俳優の綾野剛が、2019年に中国全土で公開を予定している『破陣子(はじんし)』(董天翼=ドン・ティエンイー監督)に主演し、中国映画デビューすることが、分かった。日中合作ではなく、完全な中国製作の映画に日本人俳優が主演するのは史上初だ。
日本映画界でも欠かせない存在となっている剛君が、海を渡り中国でも輝くこととなった。剛君はすでに訪中しており12/10にクランクインを控える。「日本人として中国の映画で主演を担えるのは、大変光栄です。映画の中で自分自身の愛情や思いを表現し、大勢の方々にこの映画を通じて両国の文化を理解していただきたいです。良い映画作りを通して、日中文化交流に少しでも貢献できれば」と語る。
中国は映画産業が活況で、市場規模はトップの米ハリウッドに続く世界2位。これまで故高倉健さんが日中合作映画[単騎、千里を走る。;日本公開06年]に主演しているが、剛君は海外デビュー作で日本人俳優初の中国単体製作映画の主役を担う快挙を達成した。
『破陣子』は、中国で古くから伝わる漢詩をモチーフにした人気舞台の映画化。舞台版は2013年2月20日に初演された舞台は、6年間で20都市以上を巡回し、公演回数300回以上、観客動員660万人の観客動員を誇る大ヒット作で、舞台版の脚本を手がけたドン監督が映画のメガホンをとる。
綾野剛の役どころは、壇ノ浦の戦い(1185年)で海に飛び込み、潮の流れに乗り南宋国境内の「白虎蕩」という村の海岸に辿り着いたところを地元村民に救助され、「平安(ピン・アン)」という名を与えられた日本の貴族の一人。やがて南宋の女性と恋に落ち、悲恋の物語が展開していく。全く新しい荒唐喜劇(滑稽不条理コメディー劇)の世界観のもと、時代劇という古代の題材を借りながら、今の現実社会の問題を露わにしていくという、中国映画ならではの壮大な物語を目指す。剛君と恋に落ちるヒロインを演じるのは、ジョン・ウー監督の[レッドクリフ]にも出演していた中国で人気の実力派女優の宋佳(ソン・ジア;38)。
ドン監督は剛君を主演に抜てきした理由として、「綾野剛さんの作品を見ると毎回人間が変わっているように見える。彼の演技は真実味があり変化に富んでいる、紛れもなく我々が求めていた役者でした」と明かしている。
本作を手がけるのは、世界で1億人を動員した映画[美人魚;邦題[人魚姫]]を手掛けた、中国で知名度は高く、多数の優秀な作品を携え、高い評価と高い興行実績を残してきた舞台制作会社JOYWAY。同社創業者にして本作のチーフプロデューサーの孫恒海氏は、中国の演劇界における第一人者にして演劇界で高い影響力を持つ。昨今の中国映画界は活況を呈しており、昨年には日本の4倍に相当する約9580億円の市場規模となっている。そんな中国映画業界へ主演デビューする剛君の活躍には、大きな期待が寄せられている。
剛君は、ドン監督から熱い思いのこもった手紙を受け取り、オファーを快諾。「脚本自体が素晴らしく取り扱うテーマが奥深いのはもちろん、登場人物の心の襞(ひだ)が豊富かつ繊細」と未知なる挑戦を決めた。日本語のせりふもあるが、平安が村になじんでいくにつれ中国語のせりふも増え、ラストシーンには怒とうの長ぜりふが控える。3か月ほど前から中国語のレッスンや肉体改造に励み、ストイックな役作りを追求してきた。
剛君は「人気の舞台劇から映画化した作品に出演するのは初めてです。ソン・ジアさんはじめ中国キャスト・スタッフの皆さんと共に、平安を生きる上で確かな化学反応を起こしたい」と意欲。「俳優は絶えず自分との挑戦。このような複雑な役を生きることは、私の役者人生において豊かな時間になります」と確信している。
『破陣子』は来年2019年に中国全土で公開予定。