二人の少年は傘をさしながら歩いていた。

その帰り道は無言でユーリはこのあと何を言われるかわかっていた。

無言だった二人の間でフレンが口を開いた。

「なんで、ケンカなんてしていたんだ」

明らかにこれは怒っている。

「なんでって、理由なんかあるかよ。ただむかついたからだってーの」

ユーリはそう言ってフレンから顔をそらした。

しかしフレンはそうさせてはくれなかった。

自分の傘を放り投げ両手を使ってユーリの顔を無理やりこっちに向かせる。

顔の生傷に触ったのかユーリは痛そうに顔をしかめたがフレンは引き下がることなく問いつづける。

「ユーリが理由もなく、相手に手を上げるなんて僕には考えられない」

それを聞いたユーリはずっとうつむいたままだった。

さっきまで怒っていたであろうフレンにもう怒気の色はない。

心配そうに澄んだ青色の瞳がユーリの方をみてくる。

それに耐えられずユーリはフレンを置いて1人走り出してしまった。

「ユーリ!待てっ!!ユーリ!!」
虚しくも彼がふりかえることはなかった。