埴輪じゃない、審神者になって早数週間。
最初は右も左も分からずにいたが、今はなんとか刀装ぐらいは出来るようになった。
そして、今私の目の前に立ちはだかる大きな問題は刀達とのスキンシップについてである。
塔矢ちゃんに聞こうと連絡を取れば「え?相手誰?俺のお手入れよりそっち?」「やはり俺など、薄汚れてても構わないのか…所詮贋作は…。」などと大変不穏な空気だったので聞けずじまいであり。
櫻子ちゃんに聞けば「ちょ、じいじ!それ丸いの刀装だから!饅頭じゃないから!お昼はさっき食べたでしょ!?」と何やら介護に忙しそうだったのでこれまた断念。
藁にもすがる思いでかけた八時ちゃんは「普通でいーんじゃないかなぁ。まぁ性格は色々だけど、悪い人なんかいないしねー。ううん、お茶とか?」と大変リア充なお返事を頂いた。
お茶に、誘う。
なんだ、軟派か!!!
「てなわけで、お茶でも如何ですか!!」
当たって重症、やってみた。
「あ?出陣じゃねーのかよ?んだよー。」
何故私は初っ端からこうなのだろう。
いやだって意気込んで障子を開けたら貴方がいたからです、タヌキさん。
「つーかよ、刀と茶ぁしばいて何が楽しいんだよ。観賞用じゃねぇぞ、俺は。」
「いや、でも、こうお話ししたいなぁと。」
「武器と話す事なんかねぇだろ。」
にべもねぇ。つーか怖ぇ。
太郎さんやらのあの冷たい眼差しも結構くるが別ベクトルで怖い。
彼等の過去やら心情やらは人間とはまた一線違うそれで、所詮私はぽっとでの主で、それでも、仲良くなりたいというのはダメなのだろうか。
「…まぁ、腹ごなしって事にしてやるよ。主。」
「へ?」
「茶っていうなら菓子ぐらいあんだろ。」
ずい、と覗き込まれれば目の前には無骨な顔が随分と意地悪気に笑っていて。
「三色団子なら、あります。」
「食ったら出陣だからな!」
武器はこんな風に笑うのだろうか、だなんて言えやしないけれど。
「あ、桜舞ってる。そいやこれってなんで舞うんですかね?」
「…うるせー、いいから茶ぁいれろ。」