「考えないようにしたって、無くなるわけではない、と思うんです。」
名前のない、旅の途中。

小さな白い箱の、中身を見ないように蓋をして、目を閉じた。
足りないものは漠然としていて、正しく言葉にすることができない。
ぼくにしか見えない、にぎやかな幽霊たちとパレード。
紫陽花色の下り道。

「思い込みが強いのならば、その思い込みを、明るい方に持っていけばいいよ。永遠に幸せが続くとか、そういう。」

白、水色、紫、鮮やかに吸い上げて。
揚々と歌う、子どもの頃に聞いた歌。

言葉をどれくらい持っているかは、人それぞれだから、
語られるものが全てだなんて、思わないように。
自分で自分を守ってね。

全然大丈夫じゃないのに、にぎやかな幽霊と行くパレード。
紫陽花色の下り道。

「どうせ、見たいものしか見えないのだから、好きなものを映したらいいよ。」

空を見上げて、水色眼鏡。
おどけて笑って、このまま、この景色だけ、持っていきたい。
みんな幸せに、なんて、とんだ嘘吐きだった。
必ずしも誰もが幸せになるとは限らないのだけど、それでも一度くらい良いことあるよ、あたりが妥当だったと思う。
幽霊、悲しかったね。
言えないことがあったね。
死因なんて、もういい。
忘れてしまおう、今は。


「考えないようにしたって、無くなるわけではない、と思うんです。」

雲は閉じ、旅は振り出しに戻る。

この道はどこへ続く?
案内板は雨に滲んで、先は深い霧の中。
白、水色、紫、見えない想いを吸い上げて。
凛々と続く、ぼくらのパレード。
紫陽花色の下り道。



嘘吐き/眼鏡/死因