生存確認
 モ゛氷(dcst)
 2020/8/29 01:38

目が覚めた時にはもうこの状態だった。固定されているのは、全身のうちたった三ヶ所。こんな拘束を解くのなんて容易な筈なのに、今はどうやっても解けない。

「くそっ…、氷月! 氷月…っ!」
「あぁん、モズ君っ! いや、見ないで…見ないで、くだ、さ…?」

背後から聞こえるモズ君の声はとても苦しそうで、一体どんな責め苦を与えられているか想像すら出来ない。私が強制されているこんな辱しめなど、きっとまだまだ軽いのだ。

所謂自転車に跨がって、震える足でひたすらにペダルを漕いだ。これが発電機にでもなっているのか、ペダルの動きに連動する様に、私のはらの中に収まっている棒状のものが振動する。その度止まる脚を叱責する様に、私からは見えない所にいるモズ君が呻く。何て悪趣味なことか。
ハンドル部分に貼り付けられた紙には、『10?走り切れたらゴール』と書いてある。1回漕ぐ毎に何m進むのかも解らないまま、明記されている様で全く見えない終りに向けて、私はペダルを漕ぐ事しか出来なかった。

ヴヴヴ、と如何にもな音を立て、私の中で暴れるもの。恐らく自転車のサドルから生えているだろうそれは、私が一等感じる所へ的確に当たる様に設置されている。振動すると解っていながら、自らの意思でペダルに固定された脚を動かさなければいけない。モズ君が見ている前で。この上ない羞恥と屈辱にまみれながらも、苦痛に喘ぐモズ君を救うべく、私は進むのだ。10?先へ。

「あっ? あぁっ? だめです、そこ…っ、あっ! だめぇ?」
「氷月! 氷月ーーーーーッ!!」

がしゃがしゃと、鎖の様なものが激しく音を立てる。

待っていて下さい、モズ君。
すぐに私が、君を助けてあげますからね。

c o m m e n t (0)



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