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21人の輪〜震災のなかの6年生と先生の日々〜(5)「いつもと違う秋」

ハート型の輪

去年の春全員で撮った写真
しかし
あの地震が起きたーー


福島県相馬市磯部地区


車窓を流れる風景
わずかに残った建物の跡
かつて
漁業でにぎわった街から
生活の匂いが消えた


9月上旬

放送が入ってきた


「本日も
表土除去の作業が
ありますので
校庭の方には
出ないでください」


6年生の教室
工事の間は
必ずマスクをつける

マスク越しで
声が聞こえにくい
校庭から聞こえてくる音

ショベルカーが
放射線の影響を受けた
表面の土を削り取っている

一度は安全だと言われたが
7月下旬
相馬市の全ての小学校で
工事することが決められた

38km離れた原発で
事故が起きてから
半年になる


放課後
ダンスの衣装を着て
クラスメートの
笑いを誘う子がいた

白いスカート
頭の上に瓶を乗っけて

坂田龍之介くん

地震のあと
川崎市に避難していたが
二学期から戻ってきた


学校からバスで20分の
仮設住宅

「こっからちょっと
撮影がしにくいかも
しれません」

ほら!とさす指の先
上がってく細い道

龍之介くんの家はここから
山道を20分
歩いたところにある

「ここがうちのたんぼです
あそこからあそこまで」

見えるところ全部

代々受け継がれているたんぼ
お父さんが農薬を
できるだけ少なくして
おいしいお米を作っている

「黄金色に
金色に光って見える」

秋になると金色になって
冬は淋しいけど
秋が一番にぎやかと
話してくれる龍之介くん

バッタやツゲ虫、鈴虫・・・

「一人で遊ぶ時は
たんぼが一番です」

学校からは遠いけど
ここが気に入っている


妹の紀乃ちゃんと
かくれんぼ

「ザリガニいますよ」
いっぱいいるって
見せてくれました


地震があった時は
玄関にいて

「さて遊ぶかって
外に出たらガガガ!って
来たから

おばあちゃんと外に逃げて
瓦が目の前まで
落ちてきたそう

紀乃ちゃんも一緒に
揺れが弱くなったら
また違う位置に逃げて
おじいちゃんが
避難しろと言って

蔵がガタガタ揺れた
はがれ落ちた壁

百年以上前からあるもの
今も近づけない

紀乃ちゃん
「そこらへんの草の陰で
かくれんぼ
上手くできたのにね」

取り壊されることになった


作った野菜は出荷せず
自分の家で食べる分だけ
作っている

パプリカピーマンきゅうり・・・

「でも子どもたち
危なくて食べられない」

原発事故が起きてから
念のため
子ども用には
スーパーで野菜を買っている

家庭菜園で作った野菜は
放射線が含まれているか
調べるのが難しいため

お母さん

どうして買って
別にしなきゃ
いけないのかな?と思いつつ
子どものことを
守ろうと思ったら
できる限りのところは
守ってやりたいと

晩ごはんの前
毎日調べていることがある

「どう相馬は?」
「緑か黄色か水色」

「0.2から0.5
マイクロシーベルト」
つぶやく龍之介くん

お父さん
「だいたいおおむね
横ばいって書いてあるんです
毎日」

目には見えないし
匂いはしないしと
新聞をたたみながら


今心配なのは
これから収穫するお米のこと
目に見えない放射線が
生活に影を落とす


龍之介くんは
休みの日が待ち遠しい
お父さんと
たんぼに出ることが
出来るから
一年生の頃から通っている

収穫の秋
たんぼから水を抜く
龍之介くん
スコップをよいしょ!

