深夜。目が覚めた少女は誰にも内緒で部屋を飛び出した。扉から行くと同室の仲間にバレてしまう。そんな事を恐れつつ、好奇心を抱いて魔法のターバンに乗り夜の散歩へと向かう。
少女はマギ。偉大なる王を導く魔法使い。このシンドリアに来てからは長いが、実はこの世界に来たのはつい最近。それまで頑丈な部屋と呼ばれる聖宮で蝶よ花よと大切に育て守られてきたのだ。
世界の事を知りたがり興味ある事には一直線。子どもらしいと言えばそうなるが、大人びた一面もあったりする。
以前までは少年だった。しかしとある事がきっかけで少女へと戻ったのだ。
「ん〜気持ちいい」
夜風に青く絹のような髪を靡かせる。背伸びをしてみたり、寝ころんだり少女は好きな事をターバンの上で行う。
周りは白いルフがいっぱい舞い、少女を優しく包み込んだ。
そんな時間もつかの間、白いルフはざわめく。少女は警戒心剥き出し杖を構える。
「よお、アラジン。夜に散歩か?」
「ジュダ、ルくん?!」
少女。アラジンの構えた背後に一人の青年が現れた。アラジンとは違う絨毯に乗って。
背を取られたとばかりに焦るアラジン。ジュダルと呼ばれた青年はニヤリと口の端をつり上げ笑う。ジュダルの不適な笑みに怯えアラジンは一歩下がる。此処が空中というのを忘れ──
「えっ、うわぁっ!?」
「このバカ!」
ターバンから落ちるアラジン。ジュダルは慌て絨毯から降り空中魔法で追いかける。その速さは早くアラジンより下へと移動した。
下でアラジンを受け止め。抱える。それは所謂お姫様抱っこ。距離も近く自然と目が合う。