日記ではお久しぶりです!今日はちょっと病院の方にふらふら行きながら小話をうってました!ちょっと此方にマイソロから派生した我が家のディセンダーに纏わる小話を投下します。長いです。やたら長いし続くみたいです。しかもこれちょい電波である引っ掛けも作ったり。あまりにもあれな文なのでこっそり投下します。追記からくそ長いシリアス小話はじまりー。
2012-8-15 20:07
私は願う。ただその剣は其処に在れと。
『あんたはいつもそうやって焦らすのな』
『無意識だったら質が悪い』
『だから俺様はあんたに──』
困惑の色の強い隻眼の彼の手が頬に触れられる瞬間に現へと意識は戻る。久方ぶりに開いた瞼が重たい。まるで体は意思とは沿わずただあの夢を見ていたいと駄々を捏ねているようだ。
「ゆ、め?」
そうぽつりと呟くと同時に目尻に浮かんだ涙が睫毛にじゃれる。塵を洗い流す為や、網膜の渇きを潤す為の生理現象ではない、涙。それは夢の彼か、自分か、それとも別のものに対してか。感情さえも曖昧なのだから解る事など皆無に等しい。
「でも、なぜだろう。……懐かしい」
兄弟達の力を引き継ぎ、真のディセンダーとして力が機能するようになり始めてから力と同時に受け継いだ彼らの記憶は時に濁流の如く自信の思考にぶつかり、時に泡のように擽る。そして刺激を与えられた思考は自身が知らず知らずに閉じ込めていた記憶を露にさせる。多重思考回路を備える自分はそれに順応する事は容易く、押し寄せる記憶の奔流は多大な書物を丁寧に本棚へとしまうように処理を施せば「自分」と「彼ら」の記憶を分別することで自分を保つことが出来る。ただ時折、どの本棚にしまえば良いのか解らない記憶はこうして頭を掻き乱す事があり、読み解こうと思うもなかなか難解。せめて自分の記憶か、兄弟の記憶か、それが解ればこの胸の痛みや込み上げる嗚咽は抑えられる筈だというのに。
「…ねえ、これは自分が悲しいのか、それとも兄弟が悲しいのかな」
多数の思考回路に問うても浮かぶのは憶測と疑問。混乱しか産まない開いた思考回路を切断して上体を起こし、まだ暗闇が差し掛からない午後の空を仰ぎ見る。風が髪を撫でるように揺らした。
「ヴァロ、ニカ…」
喉元から溢れた言葉は誰のものか。その言葉は、まるで呪文のように特別な意味が含まれている。そんな気がした。
『何だよそんな顔して』
『いつも強気なあんたがまるで迷子みたいに戸惑った顔してるじゃねえか』
『ああ、もう』
『来いよ、×××』
「そんな事言われても君が誰を呼んでるか解らないよ」
「メディア?」
「んにゃ、何でもにゃーよロイちゃん」
後ろから不思議そうに名前を呼ぶ彼に笑みを浮かべて振り返る。 あの後アンジュに捕まり、討伐クエストをこなすべく獣道しかない生い茂った森に同行者のロイドとクラトスと三人訪れた。バンエルティア号で感じた優しい風とは違い、木々が悲鳴を挙げるように荒々しい風は自分の長い前髪を乱し、近寄るなと森の声を届けているようだ。逆立った髪をかき上げながら先程から奇声を挙げるロイドと髪を靡かせながらも何事も無いと言わんばかりに涼しげ表情で黙々と歩くクラトス。見事に対照的な二人を揺らす風は変わらないのだが。
「けどさ、魔物ってのはいつまでも減らないよなあ。今回の討伐クエストだってここらへんを巣窟にしてる魔物が増え続けてるから倒してくれってやつだろ?キリがねえよな」
「魔物が増殖している事には人間も起因しているのだがな」
「え、クラトス」
「僕は魔物より何よりアンジュお姉ちゃんが怖いけどにゃー」
「…メディアはろくな事しかしないからだろ」
「あーロイちゃんひっどー!!」
「おい」
「「ん?」」
「魔物の気配が近付いている。じゃれ合いは其処までにしておけ」
カチャリと金の装飾を施された鞘から刀身を抜くクラトスが射抜くように見つめる先には人ならざる気配。横手のロイドがその気配に気付かなかった事が羞恥だったのか少し顔を赤らめながら、交差するように備えた二振りを抜刀し構える事により一気に張り詰めた空気に変わる。互いに背中を預けるように三竦みの陣形で周囲を見渡す。しかしそこに居る筈の相手は動く気配を感じない。此方の出方を待っているのだろうか。
「魔物のくせに慎重だねー」
「メディア、油断大敵だぞ?」
「………、」
「クラトス?」
「魔物にしてはどこか違和感を感じる」
「違和感?」
「いや、それよりもこれはまるで」
『×××』
「え…」
『×××、ごめんな』
「何…」
「メディア?」
『×××』
「聞こえない」
頭に小さく木霊するのは。
『×××、×××』
「聞こえないっ」
夢の、君………?
『×××××』
「聞こえないよっ
ヴァロニカ!!」
「メディア!!」
「!」
現に戻してくれたのは、あの時と変わらない君。
「あの、時?」
記憶が混ざる。完璧に整理された本棚は音もなく崩れる。知っていた。いつかは本棚は膨大な情報媒体の重さに耐えきれなくなると。理解していた。いつかはその崩れ落ちる本棚の中で君達を見つけなければいけないことを。
「知らなくちゃ…」
知りたがりが疼いた瞬間、僕はあの時のように彼の腕を振り払い、あの時と変わらないその道を走り出した。
『ごめんね、メディア』
end
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性 別 | 女性 |
誕生日 | 12月14日 |
地 域 | 兵庫県 |
職 業 | 教育・福祉 |