バレンタインデーが終わり
なんだかんだでホワイトデーですね。

バレンタインデーには、私にも
若き高校生の頃の思い出がありまして(笑)
しょーもない思い出かもしれませんが
毎年思い出してしまうのですよ。




何十年も前の話になりますが
当時、飲食店のバイト先にパティシエ志望の
可愛らしい男の子が一人いました

「さんちゃん」についての話である

性別は違うが、同い年で、当時高校二年生

バイトで上がりが一緒の時は
時々送ってくれる男の子

優しい、可愛い、ふわっとして私の好きな感じ
見た目によらず意外と負けず嫌い

私は彼に、そんな印象を抱いていた





さんちゃんと仲良くなったきっかけは
バレンタインデーに
バイト先のお菓子コンテストに
一緒に出場した時だった

パティシエ志望の
さんちゃんの作るお菓子の方が
素人の私からすると
めちゃくちゃ上手で、センスもあって
こいつ絶対、最優秀賞(一位)だと思っていた




駄菓子菓子、いや、だがしかし
ここでの敢えての変換ミスは、察してくれ
やりたかったんだ(笑)



私が、優秀賞(二位)で
さんちゃんが、特別賞(圏外?)だった

私も、一応 最優秀賞(一位)を狙っていて

さんちゃんは、私よりも最優秀賞を狙いに
もっと強い気持ちがあった

話を聞くところによれば
さんちゃんの家系は
お母さんがケーキ屋さんで
お父さんが和菓子職人
生粋のパティシエ?の血を引いていた

コンテスト終了後
さんちゃんと私は、家が近いという事もあり
初めて一緒に帰ることになった

帰りの電車で
さんちゃんと私は、大泣きしていた

さんちゃん
「審査員のくそったれー
俺の作るお菓子が一番いいに決まってんだろー
俺を誰だと思ってやがるー」


「来年、また一緒に出場して
その時は最優秀賞狙おうよ」

さんちゃん
「猫柳は、優秀賞とってんだから
そういうことが言えるんだ!!
俺のには、順位すらつけてくれないんだ
こんなクソ審査員の所に出すくらいなら
出場しない方がマシだ
あいつらの目が腐ってやがる」


「、、、特別賞でも十分じゃない」

さんちゃん
「毎回とらなきゃ気が済まないんだよ
、、、俺には、これしかないんだよ」

威勢が良いかと思えば
どんどん弱々しくなる声は
まるで死にかけの猫のようだった

そのコンテストを境に、私は
普段あまり喋らないさんちゃんとの距離が
すごく縮まった気がした






高校三年生、バレンタインデー前日


さんちゃん
「今日も一緒に帰る?」


「いいよー」


私&さんちゃん
「お疲れ様ですー!お先ですー!」





さんちゃん
「、、、後ろ乗れ」


さんちゃんといつも一緒に上がりの時は
大体、自転車の後ろに乗せてくれる

さんちゃんが何か話したい時は
今日は疲れたから、歩いて帰ろうと提案される



「私達、今 青春してるよー!!!」

坂道を下る時に、私はいつもその言葉を言う

だってさんちゃんは
青春とは皆無に見えていたから




さんちゃんは、本当に真面目で
いつも私の家の前に着いたら
すぐに帰って行く



だけど、今日は少し違った



「到着!今日もお勤めご苦労様です!
良い睡眠を!」

さんちゃん
「、、、なあ」


「???」

さんちゃん
「猫柳、春さんと付き合ってる?」


「、、、付き合ってないよー」


付き合ってはないのだが
現状、二番目の女だったから


さんちゃん
「俺な、、、猫柳が春さんに
店まで車で送って来てもらうの知ってるんだ」


「、、、そっかあ」

さんちゃん
「猫柳には、そういうことやめて欲しい
真面目に恋愛して欲しいと思ってる」


「んー、私は至って
真面目なんだけどな(笑)」


ヘラヘラする私に対して
さんちゃんは、小さな箱を鞄から出した


さんちゃん
「ハッピーバレンタイン」


「??れ!!!ん!」


私は、酷く動揺した

その箱はドラマでよく見る、指輪の箱だったから



「さんちゃん、これって」

さんちゃん
「そうだよ」


「えーー!待って!なにこのドラマ的展開!
嬉しいんだけど、どうしよう
私、さんちゃんのこと好きだけど
好きなんだけど、、、友達としてであって」

さんちゃん
「俺も猫柳のこと、好きだよ
だからバレンタインくらいは幸せでいてね」



そう言い残すと、彼は
自転車で颯爽と帰って行ったのだ




「、、、まじかよ」


突然のドラマ的展開にドキドキしながら
家の中に入り、箱と対面、そして開けた

中には指輪ではなかったが
一粒のチョコレートが入っていた

もー、なにこの箱!!
パティシエドッキリやめてくれよ
心臓に悪いわ(笑)
などと心の中で叫びながら
どこのチョコレートかなあ?と
まじまじと手に取って見てみると
それは、さんちゃんの手作りだった

バレンタイン間近に逆チョコだなんて

一粒だけという
さんちゃんから貰ったチョコレートが
私は、とても嬉しくて
なかなか食べられずにいて
大事にしすぎてしまい
半年後に腐らせたのは言うまでもない。