仕方ないことだ。

「すまない…」

普段は絶対に使わない似合わない男の言葉に、「いえ」とだけ返し、立ち上がった。
男の腕を引くと大きな体が少し前屈みになる。
摘んだ花を男の耳と兜の間にさし、腕を離すと花を飾られた男は、困ったように手を頭に上げた。
取ろうか取るまいか、迷った手が宙を泳いでいる。

「俺には似合わん」

少し目線をずらして言う男に笑ってしまった。
花を持つ姿でさえ可笑しい。
それを知ってか知らずか、自分がされたように男は花をさした。
行動に驚いて顔をあげると、まだ目線をずらしていた。

「似合っている」

それだけ言うとこちらを見ようとせず、頬を掻いた。
似合わず頬が赤い。
可笑しさに吹き出してしまいそうなのをこらえて男の手を取った。

「似合わないなんて嘘です」

傷だらけの固いゴツゴツした手を労るように擦った。
これは重い武器を奮い、血に染まった手だ。
この手が、自分の、父の願いを叶える。

「似合っていますわ」

褒めたつもりではなかった。
皮肉を含んだ言葉だったはずなのに、男は顔をこちらに向け、短くただ一言だけ言った。

「そうか」

男にもこんな表情があったのか。
優しい表情をしている。
可笑しかった気持ちが、戸惑いへと変わった。

汚れているのは彼の手か
それとも…

男の顔を見れなくなった貂蝉は静かに顔を伏せた。






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風邪と皮肉と


無双w司馬ドリww

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