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色鮮やかな並ぶ出店
行き交う人々の楽しげに笑う声
夜空を彩る大輪の花火
それを見上げる自分と、横に並ぶ昆奈門
想像しただけで恥ずかしさに顔を赤らめる乱子。
だが、それと同時に期待で胸を膨らませて彼を見上げた。
「行くかい?」
悪戯っぽく小首を傾げながら昆奈門はそう尋ねる。
問われる前に乱子の答えは決まっていた。
「はい!」
祭当日
多くの人でごった返したなかで、乱子と昆奈門ははぐれないように手を繋いでいた。
乱子は淡い桃色の生地に橙色をした金魚が泳ぐ、いかにも女の子らしい浴衣を纏い
長い髪を結い上げた彼女は天女の様な愛らしさで笑う。
昆奈門は渋い深緑一色の浴衣で、落ち着いた雰囲気を纏っているが
包帯で覆われた顔を隠すかのように斜めに被られたおかめの面が、どこか笑いを誘う。
カラコロと下駄を鳴らして歩く2人はさながら親子のようで、周りの雰囲気に良く溶け込んでいた。
木々や出店に吊るされた提灯に照らされ、色とりどりの風車がそよ風でくるくると回り
キラキラと光を反射する水槽の中では、金魚がピチャリッと楽しげに跳ねる。
活気に溢れた出店の立ち並ぶ道を歩いていると、乱子の目にあるものが止まった。
しゃらしゃらと涼やかな音を奏でるそれは、硝子細工を繋げた髪飾り。
簪の様になっているそれは藤の花を模して造られており
幾重も連なる小さな硝子の花は朝露の様にキラキラと一際輝いていて、つい魅入ってしまった乱子は足を止めていた。
彼女の様子に気付いた昆奈門はその視線を追って目当ての物を発見すると、直ぐ様店主に声を掛けて髪飾りを購入する。
驚く乱子の髪へそれをつけてあげると、2人は一層明るい笑顔になった。
楽しげに笑い合う乱子と昆奈門が歩いて行くのを
忍術学園の時と同じ視線が向けられていた。
「あの曲者めぇ〜っ」
「俺の可愛い後輩に何てことをっ」
ギリギリと奥歯を噛み締め、悔しそうに睨みつけている文次郎と留三郎。
店の影や茂みから覗き込んでいるが、カムフラージュの為に浴衣とお面を着用している。
「だから2人共、良い加減乱子ちゃん達を追跡するの止めようよ」
今回も止められなかったらしい伊作も、心配でついて来たらしい。
敵意を剥き出しにしそうになる2人を宥め、どうにか見守るに留めさせていた。
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