生存確認
 モズ氷(dcst)
 2021/2/17 03:16

地面の下を流れる水の中を、体を軋ませながら泳ぐ様な。そんな不自由な生き方だった。
暗く、冷たく、狭いところ。見上げたところで見えるのは土の壁だけで、空など見えない。
私は、空なんてものは知らずに生きて来られた。

「んーー、君が氷月ね。…男と組むのは初めて?」
「…ええ。君は、経験豊富そうですね」

差し出された手を握ることを躊躇する。
笑みの形に歪んだ瞳は、私を包む水などよりずっと、冷たく凍りついていた。


大地を隔てて分かたれた、空と水のふたつの世界。
交わる筈のなかった世界に住むふたつのいきものは、出逢ってしまった。


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