フィッシュロースターA


話題:家電


手伝い女は新卒で今春就職したてらしかった

工学部を出てるから、本来は技術屋志望なのだろうが、会社の方針で、入社後数年間は小売店の手伝いをさせられるのだそうな

一生懸命やってる間に、俺みたいな口の悪い客に遭遇してしまったのだね(^_^;)


俺の方も、どうせコーヒーメーカーなんて買わないんだから、嘘でも、おいしーい♪と言えばよかったのかも知れない

けれども、スイッチひとつで豆を挽き、そのままコーヒーが淹れられるってのが売りのマシーンを客に買わせたいのなら、もっと上質な豆を使わなきゃ駄目よね

こんな味のコーヒーしか出せないなら、誰も買わないと思うよ、と余計なことまで言ってしまった

すると、手伝い女の目に液体の膜が張って行くのが見えた

ヤバい…、と思ったが時既に遅し

手伝い女が後ろを向いて俺から遠ざかると、店主は「あーあ、泣かせちゃった」と言いながら、まるで犯罪者を見るような目で俺を見た



こういう時、どうすればいいんだろうね

目的も無く、ただ立ち寄った店であれば、ごめんごめん、またねー!と言って立ち去ることができる

だが、煙の出ない魚焼き器を買いに来てるのよ

その魚焼き器をゲットするまでに、この新卒女の機嫌を直さなくてはならないと思った俺は、コーヒーメーカーの横にあったオーブントースターの説明を求めてみた

すると新卒女は気を取り直し、機能の説明を始めた

「パンは勿論のこと、これはお餅も焼けるんですよ」と女が言ったところで、お餅も焼けるの毛?スゴいな!と言ってみた

昔からあるような普通のオーブントースターでも餅くらい焼けるんじゃないかと思ったが、女の言葉に乗ってやろうと思ったのだ

「それと焼き芋もスイッチ1つで焼けるんですよ、凄いでしょ?」と女は言う

その瞬間、女の目が普通に戻ったのがわかった

よーし、これでオッケー!と思った

だが、このオーブントースターの説明をさせておきながら、魚焼き器の話題に持って行く方法が見つからなかった

これは魚は焼けないのかと問えば、「ノー」と答えるに決まってるし





だが目的は魚焼き器だ

古いタイプではあるが、オーブントースターならウチには2つある

だから目の前のオーブントースターを買う必要はないのだ

買ったところで、どこに置けばいいのか、また更に考える必要が出てくるし


でも…、

俺の一言で一旦悲しませたに加え、オーブントースターの説明をさせられても成果が得られないようでは、この女を更に失意のどん底に落としてしまうかなと思っちゃったのよね

なので、じゃコレ貰おうか、と言ってやった

その瞬間、女の目が大きくなり、笑顔に変わった




結局、魚焼き器も買ったのよ

魚焼き器が案外重かったので2つ共配達にしてもらったのだけど、届け先をB子のアパートにした

魚焼き器はいいとしても、オーブントースターまで買っちゃったことは妹には知られたくなかったから

そのうちバレるとは思うが、「バカじゃない」と言われたくないのだよ

バカは承知のスケ


まあ、これも勉強だと思うことにする

自分の中だけで解決したい神田でした


フィッシュロースター


話題:家電


妹が酒を飲むようになってからか、はたまた、オヤジの胃袋の消化能力が落ちてきたからか、1日のうち最低1回は魚を焼くようになってる神田家

そのせいで、換気扇掃除の回数が増えた

グリルは使わず、コンロの上に網を置いて焼くからかな


以前は、家族の人数が多かった頃でも、年に1回、年末に掃除すればよかったのに、ここ数年は半年に1回はやらないと気が済まなくなってる

掃除するのは俺だから、他の人は気にならないことではあるが、その掃除のペースを守ることができてないのよね

時間がとれないのだよ

そこで考えた

魚焼き器を買おう!と

無煙タイプの魚焼き器

これがあれば換気扇はそうは汚れないし、煙も外に放出されないから、ウチが魚を食ったことは近所にもバレない

そこで妹に提案してみた

すると妹、「どこに置くのよ」と来たもんだ


そうなんだよな…、流し台の上はもう沢山の物共で占拠されておるのだな

食洗機、電子レンジ、調味料、などなど

はっきり言って、もう余計な物を置くスペースはない

だがしかし、換気扇掃除をしないコイツにとやかく言う権利はないと思い、とにかく買って来て、その後でどこに置くかを考えることにした

まあ最悪の場合、食卓テーブルの端っこに置けばいいんじゃないかと思ってさ


それでまあテクテク商店街の電器店へ

丁度その日は、店の前でコーヒーメーカーとオーブントースターの展示会みたいなものをやっておった

店主が「神田君、コーヒー飲むかい?」と誘ってくれたので、断る理由もないから頂戴することにした

本部から派遣されてきた風の手伝いの女が、目の前のコーヒーメーカーで淹れたコーヒーを小さな紙コップに注ぎ、それを渡してくれたんだけどさ…

一口飲んだ瞬間、不味いと思ってしまった

俺の顔が歪んだのかも知れん

「おいしくないですか?」と、手伝い女は言った

どう答えようかちょいと考えたが、もう顔に出てしまった後だったので嘘は言えないと思って、美味くはない、と真実を述べてしまった

そこからこの日の予定が狂った



つづく



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