昨日も今日もバイトで残業してくったくたです。多分明日も残業!
いい職場なので残業自体に苦痛はないんですが、とにかく肩こり痛が酷くてものすごくしんどいです…。そんな状態で書くにしては長すぎるものになってしまいました、本日の短文。
Yahoo検索で「スザルル 小説 リフレイン」で検索してココに辿り着いてこられた方が!
ごめんなさいごめんなさい、きっと貴女の求めるものはココにはなかった(笑)
そんなお嬢様へのお詫びと笑わせて戴いたささやかなお礼に、今日は「リフレイン」な「スザルル」でいきますよ!
最近日記の更新頻度が上がったせいか色んな検索ワードで漂着される方がいて、短文用のCP決めに毎日すごく迷っています。どれも似たような駄文なのに変わりはないのですが!
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彼には、何もなかった。
色に例えるならばそれは白ではなく、漆黒。底がなく果ての見えない、そこに何物も存在し続けることのできないような、絶対的な闇。
彼が部屋へ訪れて、もうどれだけの時が経過しただろうか。深い闇を湛えた表情で、そこに何色の感情を乗せるでもなく、何を言うでもなく、また何を求めるでも、諦めるでもない表情で、こちらをただただ見つめていた。
澄んだ翡翠の真っ直ぐな視線に晒されて、適温に保たれている筈の貴族以上の罪人専用に作られた特別誂えの拘置室の中央で、言いようのない寒気を覚えた。手足と左目の拘束がなされただけで、"言葉"という己の最大の武器はまだ自由である。それなのに、得意の話術は何一つ形にならず、それどころか呼吸さえ重苦しい。
ただ、スザクと二人きりでいる。それだけで、こんなにも。
「――ねえ、ルルーシュ」
掠れた声が小さく、けれど確かに空気を震わせる。
その振動が耳朶を打ち、鼓膜を震わせ、情報として脳内で処理がなされる、前に。
(――……ッ!!)
頭で考えるより先に、本能が警鐘を打ち鳴らす。
ダメだ。ヤバい。今すぐに此処から、
(逃げ、なきゃ……スザクから!!!)
ガチャガチャと揺するがびくともしない拘束椅子の上、それでも躍起になって身を捩った。髪は振り乱れ食い込んだ鎖が肌を引っ掻いたが形振りなど構っていられない。
「ねえルルーシュ」
「く、来るな…ッ!」
「ルルーシュ」
「止まれスザク!と、止まれ…っ、」
「……ねえ、煩いよ」
伸ばされた手が仰け反り晒け出された喉をぐい、と掴んだ。そのまま容赦なく力を込められて、苦しくて、意識が霞んでいって――恐怖が、強くなる。死に対する恐怖ではない。そんなものはとっくに、初めて人を殺めたあの時から、覚悟を決めていた。いつだって討たれる覚悟で撃ってきた。この男に、スザクに討たれる覚悟も、彼に向けて撃つ覚悟もあった。
――そうして実際に引かれた引き金は、僅かな心の甘さが拭いきれない結果となったけれど。
そう、この現状は、自らの甘さが招いたのだと誰よりも自分がよく理解している。
けれど――
「……かはっ…、んぅ…!」
喘ぎ開いた口に突然、口付けられた。そこから温く薄まった酸素を無理やり送り込まれる。苦しくて固く閉じていた瞳を驚きで見張らせると、鼻先の触れ合う距離で視界いっぱいにスザクの翡翠色の瞳が映り込んだ。
離れてゆく翡翠に映った男の、なんて無様なことだろうか。体を折って咳き込み、うまく呼吸を整えられない口元からはだらしなく涎が零れている。
それでも視線だけは気圧されぬよう強く見上げて、そして――拘束さえなければ手の届く、そんな近い距離になって漸く、翡翠を塗り潰す闇色の正体を知る。
何もないと感じた、否、あるたった一つの純粋で強すぎる感情のせいで他に何もないと感じさせられた、その闇の正体。
あまりにも凶暴で、あまりに純粋な、本能が警鐘を鳴らすほどの、その闇の色は。
「ルルーシュ」
ああ、スザクはこんな笑みを浮かべる男ではなかった。
視界の隅で、空気を抜くためシリンダーを押された注射器からポタリと液体が落下した。
それはまるで、彼の涙のようで、
「あの頃の、僕らが一番幸せだった時間に戻ろう?」
俺にはもう、腕の僅かな痛みと彼の闇色の愛を受け入れる以外、もう何もできなかった。