またまたマイソロのしかも平行パロのシリアス文投下です。実はこれ半年前に書いたのを引っ張ってきたからぎこちない仕上がりに(-_-;)なんでこちらに置いときます。
追記から読んでくださる方はどうぞ。あ、ご意見、感想はコメントにお願いしますm(__)m
さよなら、愛しき日常。さよなら、さよなら、サヨナラ。
今日も別れの挨拶を復唱してまた日常を繰り返す。不毛、だと理解しながらも止めないのは未練が足をすくうから。泥のように足を汚すそれは気持ち悪いくせに馴染めば然程気に止めることはない。いつか拭おうとは頭の片隅では思案しているのだが。
「宙ぶらりんだ」
冷めた声が自分の喉元から聞こえた。可愛らしいイントネーション。だがみすぼらしいイミテーション。目を閉じて、長く息を吸えど世界は変わることはない。それは理解している。だから変わるのは自分だと決心したのだ。
『決心はついたようだな』
振り向けばこんな糞ったれな僕を招いた張本人が笑っていた。愉悦とも言える、端整な造りの顔だからこそ様になる笑み。その顔を今すぐにでも踏み潰してやりたいと物騒な思いを抱えながらもその顔が悔しくも懐かしさを覚えるのだからどうしようもない。いや、どうしようもないのは僕、か。
「ああ。だからもう逃げない」
脳裏にちらついた太陽のように笑う青年。自分より自分を想ってくれた女性。自分を理解しようと剣を向ける矛盾した青年。自分を神様だと慕い恍惚と狂喜を向ける男性。そして、自分を愛しいと、救いたいと悲しげに笑う青年。…僕は彼等に胸を張ってこれが正しい、等と言えるのだろうか。否、この世界に正しいと言えるものがあるのだろうか。
「正しいの反対は正しいで」
「本当に正しい事を求める等、堂々巡りだ」
巡る巡る先、其処には正解などあると誰が確信して言えるか。
『未練が付き纏っているぞ』
「そう仕向けたのも君だろ、シャドウ」
『お前が好きなのだろう未練は』
「いらない」
小さくため息をつき、ゆっくりと視線を足元に向ければかつての自身の産みの親でもある青年だったそれがひゅうひゅうと僅かに呼吸をしていた。だが酸素を取り込もうにも彼の体には大きな十字が刻まれ、抉るように深い傷は体内の大事な器官にも達している。それでも生きようとする執着は強く、呼吸は途絶えることは、無い。
「るぃ…ちゃ………」
「……………」
「あ…い、あ…いして、…」
「……………」
「るいちゃ…っ!?」
「ばいばい、紅葉君」
「ああっ、るいちゃんっるいちゃんるいちゃんっああああ!」
「バカな子だね、君は」
こんな時でさえ、彼女を求めるのか大きな子供。足を掴む子供の力が呆気なく絶えた瞬間、僕はどんな顔をしていたか。息絶えた彼だったものでも、それは解らないだろう。
『お前の悲願は漸く叶うのだな』
「…………」
『喜ばないのか?』
「喜ぶ…なんて」
もう出来る筈が無いのに。
(崩れていくディセンダーだったという時間)
(朽ちた果ては世界樹という地盤)
さよなら、愛しき日常。さよなら、さよなら、サヨナラ。
明日は別れの挨拶を復唱せずに日常を繰り返す。 まだ今はそれが『非』日常であっても水のように染み渡って日常となるのだろう。其まではその拭いきれない違和感を抱いて何を思おうか。
(右目に咲いた花が視界を奪う。網膜を滑るように根はゆっくり這う)
(サヨナラを言う相手は一体誰が居たのか)
音にならない言葉は闇へと消えていった。
end
魔王→世界樹になるバットED。