夢でジェニーに会った
ジェニーは生物的にはわんこだけど、わたしのいちばんの家族だし、数年前に老衰で亡くなった
そのときのわたしはジェニーが永遠のいきものだとおもっていたけれど、ほんとうにいきものの命のとおり、老衰で亡くなった
わたしはニンゲンで夢をみることができてよかった
ジェニーはまっすぐ、ゆっくりわたしのほうに歩いてきて、わたしが「だいじょうぶ?」ときいても答えず(あたりまえなんだけどw)、
近くまでくるまえに目覚めてしまった
あのやわらかくてあたたかい毛並みにもういちどふれたかったなー
どうすれば良かったのか、答えなんてないのかもしれない。それでも、知りたいのだ。いつか救えるものがあるかもしれないから。
島本理生
「匿名者のためのスピカ」
アナタとの暮らしには二人いっしょにゆっくりゆっくり死んでいくような感じが、いつもつきまとっていましたから。死んでいく感じが深まればそれだけ、二人のまわりで楽しさがはじけ、世界はいきいきと息づくようでした。
沼田まほかる
「ユリゴコロ」
夏は日中が長い。夕方がちっとも迎えにこないから、ぼくらはいつまでだってあそんでいられるし、そのぶんお腹もすいてしまう。
椰月美智子
「しずかな日々」
だれかと一緒にいることが、こんなにたのしいと知ってしまったのに、ひとりぼっちに戻るのは大変なことなんじゃないだろうか。きっとそのときは、とてもつらく思うはずだ。そう考えると、ぼくは未来の自分のために、今の自分を戒めるのだ。
でも結局、今の自分というのは、これまでの過去を全部ひっくるめた結果なのだ。
三丁目の空き地には、今では背の高いマンションが建っているけれど、目をつぶれば砂利の混じった地面の感触や、土管の手触りを思い出せる。ぼくは縁側に座って、水まきあとの土の匂いを胸いっぱいに吸いこむ。そうすると、ぼくはいつだってあの頃に戻れるし、今の頼りない自分ですら誇りに思えてくるのだ。
人生は劇的ではない。ぼくはこれからも生きていく。