「おい、…ガキの癖にこんなの吸ってんじゃねーよ」
ヒョイっと僕の手から煙草を奪う先生。
「いいじゃん、俺の勝手でしょ?」
なんて、悪ぶってそっぽを向く。
先生はやれやれ、なんていいながら俺の隣に腰を下ろす。
ねぇ、先生。
貴方が肺に重い病を患っていること。
そして、もう長くはないこと。
俺が知らないと思ってました?
「やめろよ、煙草は…」
「いや」
本当は、貴方の苦しみを代わりに受けたい。
だけど、それが無理なら。
貴方と同じ苦しみが欲しい。
苦しむ為に、吸う煙草。
息苦しさは、キスの瞬間に似ていて
胸の苦しみは快楽。
快楽という名の、中毒。
処方箋は
「キスが、まずくなるだろ…?」
貴方の甘美なキス。
苦い好きでもない煙草を今日も吸う。
煙草じゃなく先生への依存。
依存症。
医者はそんな俺に言った。
お大事に≠ニ。