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万事屋小話

「それからふたりは幸せにくらしました」

一番最後にそう残して途切れる物語。初めてこの本を読んだときに朗読してくれた優しく温かい人はもういないが、鮮明に残る記憶がある。

「幸せにくらしました」

かみしめるようにそう呟くと、向こうから間の抜けた声が聞こえた

「つまりは『庶民から税金を絞りとって贅沢三昧で暮らしました』ってことだろ。金持ちはいいご身分なこった。」

今週号のジャンプからは一瞬も目を話さずに、この家の主はデリカシーのないことをさらっと言ってのけた。

「違いますから!!どうしたらそんなひねくれた解釈ができるんですか?」

お茶をいれながら、メガネの黒髪が呆れたように返答する。

「じゃあ新八はどういう意味だと思うアルか?」

コトン、と新八は律儀にも銀時の前にお茶を置くと考えこんだ。いれたてのお茶から柔らかい湯気が立ち上っている。

「一般的にはずっと幸せが続いたことになるんだろうけど………」

少し思案して、言葉を撰ぶように新八はゆっくり続けた。

「きっとそれから辛いことや不幸なこともあったけど、死ぬときに人生を振り返ってみたら幸せだった…って感じかな?」

うわークセー野郎だな、銀時はそう吐き捨てるとずずっ、とお茶を啜った。

「う、うるさい!!アンタよりは数倍マシだろ!!」

言った後、自分でも恥ずかしかったのか、顔を赤くした新八がすかさず反論する。そして、ここぞとばかりになだれこむようにまた始まった銀時への説教を神楽は聞き流しながら本を閉じる。

『神楽、私はね「しあわせ」って人生が終わってみないとわからないと思うの』

『死ぬときに辛いことと楽しかったことを足し算したらちょっと楽しかったことが多いくらいが丁度いいのよ』

いまだに思い出す。柔らかい声優しい口調
「マミーは幸せだったアルか?」あの時勇気がなくて聞けなかったけど、答えはもうわかりきっていた。


後ろから聞こえる新八の小言を聞き流しながら、神楽はそっと本を抱きしめた。






――――――――――――
はい、よく分からない感じになった話です
かなり前書いたもので気に入らないからほおっておいたやつなんで、もう加筆することもないでしょうが、かといって消すのももったいないので……
なにがしたかったのだろう自分………


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