激務が歯がゆい。
仕事をしなければ生活できない。でも彼と一緒にいられないと生きていけない。
仕事に時間を食い潰されて彼との時間がなくなっていく。このままどうなるか、を考えると背筋が凍る。

人生はとても短いと思う。八十年そこそこしか生きられない。わたしはもうその四分の一以上を生きてしまった。あとどれくらい残されているかもわからない。
あと何年、何ヶ月、彼と一緒にいられる?

会いたいけど会えない。
「疲れてるんだろ」と冗談ぽく笑って、気遣って放っておいてくれるあっくんが憎い。
違う、彼は悪くない。
いままでのわたしなら間違いなくそれを望んでいた。疲れているときはどんな労りの言葉も響かなくて、ひたすら自分ひとりと向き合わせてほしい、放っておいてほしいと願うのがわたしだった。それがどんなに好意的な相手であっても、自分の触れられたくない場所を土足で荒らす相手は容赦なく睨みつけ、冷たく切り捨てる、わたしはそういう我儘で高慢な女だ。
あっくんはそれをよく知っている。

だけど皮肉なことに、それを理解してくれる唯一の彼だけが特別になってしまった。
彼ならどこに入ってくれても、いい。

わたしが自分とだけ向き合いたいとき、彼となら一人でいるよりも真摯に向き合えた。彼が心をほどいて、背中を押してくれる。

もっと容赦なくわたしの心に踏み込んできてほしい。
他の誰かにそれを望んだりなんかしない。あっくんだけが特別なのだ。

でも駄目だ。わたしは意気地なしだから。
キスしてその先を誘ったり、もう一瓶ワインを開けよっかと促すのとはわけが違う。
もっとこっちにきて、の一言を口に出すのがこわくてしかたがない。

会えないならせめて心の距離を、だなんて。なんて幼稚なんだろうか