どこからか鐘の鳴る音が聞こえる。りんごん、りんごん。不思議と懐かしい昔へ連れ去っていくんだ。ああ、僕、そういえば子供の頃、キュリー夫人の本を読んだな。漫画だったんだけれど。キュリー夫人が亡くなったシーンで沢山の十字架の上を、鐘の音が流れてて、その描写がなぜかいつまでも心に残って離れなかった。だからなんだ。
雨だからいけないのだろうか。宙ぶらりんでどこにも属することを許されていないような。僕なんて居なくても世界が廻るんじゃないかって考えたら終わりだ。その通りなんだから。



もう雨は止んだのに、なあ。しなきゃいけないことがあるのに。昨日から、駄目だ。理由はなんとなくわかっているけれど。
悔しいけれど、認めたくないけれど。僕はやっぱりきっと他の人より「感じすぎてしまう」人だ。否応無しに入り込んでしまう、自分の意思なんて関係なく、だ。気づいたらずっと底のほうで、実在しもしないそのひとの代わりに涙を流したりしてるんだ。ばか、だよね滑稽だよね。昨日からずっとそう。いや、生まれた時からきっとそう。
こんなに馬鹿らしいと思っていても、突き放すことなんてできなくて。だって今僕がこの手を離したら他に誰がその手をとってくれるっていうんだい。なんて。向こうは望んじゃいないかもしれないのに。お節介。僕はあのひとを助けてあげた、っていう優越感に浸りたいだけだろ。結局は、自分のためだろ。
でもどうかあなたにも。手をとってくれるひとが現れますよう。それは当然僕じゃなくていいから。



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電話、早くかからないかな。