こんな近くに居るのに
触れられないなんて…

風邪を引いてしまった
自分の弱さを恨みたくも
なると言うものだ…。

-Kiss me-




「っ…ごほっげほっ!」

「…大丈夫なのか、モヤシ」

「がんだ、らいじょーぶにみえまずが?(訳:神田、大丈夫に見えますか?)」

「だよな…ほら、のど飴やるから舐めとけ」

「はぢみづぎんがんのどあめ!」

アレンは神田からのど飴を受け取ると、早速口に入れて舐め始める。
金柑の酸っぱさが口の中いっぱいに広がり、少しだけ眉間に力が入ってしまう。

「くくっ…酷い顔だな」

「仕方ないでしょう?酸っぱいんですから!」

のど飴を食べて喉が少しだけ楽になった。
眉間に力が入り皺が刻まれたのを指摘されたアレンは…

神田も食べてみて下さい、ほら!と言い、飴を1つ神田に手渡した。
しかし、それを受け取ってもらえなかった。

「俺はこっちを貰う」

「え、どれ…んうっ…!」

唇に感じる体温。目の前には愛しくて堪らない恋人の顔。
あー…神田ってやっぱり睫毛長いな。
羨ましいんだよこの野郎なんて、女の子なのに言葉遣いの悪い自分は駄目だな…とか現実逃避してみる。

「ちょ、神田…!風邪、感染っちゃうよ…っ」

「おまえに感染されるなら気にしない。幾らでも感染せば良いだろ。それに…」

「……?……」

「俺が風邪を引いたら、付きっきりで看病してくれるんだろ?なあ…アレン?…」

「っ …!!」

「顔が赤いぞ?熱上がったか?アレン」

僕が名前で呼ばれるの弱いって神田は知ってるクセに、何回も何回もアレンって呼んでくる。

「風邪引いてンなら、運動して汗かかなきゃな」

神田はそう言いつつ、柔らかなベッドにアレンを押し倒した。

「ちょ、神田…ダメだよ…っ!」

「…俺はいつでもお前の体温を感じてたいんだ。今凄く満たされてるって思わせてくれ」

顔を紅く染めるアレンを見て、神田はニヤリとして…

「黙って俺に愛されろよ、アレン」

「…!」

いつだって彼は僕に優しくしてくれる。
何でそんなに優しいの?
前に君はお前以上に大切な者は居ないと、そう僕に言ってくれましたね。

どんな時でも僕を見る瞳は優しくて、ほかの団員達には見せた事の無い微笑みを見せてくれるし。
触れる手も、口付けも、全てが優しい。

乱暴にされた事は一度も無い。

もっと乱暴に、君の思うように、この身体を…僕を抱いてくれても構わないと伝えた事があった。

すると神田は…

「俺とモヤシの愛を確かめ、育み、深める為の大切な行為なんだぞ?
乱暴に組み敷いて一方的に気持ち良くなっても、俺は全然嬉しくないし、気持ち良くない。アレンとだから、シたいんだよ…バカ」

バカとはなんですか、バカとは。
でも…こんなに君の気持ちが聞けて嬉しいです、僕。
幸せ過ぎて死んでしまいそう!

なーんて、過去の想いに耽っていたら…

「ン…レン…アレン?」

「え、あっ、はい!!」

「良い雰囲気の時に何考えてンだよ」

「…風邪引いて何も出来なかった間の埋め合わせ、してくれますか…?」

「俺が感じたいって言ったが…でも、まだ体調万全じゃねェだろ。無理すんな、傍に居てや…」

居てやるからと言葉を紡ごうとした神田を遮り、アレンは瞳を逸らさず真っ直ぐに見つめながら言葉を放った。

「考えてたのは君の事です。…心も、身体も、君で満たして下さい。…僕を愛して…?////」

「こ…の、バカ…っ!悪化しても知らねェからな!」


「君になら何されても良い。何も考えられない位愛して…ね?」



近くに居るのに触れられないなんて、本当に辛くて辛くて。

普段なら恥ずかしくてこんな言葉言えやしないけど、今日だけは特別に言ってあげる。

「愛してます、ユウ…。僕にキスして?」

大好きな君からの深く熱い
沢山の口付けを受けながら
柔らかなシーツに包まれて

この世界には君と僕だけに
なったような錯覚に陥る。

沢山愛して、僕を愛して。
君以外何も要らないから。

優しいキスをして…?



-END-