埋めてある袋をのけると
勢いよく水が流れだした

お父さん
「コンバインで収穫する時に
乾いてないと
ぬかってしまうので」

スコップを挿して
水を止めるみる龍之介くん
「水が止まって
まったく音が出なくなる」

「水路に水せき止めて
一気に流して
勢いを楽しんでる」

「そおれ!」とスコップを
抜く龍之介くん

あふれ出る水の音
「変化出ましたかー?」

カラカラとスコップを
引きずって駆け寄ってきた
「あー水増えてきた」

何という遊び?と聞いたら
「せき止めっこ」だって

水の中
もそもそとザリガニが一匹


龍之介くんはすすんで
手伝おうとするが
お父さんは
手放しでは喜べなくなった

「ここずっとほんとは
掘ってほしいんだけど
さっきの雨でさ
濡れてるでしょう」

うんとうなずく龍之介くん

「雨ん中にちょっと
放射性物質あると
困るんで」

地表から舞い上がったものが
落ちてきている
という話もある

土作りから龍之介くんに
農業を教えたいと思っていた
お父さん
原発事故のせいで
その夢も狂ってしまった


人間は
土から取れる
お米を食べて生きて
亡くなったら土に還ってゆく

「人間
本来の姿なんですけどもね」

そう語るお父さん

「悔しいですね、正直」


それでもここで
龍之介くんは
農業をやってみたい

大人は子どもより
放射性物質に
抵抗があるみたいだから

「大人になったら
土にドバッと入って
作業が出来るのかなって」

仕方ないと話しながら
龍之介くんも

「でもやっぱ
少し悔しいっていうか」


9月7日

今日も校庭の工事が続く

この日磯部小学校では
特別な授業が行われた

スクリーンには
「どこまで知ってる?
放射線」の文字

主催は文部科学省
講師は
放射線の専門家が務める

線量・・・
シーベルト・・・

資料に書き込む子

放射線で壊れた細胞も
次々治る
でも
治し間違いがおこって
それが「がん」になる

100ミリシーベルトを
越えると明らかに
がんの発生がわかるけど
それ以下では科学的には
確認されていないーー


ここで子どもたちは
見たことのないものを
見ることになる

シャーレの中の
ピンク色のもの

そこから
ふっふっと出てくる
白い糸のように見えるのは
放射線が通った跡

「あっ見えてる」

興味津々で見つめる
子どもたち

自分たちを
苦しめているものを
初めて見た気がした

講師の先生に尋ねる

「相馬市って今の状況だと
一年間で積算
どのくらいなんですか?」

場所によって違うけど
この付近だとおそらく
2ミリとか3ミリ・・・


揺れる炎

白い紙の風船の中
夜空に上がっていく

9月10日
犠牲者を弔う行事

「どんどん遠くまで
がんばれー」

たくさんの灯

相馬市では震災のために
455人の命が失われた

見上げる空
風船が蛍のように


相馬市から北西へ35km

宮城県白石市
放射線をさけて
この街に来た6年生がいる

寺島美衣奈さん

「ただいまー!」

借り住まいのアパートは3K
家族5人でここに暮らす

見せてくれた料理ノート
たくさんのお菓子の絵

このアパートで
美衣奈さんが
始めたことがある

自分でレシピを調べて
新しい料理に挑戦する

「長ネギ、しょうがは
みじん切りにする」

「げー出来たぁ」

移ってきてから
料理を始めた美衣奈さん

「こっちでは
友だちの家とかが
近くないから
勉強終わっても
暇ができちゃって
探してやってみた」

そう言いながら
こねた具をシソに乗せる

環境を考えて
離れてはみたけどもと
お母さん

「子どもにとってはやっぱ
地元の生活
まわりの友だちっていうのが
すごく大事みたいで」

美衣奈さんフライパンで
ジュージュー焼いて

「できた?」
「2つできたよ」


「いただきまーす」


みんなで囲む食卓

このアパート暮らしも
まもなく終わる

次々の家賃が負担となるため
父親が働いていた会社が
再開するのを機に
相馬市へ帰ることになった

一口パクっ

「どうですか?
自分で作った味は?」

「うん、おいしい」


友だちと離れて暮らした半年
美衣奈さんを
支えてくれたものがある

交換ノート

2人で写った
プリクラのシール

「これは
楓恋ちゃんとやってる
交換ノートなんですけど」

去年の10月から

「みんなの顔も
あんまり見れないけど
これを見ることによって
みんなの顔が浮かんでくる」

カラフルな文字が踊る


「うーん、宝物かな」


美衣奈さんはこの日
久しぶりに
自分のことを綴った

「うちはちゃんと、
もどってきま〜す!
9月30日に、こっちを出て、
10月3日に
みんなといっしょに
授業をしま〜〜す!」

今原発のこともあるけどと
話しだした美衣奈さん

「原発原発って言ってると
原発に負けちゃって」

心配だからまた
別の県に行くとかになって

相馬・・・福島県から
うんと離れなきゃ
いけなくなっちゃうから


「原発のことは
考えなきゃいけないけど
もう忘れて
みんなと過ごしていきたいと
思います」


相馬市綾部地区

晴れの日が一週間続いた

この前は雨で
満足にお父さんを
手伝えなかった龍之介くん

今日はたんぼに入れる

長靴の足で踏みしめる

「やわらかい?かたい?」
「あ、かたくなってる」

溝の掘り方を教えるお父さん

「水の通り道作っておけば
これから秋雨くるでしょう
いっぱい」

春の田植え
夏の雑草取り

これまで
普通にやってきたことが
今年はほとんど
やらせてもらえなかった


いつかはお父さんみたいに
おいしいお米を作りたい


そう龍之介くんは
思っている

溝を掘った龍之介くん

「どう?暑い?」
「うん」

帽子をかぶり直す

出来たばかりの溝で
何かが跳ねた!

捕まえたお父さん
手の中にはドジョウ

「生き物がね
住んでるたんぼって
いうことは
やっぱりそれだけお米もね
おいしい米が穫れるんで」


龍之介くんには
お気に入りの場所がある

スコップを持ったまま
笹の茂みを抜け

「ここでーす」


小さなせせらぎ


「水の音が綺麗
鳥もたまには来ますね」

耳を澄ませば
ここは
優しい音であふれている

流れる水面
さえずりが聴こえる
まだ残る蝉の音

2、3年前に探検してた時
発見したって

「道あったから行ってみたら
川あった」

案内してくれる龍之介くん

「こっちは
山とか小さな池から
きれいな水が出て
川になってきています」

この水も海に流れるんですと


これまで
当たり前だった自然が
今はすごく大切に思える

遠くにかすむ蝉の声

「今年原発事故が起きて
ん〜どうしようかなって
いうことにもなったけれど」

「少しこわいけれど
今もお父さんもやっているし
がんばっていこうと
思います」

できそう?と聞いたら
「はい」

「こんなに
生き物がいっぱいいる
たんぼですから」

話してる途中についていた

クッと腕を手前へ寄せて
見せてくれる

バッタ


「絶対
このたんぼを守っていく」


2匹
腕の上で遊ぶ

「いててててて」
「あーーっ!」


黄金色に光るたんぼを
歩いていく


秋の虫が鳴いているーー

録画します

大ちゃん
新春ドラマで
主演するみたいです
フジテレビ系!

とりあえず「めざまし」
録画しますっっ
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